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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十四章:脈動
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14-14新型連結型魔晶石核構想

故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。

しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?

さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?

そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


 あれからまたしばらくしてソルミナ教授と共に作成してきた魔晶石核がそこそこの数に溜まって来た。



「四大精霊の魔晶石核もだいぶ増えたわね。要求数にはまだ足りないけど、どうするのアニシス?」


「はい、そろそろテストを始めたいと思いますわ」


 ソルミナ教授の研究室に来ていた私たちはアニシス様たちの会話を聞いてそちらを見る。

 いよいよこれらの各精霊の魔晶石核を使って新型の連結型魔晶石核を作成するというのだ。



「でもアニシス様、連結型って難しいのでしょう?」


「勿論難しいですわ。でも我がティナの国には秘密の生成方法があるのですわ。それがこれですわ!」


 言いながらアニシス様は一枚の羊皮紙を取り出す。

 それを机に広げ、みんなに見せる。


 そしてソルミナ教授はそれを見て唸る。



「これ、羊皮紙に書かれているけど多重魔法陣じゃない。しかもこの構造図、凄いわね」


「ええ、これはその昔魔王になる前の魔術師が残したと言われる空間魔法の極意ですわ。連結型魔晶石核が機能する原理は、双備型と同じく魔晶石核どうしの共鳴、いわば精霊たち同士の共鳴ですわ。しかしこちらの世界に呼び出された精霊はどんなに頑張ってもゆくゆくは消えて魔晶石核も機能しなくなってしまう。原因はこちらの世界での魔力確保が出来ないからじわじわとその存在維持が出来なくなってしまうからですわ」


 アニシス様はそう言ってみんなを見渡す。

 この辺の事はソルミナ教授の研究室にいる者はみんな……

 ルラ以外は理解しているだろう。


「ですので、永久機関に匹敵する為にはその魔力消費を抑える方法が必要ですわ。それが異空間に魔晶石核を閉じ込め、それを魔晶石核に入れて相互共鳴を引き起こす方法ですわ」


「たしか、それがティナの国の連結型魔晶石核の秘密だったわよね? ただ、それを扱える人材が少ないって話よね?」


 アニシス様が説明を続けると、ティナの国の秘伝である連結型魔晶石核の欠点をソルミナ教授が指摘する。

 アニシス様はそれを聞き頷いてから話始める。



「ええ、ソルミナ教授の言う通り、オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』含む初期型の『鋼鉄の鎧騎士』も同じ問題を抱えていましたわ。その原因が全ての魔晶石核にいる精霊たちに起動用の魔力を伝達させるのが難しいという原因が判明したのですわ」


 びっと人差し指を立てながらアニシス様は少し興奮気味に言い出す。


「これは私の部屋にいる娘たちに色々な角度から調べてもらい、初期型の古い魔晶石核を研究する事で判明した事ですの!」


 あ~。

 なんかすごく嬉しそう。

 多分お部屋にいる恋人たちが成果を残したことを誇らしく思っているからだろう。



「全ての魔晶石核の精霊に起動用の魔力を流し込むか…… それって魔力量もさることながら異空間にいる魔晶石核の精霊たちにまで魔力を与えなきゃならないってことよね? 確かに並みの魔力量や魔力操作じゃ出来ないわ。なるほどね、だから誰にでもできる事じゃなかったんだ」



 ソルミナ教授は顎に手を当てぶつぶつと言っている。

 この辺はやはり教授職。

 分からないことが分かるとそれなりに自分でもその仕組みについて理解しようとするのだ。




 本来私たちエルフ族は変化を好まない。

 だから村では何百年、何千年経っても変わり映えがしない。


 でも外の世界に出たエルフたちはその好奇心を遺憾なく発揮できる。

 そして普通であればその長寿が外の世界では大きな影響を与える。


 その一つにソルミナ教授のように知識に偏るエルフもいる。


 ソルミナ教授はこう見えても魔道に関してはエルフ随一ではないだろうか?

 精霊魔法は上級精霊と契約できないと使えないって制約はあるけど、それはそのエルフその人の素質にも関係するから仕方ない。

 でも精霊魔法や魔道は知れば知るほど、使えれば使う程その理解が深まり複雑なものまで扱えるようになる。


 だからソルミナ教授はこの羊皮紙に書かれている私なんかが見てもごちゃごちゃと難しい魔法陣を一目で多重魔法陣と見抜いた。

 ソルミナ教授がぶつぶつ言っているのをしばらく待ってからアニシス様は四大精霊の魔晶石核を一つづつ並べる。



「私が考案した新型連結型魔晶石核の構想はこうですわ。もともと連結型魔晶石核は同じ精霊を使用してその共鳴を利用したものでしたわ。ですけど伝説のマシンドールアイミに搭載されていた物は四大精霊王の魔晶石核と言われていますわ。流石に精霊王はどうにもなりませんが、四大精霊が一つのボディーに存在し、その力を回転させて昇華させるのがスパイラルシステム。これにより膨大な魔力が発生し、空間さえねじ曲げ、この世界と異世界へとつなげる道すら作ってしまえる。これがスパイラル効果の真髄でしたわ」



 アニシス様は四大精霊の魔晶石核の上で人差し指をくるくると廻しだんだんと上えと持って行く。

 ますでそこにスパイラル効果で出来た道があるかのように。


「確かにあれは扱えれば凄いわ。ここの学園長はもともとあちらの世界の住人。いったんは元の世界に戻ったけど、またこっちの世界に来た。それもこれも全てアイミの力を使った結果だったわね……」


 ソルミナ教授は懐かしそうにそう言う。

 いや、当時からこの学園で教授をやっていたわけだから当事者か。


 そう言えばソルミナ教授は良識をわきまえてはいるけど、学園長にだけは頭が上がらないんだよなぁ。

 それだけ付き合いも長いし訳だけど。



「今回試すのは、この機関を普通の魔晶石に各精霊の魔晶石核を異空間を使って閉じ込め、そして反応させると言うモノですわ。試作は各一個づつ使いますが、これが成功すれば各精霊事の連結型核魔晶石核を作り、それを同じく異空間で閉じ込めて連結させるつもりですわ!」


「えーと、つまり別々の精霊の魔晶石核で共鳴をさせるってこと? でもそれだと相容れぬ精霊どうしで打ち消しちゃうのが精霊魔法なんじゃ……」


 アニシス様のその説明にヤリスが根本問題を言う。

 するとアニシス様は先ほどの各精霊が入った魔晶石核を指さす。


「ヤリスの言う通りですわ。でも例外もありますの」


 そう言って火の精霊が入っている魔晶石核を指さす。



「火の精霊は水の精霊に弱い。しかし水の精霊は土の精霊に弱い、土の精霊は風の精霊に弱く、風の精霊は火の精霊に弱い。その状況が連続して連なった場合はどうなりますの?」


「え? えーと、打ち消す勢力がいて、それを更に打ち消す勢力だから…… 最後には静観するしかなくなって均衡が保たれる?」



 アニシス様の質問にヤリスはしばし考えてから王族らしい答えをする。

 するとアニシス様はそれを聞いて満足そうに頷く。



「それが今回の原理ですわ。異空間という壁にさいなまれて直接影響は出せなくても圧力の共鳴は来ますわ。すると弱い所へまた共鳴を仕掛けて精霊は自分を維持しようとしますわ。それが連続すればどうなりますの?」


「共鳴が共鳴を呼び、共振となり力を発揮する…… しかも相容れぬ存在だから同族以上にその力は強固となる、かしら?」


 ソルミナ教授がそう言うとアニシス様は大満足で頷く。



「そうですわ、だから起動用の魔力も何も少量で済むので誰にでも使える高出力の連結型魔晶石核ができるのですわ!」



 なるほど、そう言った複雑な事をアニシス様はあの部屋で研究していたのか。

 それには適材の人材が欲しい。

 あの部屋にいた女の子たちは魔道か何かに対してのそれなりに精通した人たちなのだろう。


 魔晶石核を作る為には精霊魔法が使える人材が欲しい。

 手っ取り早いのはエルフ族の協力者がいれば早い。


 だからアニシス様はエルフを欲しがっていたのか……



「あ、でもそうするとソルミナ教授が協力して各精霊の魔晶石核が作れれば私やルラはもう用済みですね?」


 私がそう言うとアニシス様はグリンと首を回してらんらんとした目で言う。



「何を言いますの? エルフの方は味わった事が無いので是非私の恋人になって欲しいですわ!! もう数日は寝かせませんわよ!!」



 はあはぁと息荒くなるアニシス様。


 私は思わずルラを抱えて大きく下がってしまった。



「ソ、ソルミナ教授に協力はしますがアニシス様の恋人になるのは遠慮させてもらいますっ!!!!」





 思わず必死にそう叫んでしまう私だったのだ。  



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[一言] >「何を言いますの? エルフの方は味わった事が無いので是非私の恋人になって欲しいですわ!! もう数日は寝かせませんわよ!!」 >はあはぁと息荒くなるアニシス様。  (・∀・)]<もしもし…
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