15-31リル、学園を去る
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
「そ、そんな…… 女神様の力が、私の女神様の力が!!」
なんかヤリスが膝をついて両の二の腕を抱きしめながらガクガクと震えている。
なんでだろ?
せっかくエルハイミさんの呪縛から解き放ってあげたのに。
「リル、ルラっ!!」
小さく縮こまって震えているヤリスを見ていたら聞き覚えのある声がして来た。
私はそちらを振り返るとマーヤ母さんがいた。
「二人とも無事なのね!?」
「マーヤ母さん。私たちは大丈夫ですよ。だからこの学園壊しちゃいますね」
「リル?」
私はそう言いながら瞳を赤黒く光らせる。
だってマーヤ母さんもユカ父さんもエルハイミさんがいなければもっと自由にイチャイチャ出来るでしょ?
そうだよ、エルハイミさんなら二人の間に子供だって作れるのにそれをしてくれないだなんてずるいよね?
自分だけはティアナ姫の転生者に子供産ませたりしているのに!
「やっぱりエルハイミさんの我が儘が悪いんだよ、だからその一端であるこの学園も壊しちゃいましょう!」
もの凄く気分がいい。
ふわふわしてアリーリヤに言われたとうりにしているともの凄く気持ちいい。
そうか、アリーリヤが私の本当の気持ちを気付かせてくれたんだ。
アリーリヤの言う事を聞いていれば間違いがないんだ。
それにアリーリヤはあの薬をくれる。
もの凄く気持ちよくなる薬を!
「ふふふふふ、いいわよリル。あなたのしたい様にすればいいのよ!!」
そう言ってアリーリヤはまた鎖から手を離す。
うん、そうだね、だから……
「校舎を『消し去る』!!」
私はそう言いながら一番近くの校舎を消し去った。
途端に何十人かの学生が消えた校舎の足元が無くなり、落ちて来る。
あ~、そっか。
校舎だけ消し去ったから人とかそう言うのは残るんだよね。
まあ、みんなが死なないならいいや。
「リル! なんて事を!!」
「う~ん、お姉ちゃんだけずるぅ~いぃ。あたしも壊す!」
そう言ってルラも近くの建物を破壊し始める。
「二人とも! 何をしているの!! やめなさい、やめて!!」
マーヤ母さんがそう言うけど、やめる必要なんかない。
私もルラもどんどん校舎を消したり破壊したりする。
「あはははははははっ! あの学園がどんどんなくなって行く、いい気味ですねぇ!!」
「これだけやって学園長はまだ出てこないのかしら? 英雄ユカ・コバヤシは?」
私は笑いながら「消し去る」をする。
それを見ながらアリーリヤは首をかしげる。
でもそんな事はどうでもいい。
私は私のすることをやればいいんだから。
イリカもアリーリヤも私たちが学園を壊しているのを高みの見物している。
既に近くにある建物はほとんどなくなり、生徒も教師も関係者も慌てて逃げて行く。
「リル、ルラいい加減にしなさい!! 精霊たちよ!!」
「マーヤ母さんの精霊たちを『消し去る』!」
マーヤ母さんは私たちの邪魔をしようと精霊魔法を使おうとするけど、私がいち早くそれを「消し去る」。
途端にマーヤ母さんの周りにいた精霊たちが消えさり、マーヤ母さんが使おうとする精霊魔法は発動しなくなる。
「え?」
「マーヤ母さんは大人しくしててください。この学園壊しちゃえばもうエルハイミさんの言うこと聞く必要ないじゃないですか? ずっとユカ父さんと一緒にいられるんですよ?」
「何を…… 何を言っているのリル!!」
うーん、分からないかなぁ?
もう我慢してユカ父さんと離れて待っているだけの生活をしなくていいのに?
そう私が思っていたら足元に誰かがしがみついた。
「もう止めてリル! もう、この学園をこれ以上壊さないで!!」
「ヤリス?」
足元にしがみついて来たのはヤリスだった。
どうしたのだろう?
何をそんなに必死になっているのだろう?
「ヤリス、私はこの学園を壊してエルハミさんの我が儘の一端を止めようとしているだけだよ?」
「だめっ! そんなの絶対にダメっ!! だってここは私とリルたちが出会った大切な場所なんだよ!!」
私とヤリスが出会った大切な場所?
出会った……
そう言われもう一度周りを見る。
既に消し去った校舎跡、ルラに破壊された建物、学生たちがかつては賑わっていたこの時計台の前の通り。
そう、私たちはファイナス長老に言われてこの学園に来た。
そして沢山の人たちと出会い、友達になった。
だから私はその大切な友達たちに本当の矛盾を教えて解放したいだけなのに……
そう、思ったのになんで私の頬には涙が流れているんだろう?
「リル?」
「あ、あれ? なんで涙が…… この矛盾した世界を壊してヤリスたちに本当の自由を取り戻さないといけないはずなのに…… あ、あれ??」
涙はとめどもなく流れ出す。
「リル! もう止めなさい、目を覚ますのよ!!」
マーヤ母さんの悲鳴に近い叫び声も聞こえる。
何でマーヤ母さんも涙を浮かべているのだろう?
「お姉ちゃんっ!! あたしは防御も『最強』!!」
ヤリスにしがみつけられ、涙するマーヤ母さんを見てぼうっとしているとルラが叫んで私の前に出て来る。
がきーんっ!
「ルラ、リル! これは一体どう言う事ですか!? それにアリーリヤたちもいるとは!!」
刀の背を向けて打ち込んできたユカ父さんをルラは防御してくれていたようだ。
「ユカっ! 二人ともおかしいの、ジュメルに操られているみたいなの!!」
「マーヤからの連絡でさらわれたと聞いて急いで戻ってくればリル、ルラ! ジュメルに操られるとは未熟すぎます!!」
どうやらユカ父さんはゲートで今しがた戻ってきたようだ。
そしてみねうちでも入れるつもりだったのだろう、刀で打ち込んできていた。
それをルラが私をかばうかのように防御している。
「やっとお出ましね。英雄ユカ・コバヤシ。あなたがこの学園に長く学園長として君臨するから余計にあの女神が増長するのよ。あなたにはここで消えてもらうわ。リル、学園長を消し去りなさい」
ルラに防御されユカ父さんは一旦離れてから剣を構え直す。
しかしそんなユカ父さんをアリーリヤは消し去れという。
「ユカ父さんを……『消し去ぁ……』 だめっ、ユカ父さんを消し去るなんて出来ないよ、アリーリヤ!!」
「リル? 何を言っているの学園長さえいなくなればこの学園は崩壊するわ! 女神の矛盾を一端を壊せるのよ?」
ばきっ!
「きゃぁっ!」
アリーリヤはそう言ってヤリスを蹴飛ばしながら私の首輪の鎖を掴む。
途端に私にはアリーリヤの声だけがはっきりと聞こえて来る。
「ほらリル! 消しなさい学園長を!!」
「わ、私は…… 私はぁ……」
アリーリヤの声は私の頭の中でぐるぐるめぐる。
あそこにいるユカ父さんを消し去ってしまえばこの学園は崩壊する。
矛盾の一つを消せる。
そう、アリーリヤの言っている事が正しいんだ!
「わた……し……は……」
でもな何故か私の中の私が叫んでいる。
それは絶対にダメだと。
ユカ父さんを消し去るだなんて絶対にダメなんだと。
そう、頭の中で私が叫んでいる。
「わ……た……しはぁ……」
自分の声が遠のく。
そして私は意識を失うのだった。
* * * * *
体を誰かが触っている。
これはくすぐられている感覚。
ああ、そうか。
私は今、アジトへ戻りベッドの上で裸でアリーリヤにお仕置きされているんだ。
「はぁはぁ、リル! あなたは私のモノ、私の言う事だけ聞いていればいいのよ!! ほら口を開けなさいご褒美の薬を飲ませてあげるわよ! だから私の声だけ聴きなさい。惑わされてはダメ、あなたは私だけのモノなんだから!!」
アリーリヤはそう言って私の首輪の鎖を引っ張る。
裸の私はそれに抗う事無く引き寄せられ、アリーリヤの唇に自分の唇を重ねる。
そしてまたあの気持ち良くなる薬を飲まされるのだった。
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<業務連絡>
*申し訳ございませんが、海外出張が確定となりました。
2023年11月18日から26日まで上海に行く事となってしまいました。
こちらなろう様は中国からのアクセスが出来ませんので、その間更新はお休みさせていただきます。
不便な国ですよね~中国って……
こんな物語を読んでいただいている読者様には申し訳ございませんが、どうぞご理解の上よろしくお願い致します。




