14-30生徒会室
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
昨日は何故かよく眠れた。
マーヤ母さんの胸の中で大泣きしたせいだろうか?
朝起きて、隣にいるルラを見る。
ルラはまだ寝息を立てて寝ている。
時間的にはまだ余裕があるので思わずその寝顔を眺める。
「拓人君だったルラは今の自分をどう受け止めているのかな……」
赤城拓人君。
あっちの世界ではまだ小学一年生になったばかりの男の子。
正直面識も何も無くてただ交通事故から助けたい一心で彼をトラックから救い出したまではいいけど、その後にありえない死に方を私たちはした。
まるで運命からは逃れられないと言わんばかりに。
そしてあの世であの駄女神に出会った。
もうどんなにすごい力を持っていようと私の中では駄女神は概定になっている。
「見た目はエルハイミさんと同じなんだけど、エルハイミさんはもっとぼぅ~っとした感じな人なんだよなぁ。あれで今の女神様やっているって言うんだから驚きだけど……」
そうつぶやいてからふとある事に気付く。
なんでエルハイミさんが女神なんかやっているのだろうか?
確かにエルハイミさんはもの凄い力を持っていると聞く。
なんでも「破壊と創世の女神」であるらしいけど、実際には「育乳の女神」とか「子宝の女神」とか「無慈悲の女神」とかいろいろな呼ばれ方をしているらしい。
「破壊と創造の女神」って言うのはマーヤ母さんから聞いたけど、エルハイミさんの大いなる力、私たちで言うチートスキルみたいなものらしいけど、「破壊」と「創造」って相反するよね?
まさかあの人がいろいろ壊してまた作り直しているとか、そんな事をこの世界でおこなっているというのだろうか?
それに、エルハイミさんも私たちと同じ世界からの転生者だって聞いた。
ユカ父さんと同じ所から来たって言うから、「日本」で間違いないだろう。
どの時代かは分からないけど、「指切り」とか「薄い本」という指南書を持ち込んでいるあたりから現代日本なのだろう。
ユカ父さんは何と戦時中の時代から来ているとか言っていたけど、そうするとこの世界とあっちの世界では時間のずれが大きい。
ユカ父さんも一度はあっちの世界に戻ったけど、またこっちに帰って来た時には時間のずれは無いとか言っていたらしいので、どんな条件だかは分からない。
ただ一つ言えるのはエルハイミさんほどの力を持つとあっちの世界に行き来できると言う事だ。
じゃあ何故エルハイミさんはあっちの世界に帰らないのか?
昨日マーヤ母さんに聞いたらエルハイミさんがこの世界にいるのはティアナ姫の為らしい。
つまり、こっちで好きになったティアナ姫の為にこの世界に居続けると言うのだ。
正直、もの凄く個人的理由なのではとか思ったけどこの世界をティアナ姫の為に維持するのは安定をもたらす事らしい。
エルハイミさんの前の主神である天秤の女神アガシタ様は良くも悪くもバランスを重要視していたらしい。
だからどこかの国が力をつけすぎたり、ジュメルが力を増し過ぎるとそれを収めるけど、決して滅ぼしたりはしなかったそうだ。
「この世界って一体何なのだろうね…… いや、元居た私たちの世界だって同じだけど、そもそもこんな異世界がまだまだゴロゴロあるって言うのは驚きだけどね」
私たちの今いる世界は簡単に言うと創造主である「あのお方」事、駄女神が作っているらしい。
何の目的かは分からないけど、その都度色々な世界を作っているらしい。
そして世界は「世界の壁」とか言う風船みたいなもので包まれていて、その壁が壊れるとこの世界自体が消えてなくなってしまうらしい。
それは転生も生まれ変わりも何も無くなってしまう完全な「無」になるとか。
いや、そう言われてもピンとこないんだけどね。
この辺の話はある一定の人たちだけが知る「世界の秘密」らしく、絶対にジュメルなんかには知られちゃいけない事らしい。
ジュメルの目的はこの世界の破滅。
この世界すべてを破壊し、消し去るのが目的らしいけど、どうやら滅亡を望む連中が中枢に昔からいるせいらしい。
もっとも、私が会ってきたジュメルの連中はどちらかというと自分の欲望に忠実だったような気がする。
あのアンダリヤとか天候の塔にいた何とかって人や、そして私たちが騙されたイリカとか……
「アリーリヤはこの世界に矛盾がると言っていたけど、なによそれ? 私たちにはそんなモノ無いわよね?」
ルラを見ながら私はそうつぶやいてみる。
幸せそうに寝ているルラ。
今は髪の毛をほどいているから私とルラは他の人には見分けがつかないだろう。
じゃっかんルラの方が胸が大きいからそこで判断するという手はあるけど……
私はそんなルラの寝顔を見て思わず吹き出しそうになる。
「は、鼻提灯!? 初めて見た、本当に鼻から提灯出るんだ!!」
ルラは気持ちよさそうに鼻提灯を膨らませ寝ている。
いや、もしかして私も同じ顔だからこんな感じで寝ているのだろうか?
「すぴー、すぴー」
ルラが呼吸するたびに提灯が大きくなったり小さくなったりする。
いや、これって漫画でしか見た事無かったものだから凄く感動してしまった。
「すぴー…… ぱちんっ! むにゃ?」
しばらく見てたらルラの鼻提灯が割れてうっすらと目を覚ます。
「むにゃぁ~、ん~良く寝たぁ~。あれ? お姉ちゃんもう起きてたの、おはよう~」
「うん、おはようルラ。ねえルラはこの世界好き?」
「へ? うん、勿論好きだよ。お姉ちゃんと一緒にいられて毎日が楽しいしね!」
起き抜けの眼を擦っていたルラにそう聞くとルラはにぱっと笑ってそう言う。
私は一人色々考えていたのが馬鹿らしくなって、起き上がり布団をたたみ始めるのだった。
* * * * *
朝、普通に学校へ行ったら教室の人から生徒会室へ行くように言われた。
受講がもうすぐ始まってしまうのだけど、そっちは許可を得ていて急ぎ生徒会室へ来てくれとの事。
私とルラは首をかしげながら生徒会室へと向かうのだった。
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