14-28スカウト
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
ガレント王国で緊急招集がかかり連合軍が会議をする事になった。
学園長であり、連合軍の顧問でもあるユカ父さんと、ティナの国の代表としてアニシス様がゲートでガレント王国に向かって二日が経った。
「はぁ~、リル、ルラ今日もソルミナ教授の所へ行くの?」
「はい、とりあえずは行って見ようかと思いますけど?」
「お姉ちゃん、行く前にたこ焼き買って行こうよ~」
今日の受講が終わって、この後はソルミナ教授の研究室へいつも通り行こうと思っていた。
そんな私たちにヤリスはつまらなさそうに聞いて来た。
「う~ん、私は今日は行くのやめとくわ。アニシス様がいないと私が覚醒状態になっても意味ないもんね」
「そうですか? じゃあ、私たちはそろそろ行きますね」
「またねヤリス~」
私とルラはそう言ってヤリスに手を振って教室を出る。
ルラがたこ焼き買っていきたいからというので途中で購買部に寄ってからソルミナ教授の研究室へと向かう。
* * *
「こんにちわ~、ソルミナ教授いますか? たこ焼き買ってきましたよ~」
「こんにちわ~ソルミナ教授たこ焼き食べようよ!!」
扉を開けて中に入りながらソルミナ教授に声を掛ける。
すると、ソルミナ教授が宙に浮いてその周りに風が待っていた。
「あっ」
それは私たちエルフ族が使う風のネットワーク。
今ソルミナ教授は風のネットワークでファイナス長老からのメッセージを受け取っている様だった。
ソルミナ教授はしばし目をつぶって風の精霊が運んでくるメッセージを受け取っている。
私たちにはまだ使えないその精霊魔法はこうして外の世界に出ているエルフたちの連絡網として大いに役立っている。
そして変化の無いエルフの村にも数少ない情報の伝達手段として大いに役立っている。
「ふう……」
ソルミナ教授はそうため息をついてから体にまとう風を解き、床に足をつける。
「ソルミナ教授、ファイナス長老から何か有ったんですか?」
「あら、リルにルラ。良い所に来たわね、今ちょうどファイナス長老から連絡があったの。ファイナス長老もゲートを使ってまたガレント王国へ行く事になったわ。あなたたちの事も心配していたけど、決して首を突っ込まないでって釘打って来たわよ?」
ユカ父さんに続きファイナス長老まで……
そりゃぁジュメルが裏で暗躍しているらしいと聞いて複雑な気持ちではある。
あの連中には散々な目にあったし、出来れば関わり合いになりたくはない。
でもしつこくやって来るならば話は別だ。
降りかかる火の粉は払わなければならない。
「分かっていますよ、ジュメルは面倒な連中だし出来れば関わり合いになりたくはないですよ……」
「そう…… ならいいけど、マーヤ同様私もレミンから頼まれているしね。若木がジュメルに関わる事は避けてもらえると助かるわ」
そう言うソルミナ教授はお母さんとも友人で知り合いでもあった。
だから余計にいろいろと気にはかけてもらっている。
「でも、ファイナス長老ってそのこと伝えに来ただけなの?」
私がそんな事考えていたらルラはおもむろにそんな事を言う。
それを聞いてソルミナ教授は苦虫をかみつぶしたような表情になる。
そして少し黙ってから私たちに向き直って話始める。
「私やマーヤはファイナス長老から話を聞いているわ。リルとルラが特別なスキルを持っていて、その力は女神をも超える力だと。あなたたちがイージム大陸に飛ばされた話も聞いているわ。そしてその時にジュメルに関わっていたことも…… 率直に言うわ、とにかくあなたたちは大人しくして。ジュメルはあなたたちのそのスキルを狙っているらしいのだから」
ソルミナ教授はそう言って新型の連結型魔晶石核を撫でる。
「私がアニシスの提案に協力する気になったのは、ジュメルが何か仕掛けて来た時それに対抗できる力になるならばそれが良いと思ったから。ジュメルには私たちエルフ族も浅からぬ因縁があるからね……」
「……」
ソルミナ教授にそう言われ私は黙ってしまう。
確かにイージム大陸では苦労をした。
でも出会う人みんなが良くしてくれたし、色々とお世話にもなった。
渡りのエルフである人達にも良くしてもらった。
そして面倒なジュメルともかかわりを持ってしまった。
最初は単に私たちエルフ族の魂が「賢者の石」を作るのに適しているからと思っていたけど、私たちのスキルについて連中が興味を持ち始めていたのも事実だった。
だからだろう、エルフのみんなは私たちとジュメルを引き離そうとしてくれる。
それは私たちがまだ若木であるからというのもあるだろう。
そしてファイナス長老を始めある程度の人たちは私たちのスキルについて知っていて、そして私たちの正体についても知っている。
私たちは異世界からの転生者だ。
そしてこの世界の人たちが呼ぶ「あのお方」である駄女神に出会ってこのスキルをもらった。
あの駄女神は私たちがこの世界で面白そうだからと言ってたまに覗いているとかも言っていた。
そして大魔導士杯決勝戦で魔力暴走した時に出て来て忠告をしていた。
だから分かっている、私たちのこのスキルは使い方によってはこの世界を滅ぼせると。
「……大丈夫ですよ、ユカ父さんにも言われましたから。私もルラも大人しくしてますから」
「……そう、そうしてもらえると助かるわ。とにかく何か有ったら私でもマーヤでも構わないわ、話してね」
ソルミナ教授はそう言って優しい笑顔を見せてくれるのだった。
* * *
「お姉ちゃん、ソルミナ教授の言ってたこと……」
「うん、エルフのみんなは私たちの事を気にしてくれている。そしてここへ来た目的も忘れてはいない。この力を何があっても制御できるようになるって事を……」
ソルミナ教授の研究室を出て家に戻る所だった。
とぼとぼと人どうりの無い通りをルラと一緒に歩いている。
「しかし我々にはその力が必要となる」
その声はいきなり聞こえて来た。
この声、間違いない!!
「アリーリヤさん!!」
「あなたたちのその力、我々に協力するつもりはない?」
慌てて周りを探すと街灯の上に学生服姿の彼女が立っていた。
「お姉ちゃん下がって!!」
ルラは私をかばうようにすぐさま間に入る。
「ずっとあなたたちを見ていた。そしてあなたたちが理性的な存在であることも分かった。だからこの世界の矛盾についてもあなたたちなら理解できると思っていた。全く、これからあなたたちに我々の理想を、この世界の矛盾を教えて行こうとした矢先だったのにね……」
彼女はそう言って舌打ちをする。
しかしそんな彼女にルラは睨みつけながら言う。
「お前はジュメルなんでしょ!? あたしたちに何の用!?」
そのルラの質問に彼女は冷たい目をこちらに向けながら言う。
「あなたたち我々と一緒に来ない?」
それは勧誘ではなくまるで命令でもするかのような表情をしている。
私は彼女を睨みつけながら言う。
「お断りです。あなたたちジュメルは私たちの仲間であるジッタさんを殺した。そんな連中と一緒になど行けません!!」
私がそうハッキリ言うと彼女は冷たい瞳のままつまらなさそうに言う。
「そんな些細な事を気にするの? あなたたちには女神にも匹敵する力がると言うのに……」
そう彼女が言った瞬間街灯から飛び退く。
漸ッ!
「リル、ルラ大丈夫!!!?」
その声はマーヤ母さんだった。
そして目の前の街灯が風の刃で切り刻まれる。
マーヤ母さんは私たちの前に立ちふさがり油断なく構える。
「邪魔が入ったわね…… あなたたちがその気なら我々は何時でもあなたたちを受け入れるわ」
そう言って彼女は懐から輝く魔晶石を取り出す。
「逃がしません! 大地の精霊よ!!」
それを見たマーヤ母さんは地面に手をつき精霊魔法を使う。
途端に石畳の下から沢山の蔓が伸び出て彼女に絡み付こうとするも、僅差で彼女の姿が消える。
「くっ、逃がしたか…… リル、ルラ大丈夫だった!?」
「え、あ、はい。私たちは大丈夫です」
「うん、大丈夫。でもマーヤ母さんが来るだなんて」
マーヤ母さんは私とルラを抱きしめてほっとする顔をするのだった。
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