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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十五章:動く世界
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15-9船のご飯は

故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。

しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?

さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?

そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


 なんかもの凄いデジャブ―があるけど、船で出されたご飯にみなため息をついていたりルラなんか私に泣きついて来ていた。



「はぁ~、分かったわよ。何か作ってあげるからちょっと待ってなさいよ」


 私はそう言いながらアスラックの港町で手に入れた圧力鍋を取り出す。

 そう言えばこれを使う機会があの後ほとんど無かった。

 久しぶりに出してみるけど、魔法のポーチに入れてあるのであの時のまま。

 錆び一つ出ていない圧力釜に思わずにんまりしてしまう。



「何この鍋?」


「えっと、圧力鍋って言うんですよ。これで調理すると短時間で色々作れるんですよ」



 覗き込んで来るヤリスにそう答えながら私は食材を取り出してゆく。

 パンはあるからここは手っ取り早いクリームシチューでも作るかな?


 ポーチからコカトリスのお肉や玉ねぎ、にんじん、ジャガイモ牛乳、小麦粉、粉チーズに塩コショウ、それとニンニクを少々出して並べる。



「これで何を作るのですの?」


「えーと、クリームシチューでも作ろうかと思いまして」


「クリームシチュー!? あたし大好き~♪」


 アニシス様もルラも覗き込んで何を作るか聞いてくる。

 まあ、他に作るにはもうご飯食べ始めてるし時間が無いからこれ一品。


 私は早速コカトリスの硬い肉を肉の間に「消し去る」を使って細かく分断する。

 これ、普通に包丁で切ってたら時間がかかるからね。

 一口大に切ったら、オリーブ油を引いたフライパンににんにくのみじん切りを入れてからきつね色になるまで炒めて圧力鍋に入れる。

 そのまま十五分くらい蓋を閉めてちょろびで蒸し焼きにする。

 

 で、その間に残りの野菜をコカトリスの油も残っているフライパンで炒める。

 コカトリスのお肉が蒸しあがったので、竹串を刺してみる。



 すっ!



「ん~、このくらい柔らかくなればいいか。さてと」


 コカトリスのお肉が柔らかくなったのを確認してから炒めた野菜も入れて、沸かしておいたお湯をひたひたになるくらいの少量入れる。

 そしてふたを閉めて五分くらい煮込む。

 またまたその間にフライパンで小麦粉を炒りながら牛乳を加え、とろみのあるソースを作る。



「いい匂いね~」


「ああ、隠し味でバターも入れてますからね。これに粉チーズも入れてっと」


 粘度の高いどろりとしたソースが出来あがる。

 それを圧力鍋に溶かしながら入れて行って、牛乳をもう少し足す。


「塩コショウを少々入れて、蓋閉めてまたちょろ火でしばらくっと」


 圧力釜の蓋を閉めてしばし火加減を見ながら煮込んで行く。


「圧力鍋と言うと、この蓋を閉めて加熱する事により水蒸気の圧力をかけるのですの?」


「えっと、原理はそうですね。圧力がかかって加熱されると煮込み時間とかもの凄く短くて済むんですよ。それとお肉とかは柔らかくなりますしね」


 アニシス様がこの圧力鍋の原理に興味を持つ。

 こちらの世界ではまだあまり普及していないので、知らない人は知らない様だ。


「ふぅ~ん、それでいちいち蓋閉めるんだ」


「そうしないと圧力がかかりませんからね。ただ、ここで大火力で鍋を温めると内圧が高くなりすぎて爆発する事もあるんですよ」


「料理で爆発!? 何それ!!」


 知らない人からすれば驚きだろうけど、一応この圧力鍋にも圧力逃がしの「ピー」がついている。

 これが無いと本気で内圧が高くなりすぎて「ぼんっ!」って鍋壊れるからなぁ。

 生前、お母さんがやらかして大惨事だったのを覚えている。


「なるほど、鍋の内圧を高めると食材が柔らかくなるのですわね。これは面白いですわ」


「煮込み料理とか便利なんですよ~」


 言いながら様子を見ていると、「ピー!」が鳴り始め湯気を勢いよく吐き出す。


「わわわ、リルこれ大丈夫なの?」


「ああ、これは内圧がかなりかかっているお知らせですよ。ここでしばらく圧力がかかっているのを見て、大体十五分くらいですかね? そうすれば出来上がりです」


 多分クリームシチューだからその位で食材は柔らかくなるだろう。

 本当はじっくり煮込んでお野菜とかにも味を良く染み込ませたいのだけど、これでも十分に味は染み込むからいいだろう。

 

 私たちは暫し「ピー!」を見ながら食器を準備する。


「そろそろ良いかな?」


 私は言いながら火を落す。

 するとしばらくして「ピー!」が止まる。

 グローブをはめて蓋のロックを解除して開けるとホワンとしたいい香りが漂う。


 私は早速お玉でそれを少しすくい、味見の小皿に入れてみる。


「う~ん、こんなもんかな? 出来ました!」



 おおおぉ~



 周りがそれを見ながら声を上げる。

 私は早速それをお皿に入れながらみんなに手渡す。


「はい、どうぞ熱いから気を付けてくださいね。あと、パン付けながら食べても美味しいですよ」


 言いながら手渡すと、周りに他の人も集まって来る。

 うん、それは想定内。

 なので沢山作っておいた。


「はいはい、皆さんお分もありますから並んでくださいね~」


 言いながら皆さんにも配る。



「いただきま~す!」


 ルラはそう言って早速スプーンでそれを口に運ぶ。

 


 ぱくっ!



「おいひぃ~! はふはふ!」


 それを見ていたヤリスもアニシス様もクリームシチューを口に運ぶ。

 

 

 ぱくっ!!



「んんぅ~っ! なにこれ美味しい!!」


「本当ですわ、こんなに濃厚な味わだなんてですわ」


 ヤリスもアニシス様もそれを口にどんどん運ぶ。

 それを見ていた周りの皆さんも食べ始めると、途端に歓声が上がる。



「なんだこれ! うめぇっ!」


「すげー、濃厚でトロトロな味わい!」


「こんなシチュー喰った事が無いぞ!?」


 

 わいのわいの



「何を騒いでいるんだお前たち?」


 みんなでクリームシチューを食べながら騒いでいたらアイザックさんがやって来た。


「ああ、クリームシチューを作ってみたんですよ。アイザックさんも食べます?」


「クリームシチュー? シチューなのかい??」


 言いながらそれを手渡す。

 アイザックさんはそれの匂いを嗅いでから口に運んでみる。



 ぱくっ!



「!?」


 驚きの表情を見せたかと思うと一気にそれを食べきる。


「リルちゃん、なんだいこれは!! うまいっ!!」


「えっと、だからクリームシチューなんですけど…… ちょ、近いですってば」


 やたらと近くに寄ってそう言うアイザックさん。

 途端にヤリスとアニシス様が声を上げる。


「ちょっとアイザック! リルは私の嫁よ? 離れなさいな!!」


「そうですわ、リルさんは私の大切な人なのですわ!!」


 二人のその勢いに思わずたじろぐアイザックさん。

 と、そこへ今度はユカ父さんも来る。


「どうしたのですか? 何やら騒がしいようですが」


「あ、ユカ父さん! お姉ちゃんが美味しいクリームシチュー作ったんだよ~」


 ユカ父さんは私の方を向いて首をかしげる。


「リルが作ったのですか?」


「あ、はい。ユカ父さんも食べてみます?」


 そう言ってお椀にクリームシチューを入れてスプーンと一緒に手渡す。

 するとユカ父さんはそれを受け取り口にする。


「むっ! これは!! リル、見事です。これはあちらの世界の物と遜色有りません!!」


 そう言ってクリームシチューをぺろりと食べてしまった。



「ご馳走様でした。大変美味しかったですよ。流石は我が娘です」


「いやぁ、そんなに喜んでもらえるとは。そうだ私も食べないと……」


 そう思って鍋を見ると既に中身が無くなっている!?


「あ、あれ??」


 さっきまでまだあったのに??

 私は周りを見るとアニシス様もヤリスもルラもアイザックさんまでもがまだクリームシチューを食べている?


「あ、あれ??」


 みんな一杯目は食べ終わったんじゃ……

 という事は……



「わ、私の分っ―っ!!!!」


 


 そう叫んでも時すでに遅しだったのだった。

 


面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


<業務連絡>

*申し訳ございませんが、海外出張が確定となりました。

2023年10月14日から22日まで上海に行く事となってしまいました。

こちらなろう様は中国からのアクセスが出来ませんので、その間更新はお休みさせていただきます。

不便な国ですよね~中国って……

こんな物語を読んでいただいている読者様には申し訳ございませんが、どうぞご理解の上よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] >私は早速コカトリスの硬い肉を肉の間に「消し去る」を使って細かく分断する。  例の敵が筋肉で動いているなら、コレで何も出来なくなりそう。 筋(あと神経なんか)も切ってそうだし。  こういっ…
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