16-1これから
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
だるい感じで目が覚めた。
私はジュメルのアジトでアリーリヤに色々されちゃって疲れて眠っていた。
そして気がつくと一人裸でベッドの上にいた。
「ええとぉ……」
まだはっきりしない頭で起き上がりアリーリヤを探して部屋の中を見渡す。
とくに何も無い部屋。
近くに小さなテーブルと椅子が二つあるくらい。
そこに脱ぎ散らかした服が散乱していた。
「あら、目が覚めたリル? 昨日はとても良かったわぁ、あなたのあんな一面が見れて」
「あっ//////」
声がして扉の向こうからアリーリヤが部屋に入って来た。
そしてそんな事を言う。
そう言えば昨晩はアリーリヤに私、色々とお仕置きされちゃって……
「ひ、酷いです! お風呂に入っていないのに頭の匂い嗅ぐなんて!! あ、汗臭いじゃないですか!!」
「ふふふふふ、そうねとてもしっかりと森の香りがしたかしら? リルって汗臭いのね」
「ひぎぃいいいいいいいぃぃぃっ!!!!」
あ、汗臭いって言われたぁっ!
だっていくら頭は香油とか使ってもダイレクトに頭皮のあたりまで匂い嗅がれちゃ汗臭いの分かっちゃうよ!
毎日奇麗にしてるけど、このアジトに来てからは毎日お風呂には入っていない。
お湯で毎日体は拭いているけど、頭皮まではどうしても拭けない。
洗うにしてもそこまで潤沢にここにはお湯が無い。
【浄化魔法】と言う自分の体や服の汚れを奇麗にする魔法でも覚えてなきゃどうしても汗臭さは残ってしまう。
「酷いです、アリーリヤ」
「ふふふふふ、私の言うこと聞かない罰よ。今度いうこと聞かなかったらもっといけない場所の匂いをまた嗅ぐわよ? あの笹の香りがするところとか」
「ひぃいいいいぃぃぃぃっ!!!!」
そこはだめっ!
お、女の子同士でもそんな所は絶対にダメ!
私はおののきながらシーツを手繰り寄せ薄い胸元を隠すようにする。
「まあ、いいわ。それより転移の魔晶石が送られて来たわ。今日にも出発するわよ」
「え? 学園はまだ全部消し去ってないですよね?」
「もう学園はいいわ。それよりまずはガレント王国を目指す。そして首都ガルザイルを壊滅させ、聖地ユーベルトを破壊しつくすわ! 女神の誕生の地を消し去ってやるのよ!!」
アリーリヤはそう言ってニヤリと笑うのだった。
* * * * *
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「うん、なんかまだ少しくらくらするけど大丈夫だよ」
アジトの中で比較的広い部屋に来ている。
組織の各部署から使える範囲での転移魔法が封じ込められた魔晶石が送られて来た。
アリーリヤの話だと、秘密結社ジュメルは必要に応じて各アジト同士の間で転移魔法の魔晶石を作っていて、それを使える距離の間で交換し合っているそうだ。
そして組織の全体意思で、必要人物はアジトを転々と転移魔法で移動して目的地まで飛ぶそうだ。
以前はその仕組みが出来てなくて馬車などでの移動がメインだったらしいけど、約千年前の壊滅状態に近い所まで追い詰められてこの移動方法を編み出したとか。
「でも転移の魔晶石なんてそうそう簡単には出来ないんじゃないですか?」
「あら~、アンダリヤのおかげで『賢者の石』の作り方が組織内で共有できたから、何とか残りの七大使徒の分は出来たの。だから各支部は転移魔法の魔晶石を量産してるのよ。でも流石に今のレベルの『賢者の石』ではすぐに壊れてしまうのでまだまだ生産は続いてるわよ~」
イリカはそう言ってニヤリと笑う。
そしてイリカの右腕の中指にはまたあの「賢者の石」の指輪がはめられていた。
「私の追加の分の『賢者の石』も来たから、これでまた魔物たちを操りいろいろ破壊できるわね~。それに今はルラさんもいるから正しく鬼に金棒かしら?」
「えへへへへへ、イリカまたいっぱい壊したらあの気持ちいい事してくれる?」
「ええ、勿論ですよ~。ルラさんって意外とああいうの好きですね♡」
いや、あんたら一体何してるのよ?
私はルラを見ると、それに気付いたようでルラはちょっと頬を赤らませる。
「ルラ、一体何されてるのよ……」
「え? あ、それはそのぉ//////」
そう言いながらルラは完全に赤くなる。
まさか、本当にそう言う事されてるの!?
思わずルラに詰め寄り聞き出そうとするとアリーリヤが言う。
「ほら遊んでないでそろそろ行くわよ。リルは私に」
そう言って首輪の鎖を引っ張られる。
私はアリーリヤに引っ張られアリーリヤに抱き着くようにしがみつく。
「ふふふふふ、ちゃんとしがみついているのよ? 【転移魔法】!」
アリーリヤは魔晶石を引っ張り出し私と共に次の場所へと転移を始めるのだった。
* * * * *
そこは何と言う事の無い農村だった。
転移した先には数人の人たちがいたけど、みんな黒づくめ。
中には人の姿をしていないのもいたけど、なんでも改造をされたキメラだそうだ。
その昔、ジュメルの戦闘を担当していた戦闘要員だったらしいけど今ではその数も減って活動拠点の警備をしているらしい。
とは言え、このアジトは本当に農村の納屋のような場所だった。
「へぇ、ジュメルってこんな所もアジトにしているんですね?」
「まあね、ジュメルに賛同しているのは色々な階層の人間がいるわ。中には貴族の人間もまだいる。一般の人間でも我々に賛同して信者となり、そして世界の破滅を目標に活動しているわ。信者は必ずこう言った印のついたものを身につけているわ。
そう言ってアリーリヤはペンダントを引っ張り出す。
そこにはその昔見た事のある紋章があった。
「ああ、そうか、そう言えばその紋章ってジュメルでしたっけ…… ドドスでは女神神殿で……」
そう言ってドドスでの出来事を思い出すけど、なんかはっきりと思い出せない。
思い出そうとすると頭にもやがかかったようでだんだん痛くなってくる。
「リル、余計な事は思い出さなくていいのよ。あなたは私の言う事を聞いていればいいの。私の言う事さえ聞いていればあなたはまた私とずっと一緒にいられるのだから…… だから愛結葉、私の言う事さえ聞いていればいいのよ……」
「え?」
今アリーリヤは私の事を愛結葉って……
「さ、続けて次のアジトへ転移するわ。転移の魔晶石をここへ」
アリーリヤはそう言ってここにいる人に次の拠点場所の魔晶石を持ってこさせるのだった。
* * * * *
何度目の転移だろうか?
最後に転移したそこはどこかの屋敷だった。
「ここは?」
「ここはガレント王国の首都ガルザイルの貴族の屋敷よ」
「これはこれはアリーリヤ様、イリカ様よくぞわが屋敷においでくださいました」
アリーリヤの説明に私は部屋の中を見渡す。
お屋敷と言ってもそこにあったのは比較的質素な装飾品ばかり。
貴族と言ってたけど、なんか普通の人の部屋よりちょっと良いくらいかな?
「アプトム、しばらく厄介になるわ」
「ええ、どうぞどうぞ、ご自分の家と思いお使いください。して、そちらのエルフの少女たちが?」
「そうよ、私の大切な子猫ちゃんよ。この世界を滅ぼす子猫ちゃんよ」
アプトムと呼ばれた四十半ば位のおじさんはアリーリヤに頭を下げてそう言う。
それにアリーリヤは自慢げに私の首から下がる鎖を引っ張って前に立たせる。
「ふふふふふ、お美しいですな。さながら滅亡をいざなう妖精と言ったところですな」
「ええ、そうよ私のリルは美しい。さあ、始めるわよこのガレント王国崩壊の序曲を!」
アリーリヤはそう言って高らかに笑い出すのだった。
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うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。
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