14-11果物を使った甘味
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
アニシス様が差し入れで沢山の果物を持って来てくれた。
「とは言え、果物を使った甘味って何を作ろうかな?」
「普通だとジャム? でもせっかくこんないい果物だからジャムにするのはもったいないよね?」
どんなものを作ろうかと悩んでいるとヤリスが覗き込んできた。
アニシス様が持って来た果物は確かにどれもこれも高品質のモノ。
そのまま食べても十分に美味しい。
しかし、いくら美味しくてもこれだけ大量にあると食べきれなくてダメになってしまう。
となると、ある程度日持ちが出来て素材の味を駄目にしないようなモノって何だろう?
「確かにジャムにするのはもったいないですよね。こんないいい果物なんだから……」
と、私は青リンゴがあるのに気付く。
そう言えばこれはさっぱりとした甘みは少なく酸味が程よい感じだったな。
これでもっと甘みがあれば私好みなんだけど。
そんな事を考えていたら、ふとお祭りのあれを思い出した。
「そうだ、まずはこれをりんご飴にして見よう!」
小ぶりな青リンゴはりんご飴にするにはもってこいの大きさだった。
私は早速手のひらに載るくらい小さい青りんごりんご飴にする為にポーチから道具を取り出す。
「ソルミナ教授、場所使わせてもらいますよ?」
「どうぞご自由に。ちゃんと美味しいもの作ってくれるならいくらでもどうぞ」
ソルミナ教授は机に突っ伏しながら手の平をひらひらとしている。
まあ連日だから疲れているのだろう。
私は承諾をもらったのですぐに鍋と砂糖、それと少量の水を取り出す。
そしてそれを火にかけながらひたすらぐるぐると煮込む。
「何するの、リル?」
「りんご飴って言うお菓子を作ろうと思いまして。うーん、リンゴをキャンディーでコーティングしたようなものですね」
「キャンディーで? それ美味しいの?」
「美味しいですよ、特に酸味の強いリンゴなんかものすごく合いますから!」
ヤリスに聞かれ答えながらぐるぐると水あめを作って行く。
結構時間はかかるけど、煮詰まって来てだんだんと粘度が上がる。
へらでそれを持ち上げ、煮詰まり具合を見てみる。
「ん~、もう少しかな?」
「お姉ちゃん、りんご飴ってあのお祭りであるやつ?」
煮詰まり具合を見ていたらルラがその様子を覗き込む。
私は頷きながらルラに答える。
「そうそう、あれだよあれ。簡単だけどこう言った酸味の強いのにはとても合うのよね」
「あたしあれ苦手~リンゴ大きすぎてうまくかじれない」
「ははは、大丈夫、大丈夫。今回のはこの青リンゴだから、簡単にかじれるよ」
言いながらルラに青リンゴを見せる。
するとルラは青リンゴと私の顔を見ながら言う。
「赤く無いの、りんご飴?」
「赤リンゴは大きいし、屋台のには食紅が入っているのよ。こっちの世界にでも食紅みたいのあるけど、今回はこのまま行って見ようと思うの」
言いながら少し琥珀色になって来た水あめを見る。
うん、粘度も良い感じ。
私は青リンゴに串を刺し、琥珀色の水あめに浸ける。
それを引き出し、くるくるとして余分な水あめを取って、ある程度冷めるのを待つ。
そしてくっ付きにくいお皿を取り出してその上に置いて行く。
「へぇ~、なんか面白い格好ね? 串刺しなんだ」
「初めて見る格好ですわね?」
「なんか屋台店の串焼きみたいだね」
ヤリスもアニシス様もミリンディアさんもお皿に並んで行くりんご飴を見ている。
沢山それを作ってから私は冷えたであろう最初の一つを持ち上げる。
どうやらうまく行ったようだ。
青リンゴの周りに琥珀色の飴が固まっている。
「うん、上出来。本当は真っ赤なんだけどこれはこれで悪くないかな?」
言いながらルラに手渡す。
ルラは「ありがとう、いただきま~す」と言ってかぶりつく。
ぱりっ!
薄めの飴だから簡単に青リンゴと一緒にかじられる。
ルラは口の中でぱりぱりと飴を砕きながら青リンゴを食べる。
「ん、甘さが加わって酸っぱかった青リンゴが美味しい! あたしこれなら食べられる~」
「うまく行ったみたいね、皆さんもどうぞ」
私がそう言ってお皿を差し出すと、みんなは顔を見合わせてから串を手に取りりんご飴を見る。
この世界にもキャンディーはあるので、甘いと言う事は皆も分かっていると思う。
ヤリスやアニシス様は早速それにかぶりつく。
ぱりっ!
ぱりっ!!
「んッ!?」
「これはですわ!!」
ぱりぱり!!
ヤリスもアニシス様も驚きの表情になる。
そして二口三口とりんご飴に口をつけて簡単に食べ終わってしまった。
「最初はキャンディーとりんごなんて思ったけど、周りについているキャンディーが薄いから程よい甘さで食感もパリパリと面白いわね!」
「本当ですわ、それに酸味が強い青リンゴが甘みを増してさらに食べやすくなっていますわ。リンゴも新鮮なままですし、甘みの後のさわやかさがたまりませんわ!!」
うんうん、良く分かってらっしゃる。
ただ甘いだけだと口の中に残るけど、リンゴの酸味とさわやかさは口の中をさっぱりとしてくれるのよね~。
他の皆さんも早速手に取ってぱりぱりと。
あ、サ・コーンさんやウ・コーンさんは一口で食べてる。
種とか大丈夫かな??
「あら、これ結構おいしいわね。食べた後も口の中がリンゴのさっぱり感ですっきりするし…… うーんでも、もっとガツンと甘いのが欲しいんだけどなぁ~」
ソルミナ教授もぱりぱりとりんご飴を食べながらそんな事を言っている。
しかし抜かりはない。
私は自分の分のりんご飴を食べ終わった後に既にポーチからビスケットを取り出し粉々に砕いている。
「分かってますよ、前座はこんなもんで次の作ってますからちょっと待っていてくださいね!」
言いながら私は更にビスケットを粉々にしてボールに入れて行く。
そしてそれに牛乳を入れてしっとりとするくらいになるまで良くかき混ぜる。
「お姉ちゃん何作ってるの?」
「んっふっふっふっふっ、前から一度やって見たかったのよね~。でも色々な果物使うから今までは出来なかったのよ。待っていてね、美味しいの作るから!」
ルラの質問に私はにこにこしながら粉砕クッキーを練り込むのだった。
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