15-11現状
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
偵察部隊として私たちは先行でこの街を牛耳るアインシュ商会の別荘に来ていて、会長であるメリヤさんの母親、エルバ=アインシュその人に現状を聞いていた。
「あれはいきなり襲ってきました。大体一週間くらい前でしょうか。最初は近隣にサイクロプスが現れたと旅人の報告があり、それに警戒をしていました。しかしその後に街にオーガの集団がやって来て人語をしゃべり、この街を支配すると宣言してきたのです。当然サイクロプスやオーガ程度なら我が商会にある『鋼鉄の鎧騎士』で蹴散らせたのですが、『鋼鉄の鎧騎士』を出した途端あの化け物が襲ってきたのです」
そう言ってエルバさんはぶるっと体を震わせる。
それを旦那さんのガナスさんがそっと支える。
「サイクロプスにオーガの集団……まさしく魔物の軍団ですね。それでその化け物とは一体何なのですか?」
ユカ父さんは頷きながらその先を聞く。
エルバさんはユカ父さんから話の先を聞かれ旦那さんに頷いてからゆっくり話始める。
「正直あの化け物が何なのか分かりません。ただ、上半身が女性的な姿で下半身が蛇と言うか、ぬめぬめした鱗の無い長いものでした。大きさとしては全長多分四メートルくらい、ラーミアとも違い、メデューサでもありませんでした。ただ、その眼は八つありその爪は『鋼鉄の鎧騎士』をやすやすと斬り裂きました。あのような魔物は初めてです」
それを聞いたユカ父さんはしばし考えてから私たちを見る。
「私の知る限り聞いた事の無い魔物ですね。誰か心当たりがある人はいますか?」
しばしユカ父さんは私たちを待つも、誰もが首を横に振る。
だってそんな魔物なんて聞いた事もない。
「その魔物は我々の『鋼鉄の鎧騎士』を倒した後、主らしき人物を引き連れて広場で大々的に宣言したのです、このサフェリナを支配すると。勿論その後も冒険者ギルドや自警団が抵抗を試みましたがオーガやサイクロプスに蹴散らされてしまいました。ただ、あの魔物は動かずずっと広場にいます。そしてその主らしき人物は声高々にボヘーミャにいる双子のエルフを差し出せと言い始めたのです」
「双子のエルフを名指しでですか…… して、その人物とはどのような者なのですか?」
「女性で魔導士らしい格好をしていました。年の頃は二十代半ばくらいです」
女魔導士で二十代半ばくらい。
多分そいつがジュメルの親玉なんだろう。
一体どんな方法で魔物たちを操っているのか分からないけど、そうすると敵はオーガの集団とサイクロプス、そしてその魔物となる訳だけど……
「そうなると魔物たちはその女魔導士に操られている可能性が高いですね?」
「多分そうでしょう。ここサフェリナを支配した目的は学園都市ボヘーミャにいるその双子のエルフらしいのですが……」
そこまで言ってエルバさんは私とルラに気付く。
「エルフで同じ顔の女の子…… まさか!」
そう言って驚くけど、間違いなく指名されているのは私とルラ。
「お母様、双子のエルフでボヘーミャにいるのはこのリルさんとルラさんだけです」
「そんな、こんなまだ若木のエルフをどうするつもりなの?」
メリヤさんがすかさず私たちを紹介する。
実際今学園にいるエルフは私とルラ、そしてソルミナ教授とマーヤ母さんしかいない。
「その件につきましては連合軍議会でも聞いています。そしてこの二人には特殊な力があるのです。相手は間違いなくジュメル。秘密結社ジュメルなのです」
「なっ! あの連中が表舞台に!? しかもこのサフェリナを占領するだなんて!!」
ここでユカ父さんからその真相を聞かされ流石にエルバさんも驚きを隠せない。
私たちをおびき寄せる為にここ貿易都市サフェリナは占領されたことになる。
「しかし我々連合軍が援軍に駆け付けました。私も含め『鋼鉄の鎧騎士』も引き連れてきました。必ずこのサフェリナを解放して見せましょう」
「学園長…… お願いします。サフェリナはもう自衛する力が残っていません。市民は避難させましたが有志の者たちは各拠点に潜伏し、反旗の機会を待っています」
エルバさんはユカ父さんにすがるよにそう懇願をする。
ユカ父さんは二コリと笑い言う。
「ええ、勿論です。時にここには風のメッセンジャーはありますか?」
「残念ながら逃げ出す時に屋敷に残してきてしまいました。今は伝書鳩や密偵を使って街の拠点同士で連絡を取り合っています」
ユカ父さんはそれを聞き頷いてからエルバさんに言う。
「正確な相手の戦力が知りたい。オーガの数、サイクロプスの数、それ以外に何者がいるか分かりますか?」
「大体は。こちらの戦力は冒険者が約五十人、自警団の兵が約二百人各拠点で待機しています」
サフェリナの戦力は両方合わせて二百五十人。
それに私やルラ、ヤリスにユカ父さん。
それとアイザックさんさんたちの「鋼鉄の鎧騎士」五体。
オーガやサイクロプスだけなら十分に対応できるけど、問題はその魔物だ。
「分かりました。後は連中のいる場所を詳しく教えてください。そして各拠点に連絡をしてください。明朝我々連合軍は貿易都市サフェリナ解放の為、魔物の軍団に攻撃をし掛けます」
ユカ父さんはそう言ってさらい詳しい状況を聞き出すのだった。
* * * * *
「アニシス様たちは万が一の時の退路確保か。でも私たちがいるんだから余裕よね!」
ぱんっ!
ヤリスはそう言って平手に拳をぶつけている。
あの後詳細を更に聞き出し、作戦を練る。
そして私やルラ、ヤリスはオーガやサイクロプスを冒険者や自警団の人たちと一緒に退治する事となった。
問題となる魔物はユカ父さんと「鋼鉄の鎧騎士」たちが対応する。
そして一番の問題となろうジュメルの女魔導士をユカ父さんが捕らえ、操っているだろう魔物を大人しくさせると言う段取りだ。
「それでも気を抜けませんよ。私やルラが知っている癒しの精霊魔法だって大きなケガは治せませんからね?」
最近ソルミナ教授の指導で精霊の治癒魔法が使えるようになった。
これは癒しの精霊に働きかけ、外部から魔力を注ぎ込むのでけが人は体力を使わなく怪我が治る。
但し、【回復魔法】程度の能力しか無く、あくまでもダメージの軽減程度だ。
軽い切り傷なんかは治るけど大ケガは対応しきれない。
「ん~、でもあたしたちがどんどん魔物やっつけちゃえば問題無いよ~」
「それでも他の皆さんは私たちとは違うんだから、私は守りを優先ルラとヤリスは皆さんをフォローしながら魔物を倒していかなきゃだよ?」
あっけらかんとそう言うルラに私はそう言う。
メリヤさんやロバートさんたち使用人はアインシュ商会の人たちと別荘で待機。
明日の総攻撃の状況次第ではすぐにボヘーミャに脱出してもらわなきゃならない。
私たちは明日、総攻撃をかけるのだった。
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うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。
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