15-8貿易都市サフェリナへ
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
今私たちは合流した連合軍と一緒にボヘーミャの港からサージム大陸の貿易都市サフェリナに向かって船を出発させていた。
「確か船で三日もしますとサフェリナに到着ですわ」
アニシス様はそう言いながら書類に目を通している。
甲板に「鋼鉄の鎧騎士」を固定してシートをかけていた。
そんな甲板で私たちは遠くなるボヘーミャを見ながらつぶやく。
「これって、あっちの世界の舟に似てる…… しかも帆が無く動くなんてまさしくあっちの舟と同じ。船体も鉄で出来ているし……」
「お姉ちゃん、それってすごいの?」
私はこの船を見てそうつぶやく。
なんたって鉄の船体で帆が無いなんてあっちの世界の舟そっくり。
「この船はサフェリナのアインズ商会とガレント王国だけが所有する鉄の舟ね。女神様たちがその昔私たちに与えた知恵の一つで、鉄なのに水に浮いたり『すくりゅー』とか言うので船が動かせたりともの凄く性能が高いのよ!」
ヤリスは海の上を走る風に心地よさそうにその青い髪の毛をたなびかせる。
うーん、海の上って相変わらず精霊力のバランスが悪いわよねぇ~。
水の精霊と風の精霊しかいないんだもん。
それも二つの精霊だけやたらと多いから、人によっては精霊酔いでもしそう。
「ふぅ~ん、そうなんだ。でもこれって水の精霊が上まで来ないから楽でいいよね~」
「あ、そう言えばそうだね。何でだろう?」
私はルラのその言葉に魔力を目に込めてみると、鉄のせいで水の精霊が甲板まで上がってこれないらしい。
そう言えば精霊って金属を好まないんだっけ。
「そんな事より早くサフェリナにつかないかな…… お父様お母様無事かな……」
同行している生徒会のメリアさんは海の向こうを見ながらそう言っている。
アインシュ商会の娘さんで、今回の件でユカ父さんに嘆願して同行してきている。
と言うか、この船はアインシュ商会の舟でボヘーミャから連合軍と私たちを運搬する事に協力してくれている。
「防衛線は瓦解しているらしいのですが、ジュメルとその魔物は今は活動を停止してあなたたちを連れて来いと言っているらしいのです」
聞こえてきたその声はユカ父さんだ。
甲板にユカ父さんはやって来て私たちの所まで来る。
「あの、学園長なんでその魔物たちはリルさんとルラさんを指名しているんですか?」
「メリア、あなたはアインシュ商会の者でしたね。いいでしょう、相手の正体はジュメル、秘密結社ジュメルなのです」
「ジュメル? ジュメルってあの世界を混沌に落とし入れると言うあのジュメルですか!?」
どうやらメリアさんもジュメルについて知っている様だった。
その名を聞いてかなり動揺している。
あのいつも明るいメリアさんがだ。
「ジュメルの目的がリルとルラだとしてもそれだけでサフェリナや連合軍を敵に回すとは。相当自信があるのでしょうね」
ユカ父さんはそう言って「鋼鉄の鎧騎士」を見る。
「今回連合の『鋼鉄の鎧騎士』は全部で五体。アニシスが手掛けた改修型があるとは言えかなり苦しい戦いになるでしょう。何せ相手の魔物は今までに何体もの『鋼鉄の鎧騎士』を葬り去って来たのですから」
「学園長、今度こそは奴をこの私が仕留めて見せますよ」
そう言ってこちらにやって来るのはアイザックさんだ。
今回連合軍の「鋼鉄の鎧騎士」の騎士団長でもある。
「アイザック殿、しかし相手はアニシスの連結型魔晶石核をも取り込んでいます。十分に注意する必要があります」
「大丈夫ですよ、こちらにはアニシス様がおられる。私の改修型も整備は万全。スィーフでの屈辱は必ず晴らして見せますよ」
そう言ってアイザックさんはやたらとアニシス様に向かってアピールをする。
まあアニシス様はそれに気付いていない様だけど……
「とにかく一刻も早くサフェリナに行ってその魔物を退治してください! 私はお父様やお母様が心配で心配で……」
メリアさんはそう言ってガシッとアイザックさんの手を取る。
アイザックさんはそれに焦りながらチラチラとアニシス様を見るけど、全然気にしていない感じ。
「アイザックの奴、アニシス様に良い所見せようとしているんだろうけど無駄なのにねぇ」
「ちょっと不憫ですね、アイザックさん」
「ん~何が??」
ヤリスも私もルラもそんな様子を眺めながらアニシス様を見るのだった。
* * * * *
「う~ん、これはぁ……」
夕食で準備されたのがスープとパンだけなんだけど、なんかその昔キャラバンでの食事を思い出す。
お腹がふくれさえすればいいというアレ。
それとよく似ている晩御飯。
「お姉ちゃぁ~ん!」
「分かってるって。うーん、仕方ない」
私はそう言ってポーチから道具と食材を取り出すのだった。
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うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。
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