15-1質問
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
生徒会室へ呼び出しをされた。
「なんなのだろうね、お姉ちゃん?」
「うーん、学園じゃなくて生徒会って言われてもね。とにかく行って見るしかないでしょう」
ルラと並んでそんな話をしながら生徒会室へ向かう。
「あれ? リルとルラじゃない」
と、ここで声を掛けられる。
見ればそこにはヤリスがいた。
「あれ? ヤリス受講は?」
「私は生徒会室へ呼び出し喰らってるのよ。リルとルラも?」
「はい、そうなんですよね。何だろう?」
ヤリスにはまだ昨日の事は話していない。
目撃者もほとんどいなかったからそれ程の騒ぎにはなっていないけど、マーヤ母さんは既に学園に伝達している。
「とにかく行って見るしか無いわね。いこっか?」
「そうですね」
ヤリスとそんな会話をしながら私たち三人は生徒会室へと向かうのだった。
* * *
「よく来てくれた。まずはこちらにどうぞ」
生徒会室の扉を叩いて中に入ると生徒会長のアスラスさんが出迎えてくれた。
アスラスさんは確かホリゾン公国の第一王子。
銀髪のルックスが良い人で第一王子なので女の子の間ではひそかに人気が高い。
「それで何の用?」
「すまんね、ヤリス王女。これも生徒会としてやっておかねばならない事なんでね」
そう言いながらソファーを進める。
私たちは勧められたソファーに腰をおろすとその相向かいにアスラスさんが座る。
「さて、君たちを呼んだのはアリーリア君についてだ。周りの生徒たちから聞いている範疇ではアリーリヤ君は君たちと仲が良かったらしいのだが?」
「いや、私はほとんどしゃべった事も無いわよ? そう言えばあいつリルやルラには結構話しかけていたっけ」
「結構と言うか、話してもあまり相手にしてもらえないと言うか……」
アリーリヤがジュメルで先日の女子寮での騒ぎの張本人と言う事は周知だった。
そして昨日私たちの前に現れた。
「実は彼女の部屋から残っていたものが見つかってね、そこに君たちについての資料があった」
そう言ってアスラス生徒会長は私たちの前に資料を出す。
「既に学園側からは緘口令が出されている。私も王族なのでこう言った情報については勿論秘匿にすることは約束するよ」
そう言って腕を組む。
なんの資料かと思い、覗き込むと私やルラ、そしてヤリスについて色々と書かれていた。
「これ、私はまあ周知だけど、リルとルラのスキルについてかなり詳しいわね……」
「ヤリスが覚醒者ってのは皆の前で見せてますからね…… でも私たちのスキルをここまで正確に……」
それはイージム大陸での事まで書かれていた。
「天候の塔」の事は勿論、ドドスでの出来事やデルバ村の事も。
アスラス生徒会長は私を見ながら聞く。
「これは本当なのかな?」
「……はい」
アリーリヤがジュメルだったと言う事は、私たちの事についても情報があるってのは理解はできる。
でも、普通はスキル持ちについて程度はあるもののここまで詳しく調べられているとは意外だった。
「女神様に対抗できるほどの力か……」
アスラス生徒会長はそうつぶやく。
そして一旦目をつぶってから私たちを見る。
「アリーリヤ君がジュメルの一員だったわけだが、君たちとの接触はこれらが目的となるのだろうか?」
「でしょうね。もっとも、私よりもあいつらリルとルラを狙っているみたいだけど」
アスラス生徒会長にヤリスはそう苛立ちを持って答える。
「私のリルとルラに手をだそうだなんて、いい度胸よ……」
「何時から私はヤリスのモノになったんですか? それより生徒会長この事は学園から緘口令が出ているって言ってましたけど、他に知っているのは?」
「学園の者数名と生徒会の人間だけだよ。安心して欲しい、生徒会の者には私の名に懸けて君たちの秘密は口外させない」
アスラス生徒会長がそう言ってくれるので私は一安心をする。
「しかし、まさかジュメルが関わっているとはな…… 我が国もジュメルには散々な目にあわされたからな……」
「でしょうね。むしろ奴らに被害に遭っていない国なんて無いでしょうに」
アスラス生徒会長は大きくソファーに座り直しため息をつく。
それに同意するようにヤリスも頷く。
ジュメル。
マーヤ母さんからもいろいろ聞いているけど、人類史が始まった時から存在する秘密結社。
その昔、協力者は貴族、王族にまで及んでいたらしい。
「学園に来れば政治的な事は暫し関与しないで済むと思ったのだがな…… ジュメルが動いたとするとそうもいくまい。ヤリス王女、リル君、ルラ君。君たちに協力を要請する」
アスラス生徒会長はそう言って私たちを見渡す。
「協力って、なにするつもりよ?」
「学園内での生徒たちの素性調査を始める。まさか今回ジュメルの関係者が生徒として潜り込むとは思わなかったからな。しかも一般人の成績主席がジュメルとは。王族や貴族などと違い出所があいまいな一般人は調べるのが不十分になりやすい。今後については学園側との協議が必要だが、生徒会としては学生の安全を確保する為にも事前に動く必要がある」
そう言って私たちに腕章を差し出す。
「自警隊の腕章だ。今後生徒会の活動において何か有ったら協力をして欲しい」
「ふ~ん、ガレントの私に協力を要請するんだ~」
「今は一生徒として学園の生徒の安全を守るために動いている。七百年前の因縁を持ち出されては困るのだがな」
ヤリスはそれを聞き鼻を鳴らしてからその腕章を手に取る。
「いいわ、協力してあげる。私のリルとルラに手を出したジュメルは許せないからね」
「いや、だからいつ私はヤリスのモノになったんですか!?」
思わずヤリスに突っ込みを入れてしまう私だけど、ユカ父さんたちには首を突っ込むなって言われていた。
でも……
「分かりました。私たちも協力をします」
「お姉ちゃんがやるならあたしも~」
私とルラもその腕章を手に取る。
学園がまた騒動に巻き込まれるのは嫌だ。
だからできる事はやりたい。
私はそう思うのだった。
「ところでこの資料、もうちょっと良く見せてよ! なになにリルとルラの身体測定の数値も書いてある? リルはバストが七十センチでアンダーとトップの差がほとんど無いと。でウエストが四十六? あ、でもヒップは七十九で身長が百五十七、体重がさんじゅう……」
「ヤ、ヤリス! なんでそんな事まで資料に書いてあるんですか!? ちょ、それよこしてください! 駄目ぇっ! 見ちゃダメぇっ!!」
思わずその資料を「消し去る」しそうになる私だったのだ。
面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。
誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。




