15-5伝授
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
ユカ父さんは私とルラを連れて試験場に来ていた。
「それでは始めます。まずは自分の魔力を高めなさい」
ユカ父さんはそう言って瞳の色を金色にする。
私やルラは言われた通り、自分の中の魔力を高める。
あっちの世界では魔力と言われてもピンとこなかったけど、こちらの世界でこのエルフの身体は意識すると胸の奥から何と言うか、じわっと温かいものがあふれ出す感じがする。
それを目に流すイメージをすれば精霊が見えたり、声に出して精霊にお願いをすると精霊魔法が使える。
こちらの世界で魔力とはそんなふうに当たり前に体の中をうごめく血流の様な物だ。
「んっ!」
「はぁっ!!」
私もルラも言われた通り魔力を高める。
「そうです、その調子です。そしてその魔力の出てくる場所を感じるのです」
二人して魔力を高めているとユカ父さんはそう指導してくる。
魔力の出てくるところ?
そう言えば今まで魔力は出せるけどその大元って何処だか考えた事すらない。
私は言われた通りその出所を感じてみる。
それは胸の奥、深く深く心臓とか臓器の奥じゃない。
何て言ったら良いのだろう、魔力があふれ出すその場所は意識すればするほど深く感じる。
「魔力の出どころって、どこぉ~?」
「ルラ集中して! 感じて、胸の奥、深く深い所を」
こう言う事に弱いルラだけどこればかりは私の手助けは出来ない。
私自身だってその出所を感じるのがもの凄く難しく感じる。
「その調子です、魔力の出てくるところすなわちそれがあなたたちの魂です!」
ユカ父さんはそう言って魔力の出どころ、魂を感じろという。
魂。
前世ではオカルト的なもので、あるかどうかもはっきりしないモノ。
でもその魂という概念は皆が持っていて日本以外でも魂という存在は信じられている国は多い。
とすると、魂って実在するのだろうか?
いや、こっちの世界に転生しているのだから存在しているのだろう。
そしてユカ父さんの言う通りならこの魔力があふれ出す源が魂。
今まで感じた事の無かったそれを私は懸命に見つけようとする。
「あっ、これって!!」
ルラはいきなり明るい声を上げる。
ちらっとそっちを見ると、深い緑色だったルラの瞳の色が若干金色っぽくなっている。
「ユカ父さん! これ、これって魂なの!?」
「そうですルラ、それがルラの魂。あなたの根幹です。もっと強く、もっと深くその魂を感じなさい!」
何と、ルラの奴もう自分の魂を見つけた!?
私はまだ魔力があふれ出す底にまでたどり着いてさえいない。
少し焦り集中するけど、それを探して奥へ奥へ行こうとすると更に深くなるように感じる。
「くぅ、いくら奥に行っても魔力があふれ出すところに辿り着けない!!」
「リル、邪念を捨てて集中しなさい。感じるのです、あなたの魔力が出てくる場所を」
「そんな事言っても、探れば探るほど深くて……」
駄目だ、その場所は私にはとても深く感じてしまう。
ルラはこんな深い所をもう探り当てた?
どんなに深く深く潜ろうとしてもそれは届かないほど深い。
「なんで見つからないのよぉっ!!」
半ばやけになってそう叫んでみる。
するとルラが意外な事を言い出す。
「お姉ちゃん、秘密の力! 秘密の力を使う時のあの感じだよ!!」
「秘密の力? 私たちのチートスキル??」
ルラに言われ、私はただ闇雲に探していたそれをあのチートスキルを使う時の感覚に置き換える。
すると……
「あっ! この感じっ!!」
「そうですリル、それがあなたの魂です! もっと感じなさい、あなたの魂を!!」
ユカ父さんに言われ私はその大きなものを感じる。
そして理解する。
これは私だ。
リルという私であり、榛名愛結葉という私だ!!
「って、なにこれ? 私の魂でかっ!!」
驚いた、何と言うかもの凄く大きく感じる。
魂って何と言うか、地球という表現をすればいいのだろうか?
今私が立っているこの場所の足元が魂なのだろう。
そこからまるで水蒸気のように魔力が立ち上っている。
「ユカ父さん! 魂ってこんなに大きいんですか!?」
「そうです、私たち異世界からの住人は全てその大きな魂を持っています。あちらの世界では魔力が魂より出せない。故にあちらの世界の住人の魂は皆こちらの世界の住人に比べ大きいのです!!」
いや、そう言われても他の人の魂見た事無いから比較できないんだけど……
しかし、ともあれこれが私の魂。
見つけた、自分の魂を!!
「二人とも素晴らしいです。それを見つけられるかどうかは全てあなたたち自身の事です。しかし自分の魂を見つけられれば後は簡単です、今のその肉体とその魂を重ねなさい。『同調』をするのです!」
ユカ父さんにそう言われ私は見つけたその自分の魂とこの体を重ねる。
それはとても不思議な感覚。
地球みたいに大きなものがこの小さなエルフの私の身体と重なっていく、満ちて行く。
本来大きさが全く違うそれは不思議なくらいこの体と重なって行って……
きんっ!
何の音だろう?
甲高い金物が鳴ったような音が聞こえた瞬間、目の前の風景が変わった。
「なっ! なにこれ!! 魔力が、マナが流れている!?」
「うわぁ、凄い凄い、あ、マーヤ母さんがずれている?」
ルラも同じものが見える様で、マーヤ母さんがずれているという。
私は心配で付いてきていた壁際でこちらを見てたマーヤ母さんを見る。
すると、透明なマーヤ母さんがマーヤ母さんに重なると言うか、その半透明な方が動いた後にマーヤ母さんが全く同じ動きで追従している?
「どうやらマーヤの動きが重なって見えるようになったのですね? 素晴らしい、それが『同調』の状態です。肉体は魂によって動く、それは魂がそう動こうとすることに肉体が追従してくるのです。これであなたたちは相手の動きを先読みできるようになりました。その流れを、その動きを感じ先読みする事により莫大な力が発揮できます、このように!」
ユカ父さんはそう言って一瞬で私たちの目の前にまで入って来る。
でも今はその動きがいつもより遅く感じる。
いや、私たちがその動きについていけている?
「よっと!」
ばしっ!!
いつもならその一撃は確実に決まってしまうのに、ルラはユカ父さんのその拳を受け止めていた。
「あ、あれ? いつもはこんなに早くユカ父さんのパンチが受け止められないのに!?」
「見事ですルラ、これが魂と体が完全につながっている状態、『同調』なのです。あなたはこれで今までよりもっと強くなりました」
ユカ父さんはそう言ってゆっくりとその手を引く。
「二人ともよくやりました。この『同調』をここまで容易に体得したのはあなたたちが初めてです。あのエルハイミたちでさえここまで早くこの『同調』を体得できなかった」
「ええっ!? エルハイミさんでさえ??」
「へぇ~じゃあ、あたしたち凄いんだ!!」
エルハイミさんのたちの事を聞いて驚く。
この「同調」って確かに感覚をつかむのは難しい。
私たちはチートスキルがあったからそこからヒントを得てこの感覚をつかんだ。
もしそれが無かったらもっと時間がかかっていただろう。
「後はこの『同調』と通常の状態を繰り返す事により容易に『同調』出来るようになるでしょう。何時でもそれが出来るようになればそれすなわち、あなたたちのスキルも同様にコントロールが数段上がると言うモノです」
ユカ父さんはそう言って瞳の色を元の黒い色に戻す。
「見事でしたリル、ルラ。免許皆伝です!!」
ユカ父さんはそう言ってにこやかに笑ってくれるのだった。
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うちの嫁さんの父親が病院に行く事となり、介護等で忙しくなり小説を書いている時間が取れそうにありませんので。
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