15-29赤い瞳のエルフ
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
「ふふふふふ、どうリル生まれ変わった気分は?」
私は裸のままアリーリヤに抱きしめられていた。
彼女の香りが鼻腔をくすぐる。
「なんかとてもいい気分…… そうかぁ、これが幸せになるって事なんだぁ……」
ハッキリとしない頭だったけど、何故かアリーリヤの声だけはしっかりと聞こえて来た。
「ふふふふふ、これでリルは私のモノ。可愛いわよリル……」
アリーリヤはそう言って私の唇を奪いながらベッドに私を押し倒すのだった。
* * * * *
「あら、アリーリヤもやっとリルさんを落せたのね?」
「ええ、リルはもう私のモノ、私の言う事を聞く可愛い子猫ちゃんよ」
イリカとアリーリヤの声が聞こえる。
私はベッドに寝そべったまま心地よい時間を過ごしていた。
じゃら
「う~ん、やはりルラさんよりリルさんの方が良かったかしら?」
「今更ね。リルは私のモノよ。それよりルラはどう?」
「この通りよ♪」
イリカが手に持つ鎖を引っ張ると裸のルラが四つん這いでイリカの足元に来る。
そしてイリカの足にすり寄る。
「いい子ねルラ、ほらこれから私の為に悪い奴等を皆殺しに行きましょうね? 悪いやつの街もお城もみぃ~んな壊しちゃいましょうね?」
「うんっ!」
ルラは顔を上げてイリカに嬉しそうにそう答える。
瞳の色を赤黒くしながら。
「さてと、それじゃぁ私もリルを使ってみなきゃね。リルのスキルを使って手始めに学園都市ボヘーミャを消し去らなきゃね!」
じゃらっ!
アリーリヤはそう言って鎖を引っ張る。
その鎖は私の首輪に繋がっていて、私の意志とは裏腹に体が勝手に動く。
しかし今はそれが心地いい。
「アリーリヤ、私は何をすればいいの?」
「ふふふふふ、まずはあなたの力であの学園を消しちゃいましょう。あんなごっこの学園があるから魔法が世に広まる事を押しとどめるのよ。この世界にある秩序をまずは消し去るのよ!」
アリーリヤはそう言って私の頬に手を触れる。
ああ、なんて心地いいのだろう。
私はアリーリヤの言葉に頷きながらルラと共に立ち上がるのだった。
◇ ◇ ◇
眼下に学園都市ボヘーミャが見える。
ここは学園の西側、小高い丘の上だった。
アリーリヤたちに連れ去られた私たちはここ西の丘にある秘密結社ジュメルの地下施設にいたのだった。
「こんな所にアリーリヤたちのアジトが有ったんだ……」
「そうよ。ここはだいぶ昔からジュメルの拠点として使われていた場所よ。転移魔法の設定位置でもあるわ」
そう言ってアリーリヤは懐から魔晶石を取り出し見せてくれる。
力ある言葉だけで作動するこの魔晶石は魔力も含まれていて誰でも使えるものの、一回使ってしまうとただの石になってしまう貴重なアテム。
しかし話ではアリーリヤたちの「賢者の石」のおかげでそこそこの数が作られたらしい。
「ほんと、むかつく学園よね。あちらの世界の真似事みたいだけど、その制度も校則も制服もみんなみんな嫌い。かりそめの幸せを嘘で塗り固めたあの学園から消し去っちゃいましょう」
じゃらっ
アリーリヤの引っ張る鎖は私の首輪に繋がっている。
そして鎖を引っ張られながら命令を受けると心の奥底から嬉しさがにじみ出て来る。
「そうね…… あんな学園があるから私たちはエルフの村から追い出された。苦労して二年近くもかけて帰って来たのにあんな学校もどきに留学とか言って厄介払いされた!」
そう、私たち姉妹はエルフの村から厄介払いされたんだ。
あまりにも強大なスキルを持つからファイナス長老が危険視してあんな学園に厄介払いされたんだ!!
「消そう…… あんな学園消し去っちゃおう……」
「お姉ちゃん待ってよ。あたしもあの学校壊したい! あんな追試ばかりの学校なんてもう嫌だよ!!」
私がスキルを使って一気に学園を消し去ろうとするとルラがそう言い出す。
ルラは体にぴったりとした黒い服を身にまとい、ナックルガードを胸の前でガチ~んとぶつけてそう言う。
「お姉ちゃんの力ならすぐ消せるけど、あたしにも少しやらせてよ。あの学園を粉々にしてみたいんだ」
「そう…… アリーリヤいいかしら?」
「ふふふふふ、リルとルラの好きにすると好いわ。さあ始めましょう、この世界の矛盾を取り去る為に!」
私たちはそう言って学園に向かうのだった。
* * * * *
ボヘーミャの街並みを歩いている。
ここ学園都市ボヘーミャは学園を中心にその周りに街が出来ていた。
ボヘーミャ自体は何処の国にも属さない。
完全中立の学園となる。
しかしその管理については学園がこの街全体も管理をしている。
そして学園は各国からの援助金で運営をされている。
各国はこの学園に有望な自国の者を留学させ、魔術や世術、政治などを学ばせながら学生という若い人材同士の交流を促進し、将来有望な者たちのつながりを作り上げて行く。
それは未来の国同士のかかわりを強くし、政治的にも何的にも和平の土台となる。
そう、全ては平和ごっこの始まりだ。
「シーナ商会か…… 結局これもシャルさんやエルハイミさんに息のかかった商会だったわね……」
前世のデパートのようなそれは戦争に使う品物以外なら何でもそろうと謳われたお店。
色々な国に支店があり、世界中をそのネットワークでつなげているらしい。
「こんな所でもエルハイミさんの支配が進んでいただなんて……」
私はぎりっと奥歯を噛む。
これだけの事が出来るのに、なんでエルハイミさんはちゃんと世界を管理してあげないんだろう?
なんでもっとみんなが幸せになれるようにしないのだろう?
「あ、あのお店って美味しいたこ焼き売ってたお店だね~。アニシス様にはニコニコ顔でおまけしてくれるのにあたしにはしてくれなかったんだよね~。お姉ちゃんちょっとあのお店壊して来るね! あたしは『最強』!!」
ルラはそう言ってスキルを発動させてお店に飛び込む。
途端にお店から土煙が上がってお店自体が崩れ始める。
「あはははははっ! おまけしてくれないたこ焼きなんかい~らないっ!」
「あらあらあら~ルラさんの心の奥底の欲望がうまく引き出せましたね~♪ 良いですよ~、もっと壊しちゃいましょう~」
イリカは嬉しそうにそう言う。
ルラにかかればあんなお店簡単に壊される。
お店の人やお客さんは慌てて逃げ出すけど、程無く瓦礫となったお店にルラは足を載せ決めポーズで言う。
「おまけしてくれない悪いお店は成敗だよ!」
びしっと指を突き立てそう言うルラ。
あの子食い意地だけは張ってたもんなぁ。
と、私もシーナ商会のお店を見上げる。
「目障りだよね、あんな小部屋のあるここは…… 『消し去る』!」
私は建物の最上階にあるみんなで宴会をしたあの部屋を消し去る。
アイシス様やアニシス様、ヤリスの笑顔が一瞬頭の中をよぎるけど、そんな事はどうでもいい。
手をかざし力る言葉をで発動させると、建物の最上階のあの部屋があった場所が丸く消え去る。
建物に不自然な消失された場所が出来て中に多人々が大騒ぎになる。
「ふふふふ、良いわねリル。そうよ、あなたの思い出も一つ一つ消し去るがいいわ」
「そう……ね……」
私はそう言いながら踵を返してアリーリヤの元へ戻る。
そして一緒に学園に向かうのだった。
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<業務連絡>
*申し訳ございませんが、海外出張が確定となりました。
2023年11月18日から26日まで上海に行く事となってしまいました。
こちらなろう様は中国からのアクセスが出来ませんので、その間更新はお休みさせていただきます。
不便な国ですよね~中国って……
こんな物語を読んでいただいている読者様には申し訳ございませんが、どうぞご理解の上よろしくお願い致します。




