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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十五章:動く世界
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15-15ルラ憤怒

故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。

しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?

さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?

そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


「コルネル長老!!」



 ルラのその叫びに驚く私の目に映ったのは深々とヤツメウナギ女さんの爪がコルネル長老の胸に突き刺さった光景だった。



 ずぼっ!



『ぐふっ』


 それは本当に一瞬だった。

 ヤツメウナギ女さんはコルネル長老の胸からその爪を抜き去るとそこから鮮血が噴き出す。



 ぶしゅ~っ!!



「コルネル長老!!」


「コルネル長老!!!!」



 ルラも私も声を上げ、倒れるコルネル長老を抱きかかえる。



『長老さっ!!』


『長老がだがやっ!!』


『なしてだがやっ!?』



 他のオーガの皆さんも大慌てで寄って来る。



「【癒しの精霊】よ! 力を貸して、お願いっ!!!!」



 私は叫ぶように精霊魔法を使いコルネル長老の傷を塞ごうとするも、その傷が深すぎる。


『ぐふっ! イ、イリカさ、なんでだがや……』


「しゃべっちゃダメっ! 今傷を塞ぐから!!」


 コルネル長老はそう言って手をイリカに伸ばし力なくその手を落す。


「え? コ、コルネル長老??」


 抱きかかえるコルネル長老は目を見開いたまま動かなくなってしまった。

 息もしていない。

 急速にその体温も下がり始める。


 私の使う【癒しの精霊魔法】はどんなに精霊に魔力を注ぎ込んでもコルネル長老の傷を塞ぐことは無かった。

 その傷口は深々と胸の奥に届いていてコルネル長老の心臓を貫いていたからだ。



「コルネル長老!!!!!」



 抱きかかえるこのオーガのお人よしの長老はもう何も言わない。







「うわぁああああああぁぁぁああああぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」






 コルネル長老が完全に動かなくなったその瞬間ルラが叫んだ。

 まるで地の底からの叫びのように、今までルラから聞いた事も無いようなその叫び声を放ってルラはその場から飛び出す。



「ヤツメウナギ女さんなんでっ!!!!」



 言いながらルラはものすごいスピードでヤツメウナギ女さんの懐に入ってその両の手の爪を手刀で叩き折る。

 そしてヤツメウナギ女さんの両の肩に手を着け押しやる。



「なんで、なんで、なんで、なんでぇっ!!!!」



『ごあぁがぁぁぁぁぁぁ』


 ヤツメウナギ女さんはものすごい力で押し付けられそのままルラと一緒に向こうの民家の壁にぶち当たる。

 ぶち当たった民家の壁を破壊して、土煙を上げながらもルラは同じ事を何度も何度も言っている。


「なんでコルネル長老を!!」


 その声は悲痛の叫びそのもの。



「あらあらあら、流石に女神に匹敵するって報告通りですね? あのヤツメウナギ女をこうも簡単に押さえるなんて。でも女神の血をその体内にそしてあなたたちの連結型魔晶石核を持つそれはこのくらいじゃ倒せませんよ?」


 そう言ってイリカは右手を掲げると賢者の石の指輪が怪しく輝く。


 

 どんっ!



 同時にヤツメウナギ女さんが民家の屋根を吹き飛ばし宙へと舞い上がる。

 それを押しやっていたルラも同時に弾き飛ばされるも、くるりと宙返りして地面に降り立つ。


「なんでコルネル長老を殺したんだ!!」


 ルラはヤツメウナギ女さんではなくイリカに顔を向けそう叫ぶ。


「うふふふふ、役に立たないオーガではあなたたちを押さえられませんからね。それに最低限の人払いも出来ない。邪魔なだけですよ」


「イリカぁっ!!」


 楽しそうに教会の屋根の上でそう言うイリカにルラは飛び掛かる。

 しかしその前にヤツメウナギ女さんが割り入り、折れたはずの爪をまた伸ばしてルラに斬りかかる。


「くっ!」


 ルラはそれを両腕をクロスさせ防ぐも、体重の軽いルラはそのまま弾き飛ばされる。


「ルラっ!」


 私が弾き飛ばされたルラに目をやっているうちにアイザックさんの改修型「鋼鉄の鎧騎士」がいつの間にかイリカの後ろに回り込んでいてその腕を振り下ろした。


『はぁっ!!』



 がきんっ!



『なっ!?』


 しかしイリカの防御に入っていたヤツメウナギ女さんにその腕を切り飛ばされる。  

 そしてその長い尻尾に打たれてあの巨体の「鋼鉄の鎧騎士」は宙を舞い街の方へを弾き飛ばされる。



 どばきっ!!



『ぐはぁっ!』 


「アイザックさん!」


 私は思わず叫んでしまったその時だった。



「【流星召喚】メテオストライク!!」


 ヤツメウナギ女さんが地面に着地するのを狙ってユカ父さんが周りのマナを魔力に変換してその力を使って異空間を開き真っ赤に燃える隕石を呼び寄せる。



「流石に英雄と呼ばれた方ですね、メテオストライクとは。しかし!」



 ユカ父さんのその大魔法に対してイリカは右手を掲げると透明な淡い水色の光の壁が出来てなんとあの隕石を受け止める。

 隕石は透明な壁にぶち当たった瞬間大爆発を起こすも、その壁に守られたヤツメウナギ女さんは全くの無傷。



 がんっ!

 どっかぁ~んッ!!!!



 爆炎が広がる中その壁が消えると同時にヤツメウナギ女さんはユカ父さんの目の前にまで飛び込んでいた。


「くっ!」


 ユカ父さんは慌てて二人に分かれるけど、あまりに早いその飛込に二人同時にその爪に切り裂かれそうになる。

 このままではユカ父さんがやられてしまう!!


 

 ぱきーんっ!



 だがそこにルラが割り込んできてその爪をまたまた手刀で叩き割る。


「必殺ぱーんちっ!!」



 ずにゅる

 ばきっ!!


 

 ルラはその瞳を金色に淡く光らせ、ヤツメウナギ女さんを拳で吹き飛ばした。


『ぐぼっ!?』


 ヤツメウナギ女さんにルラの拳が決まってまたまた吹き飛ばされる。

 


「もう誰も殺させはしない! ヤツメウナギ女さん、いい加減に目を覚まして! イリカ!! なんでこんなひどいことするんだよ!!!!」



 きっ!



 ヤツメウナギ女さんはまたまた広場の向こうまでルラの拳で吹き飛ばされ、壁を破壊してもうもうと土煙を立てている。

 


「うふふふふ、だってお仕事ですもの。ねえルラさん、リルさん。それだけの力があるのですからこんなつまらない世の中なんて壊しちゃいませんか? あなたたちのその力をフルに使えばこんな世界の秩序なんて簡単に壊して思いのままに出来ますよ?」


「ふざけるな! ジッタさんを殺して、コルネル長老まで! やっぱりイリカは悪の組織の女幹部だ! 悪いやつだ!!」


 

 ルラはそう言ってイリカを睨む。

 しかしイリカは自分の両の腕を抱きしめてうっとりと赤い顔をしてにたりと笑う。



「あああぁん、その殺意に満ちた瞳、すぐにでも私をひねりつぶせる力。ゾクゾクしますぅ~♡」


「イリカ、お前はぁっ!!」



「まだ分からない? この世界は矛盾で満ちているのよ? あなたたちはそれを変えられるだけの力を持っている。一般人の死傷など些細な事。だってこの世界はあの女神に支配され、その魂でさえ自在に輪廻転生させられ女神の思うままにされている。あの女神の都合のいい世界にされているのよ?」



 イリカのふざけたその言葉にルラが叫んだその時、別の場所から別の声がした。

 

 それは紛れもなくアリーリヤの声。

 彼女は教会の隣の建物の影から出て来てこちらを見ながらそう言う。


「学園長、あなたもあの女神のしている事に疑問が無いのですか? 世界の安定をする為とか言いつつ力のある者の魂を掻き集め、そしてこのこの世界の発展を阻止させている。言い伝えでは千年前のあの時より我々人類はほとんど進歩が無い。新たな技術も新たな思考も全てあの女神に押さえられ、我々人類はその可能性を摘み取られている。こんな世界がまっとうなものだというのですか? 王族貴族は優雅な暮らしをし、平民は貧困にあえいでいる所さえある。国どうしは表面上は友好を演じていてもその実、裏ではこんな連結型魔晶石核などという破格なマジックアイテムを作り上げ国力を上げようとしている。一握りの人間だけその富を占有している。努力をした者が報われないそんな世界の何処に希望が持てると?」



 アリーリヤはそう言って右手を上げる。

 そこにはイリヤ同様に中指に真っ赤な宝石の指輪がはめられていた。


「賢者の石…… 二つもあるって事は一体どれだけの人魂を犠牲にしたの!!」




 私はそれを見て思わず叫ぶのだった。

 


面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


*すみませんが、今後当分の間は土、日曜日の更新は停止させていただきます。

うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。

ご理解の程、どうぞよろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] >我々人類はその可能性を摘み取られている  矛盾点って言ってたけど、その程度かぁ。  神が可能性を摘み取ってるんじゃないですよねぇ。  魔法なんて便利なモンがあるからソレで満足しちゃうし、…
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