14-21お祝い
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
「それでは新型の連結型魔晶石核成功を祝って乾杯ですわぁ!」
かんぱーいっ!
只今新型の連結型魔晶石核が成功したのでアニシス様が自腹で祝賀会を開いている。
そう、シーナ商会の個室で。
正直今はアイシス様がいないのが心底ほっとできる。
代わりにエリリアさんが来てるけど。
「流石にシーナ商会、良いお酒あるわね!」
「お姉ちゃん、お肉だ、お肉!」
「はぁ~アイシスお姉さまがいないだけでこれほど安心できるとは」
「あら、アイシス様は面白い方ですのに」
ソルミナ教授は早速お酒をかぽかぽ飲んでいる。
ルラは出されたお肉にかぶりつく、家では和食が多いのでお肉少ないからねぇ。
ヤリスも今日はやたらと落ち着いているのは私同様アイシス様がいないからだろうね。
アニシス様だけは本性現したアイシス様に対して面白がっているけど。
「アニシス様、おめでとう。これで野望に一歩近づいたね」
「流石アニシス様!」
「これで明日の夜は確実にアニシス様と♡」
「私の番、まだまだ後……」
勿論スィーフの皆さんやサ・コーンさん、ウ・コーンさんもいる。
おかげで個室は結構いっぱいっぱいだった。
「久しぶりに人の食事をするけど、今の時代はこのシーナ商会のおかげでずいぶんと食の質が上がったね? ユカが奮闘してイチロウ・ホンダと和食を広めた時代より更にいろいろな美味しいものがある」
「あれ? エリリアさんは何時も何食べてるんですか?」
「僕たち女神の分身は食べなくても死ぬことは無いんだ。勿論食べられない訳ではなく食は嗜好の一つでしかなくなっている。そもそもこの体は女神の一部でもほんのわずか、髪の毛一本すら使っていないモノだから普通の人間と同じ程度の能力しかない。特異な所は『知識の塔』の番人を命じられているので不老不死、とは言っても殺されれば終わりだけどね」
そう言ってエリリアさんはお酒を飲んでから食べ物を口にする。
そして満足そうにする。
「食の質が上がるのは僕も歓迎だ。美味しいものは人の心を潤す」
そう言ってまたお酒を飲む。
見た目が成人前なんで飲ませて大丈夫かと思うけど、女神様の分身であれば問題は無いだろう。
「リルもしっかり食べておきなさいよ。明日からいよいよ本番よ。連結型の魔晶石核は同じ系列の精霊を少なくとも四つ、それを一つの魔晶石に閉じ込めるから合計十六の精霊たちに言うこと聞かせるために頑張ってもらわないとね」
「いや、その前に残りの足らない分の魔晶石核作らなきゃいけないでしょうに。アニシス様の計画では新型は最低でも二つ必要なんでしょう?」
アニシス様がその後打ち立てた計画はまず、各精霊の魔晶石核を四つづつ準備する。
そして各精霊毎に普通の人でも何とか扱えるレベルの四個の連結型魔晶石核を作成して準備をする。
その各種四個入りの連結型魔晶石核を魔晶石に封じ込め、あの新型連結型魔晶石核を作り上げる。
先ほどの試作連結型魔晶石核は言うこと聞いた精霊たちのおかげで出力は従来の四個入りのものより上がっているけど、精霊の総数が少ない為予定の出力には届かなかった。
そこでアニシス様は四倍の精霊を投入して普通の人でも起動が出来るはずの所までパワーアップをすることを決める。
理論上は普通の人でも起動出来るはずなので、この新型連結型魔晶石核を一つは攻撃、残りの一つを防御メインに使うつもりらしい。
これでオリジナルにどこまで迫れるかは分からないけど、起動が誰にでも確実に出来るようになれば精霊の数をもっと増やしさらに強力な出力のものを作り上げようとしている。
「うまくいくと良いですね」
「大丈夫ですわ! リルさんが協力さえしてくれれば歴史に残る素晴らしい機体が出来あがりますわ!!」
アニシス様はそう上機嫌で言うのだった。
* * * * *
「ふわぁ~、流石に連日だと疲れがたまって来るなぁ~」
教室で机に突っ伏しながら思わずそう言う。
「確かに、覚醒状態の私でも結構魔力持っていかれるもんね、共鳴のフルバーストは」
ヤリスも同じく机に突っ伏している。
最後に精霊たちに言うこと聞かせる脅迫状態にするにはあの緑のキラキラした光の中でやらなければならない。
となると、共鳴フルバースト状態にはヤリスとアニシス様二人が共同作業でやらなければならない。
私もソルミナ教授もルラも大元となる魔晶石核を作るのに忙しいし、最後はヤリスとアニシス様、そして私も参加して仕上げなきゃならない。
「どうしたの? ずいぶんと疲れているみたいだけど……」
私とヤリスが机に突っ伏していると、何時も隣に座っているアリーリヤさんが珍しく聞いてくる。
「ああ、今ソルミナ教授の研究の手伝いしてるんですけどそれが結構疲れるんですよねぇ~」
「ソルミナ教授の研究の手伝い?」
「ええ、あまり詳しくは話しちゃいけない契約なんですけど、それが上手く成功したので何個か同じもの作らなきゃならないんですよ。でもそれには手間がかかると言うか…… おかげで毎日私たちはソルミナ教授の所で頑張らさせられているんですよ」
昨日は計十六個の精霊が入った新型連結型魔晶石核が出来あがった。
あの時共鳴フルバーストで精霊たちがだいぶごねたけど、あんまりいうこと聞かないと『消し去る』以前に機嫌の悪い女神様たちの前に送り付けると言ったら即効でみんな言う事を聞いた。
どうやら精霊界でも今回の騒動は有名らしく、上級精霊である精霊王たちも「今あそこへだけは呼び出しされたくないよな」とか言っているらしい。
なんか、ジルの村の獣人族のペグさんたちの苦労がしのばれる。
「ソルミナ教授、研究が完成したんだ……」
「ええ、そうなんですよ~」
ぽつりと言うアリーリヤさんに私は思わずにへらっと笑って言ってしまった。
「完成したのね……」
アリーリヤさんはそう言って笑う。
「リルさんたちもほんとご苦労様ね」
「ええ、ありがとうございます。でもあと少しで全部終わりそうなんでもうひと踏ん張りですね」
私がそう言うとアリーリヤさんは薄っすらと笑って「そう、頑張ってね」とだけ言って席を立つ。
受講はもう終わっていたのでアリーリヤさんはもう帰るのだろう。
軽く手を振って教室を出て行ってしまった。
「はぁ~それじゃぁ私たちもソルミナ教授の所へ行きましょうか?」
「そうですね~」
「お姉ちゃんその前にたこ焼き勝って行こうよ! 購買部でまだ売ってるはずだから!!」
のっそりと立ち上がるヤリスに私も同意して立ち上がる。
とりあえず購買部でたこ焼き買ってからソルミナ教授の所へ行こう。
私たちはそろって購買部へと向かうのだった。
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