14-9新型魔晶石核の目的
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
アニシス様が戻って来て例の魔物の状況について詳しく聞けた。
とりあえず「迷いの森」に被害はないようだし、エルフの村にも影響は出ていない様だ。
長老たちもいるし、何か有ればすぐにでも連絡が来るだろうから今のところは大丈夫なのだろう。
しかし、その後の足取りが全くつかめていないっていうのは気にはなる。
「それで、魔晶石核は要望数にはまだまだ足らないわよ?」
「はい、分かっておりますわ。今現在の制作状況はですわ?」
受講が終わって今はソルミナ教授の研究室に来ている。
アニシス様も来ていて、昨晩の状況を話終わり魔晶石核の作成状況を聞いている。
「今の所合計で二十六個。水と土の精霊が十三個づつと言ったところかしら?」
ソルミナ教授はそう答えながら魔晶石核をテーブルの上に置く。
「流石はソルミナ教授ですわ。リルさんとルラさんも協力してくださっているとの事で大変感謝しておりますわ」
「それで、これだけ色々な精霊の、しかもこれだけの数をどうするつもりなの?」
「それはもちろん新型の連結型魔晶石核の開発をするのですわ」
アニシス様はそう言ってぐっとこぶしを握る。
確かティナの国でもそう聞いていた。
私は魔晶石核についてそれほど詳しくはないけど、アニシス様の目指すその連結型魔晶石核って一体どんなものなのだろう?
「あの、前から気になっているんですけどその連結型魔晶石核って何なんですか?」
私がそう聞くとアニシス様はきょとんとしてから説明を始める。
「リルさんはエルフ族だから今現在の『鋼鉄の鎧騎士』の動力源について詳しくないのですわね? 連結型魔晶石核とは文字通り魔晶石核の力を連結する事によりその最大値を飛躍的に上げる方法ですわ」
そう言いながらアニシス様は説明を続ける。
それはこんなモノだった。
そもそも魔晶石核単体では封印している精霊を長期に閉じ込めておくことが出来ないそうだ。
精霊はこの世界に召喚され、魔力を代償にその効力を発揮できるけど、ずっとこの世界にいる訳じゃない。
ちょっと説明しにくいけど、精霊はもともと別世界と言うか、この世界は多重構造になっていて精霊界、妖精界、人間界、精神界で分けられている。
もともとは全部一つの世界だったらしいけど、そうするといろいろと問題があって古い女神様たちが精霊の住む精霊界、私たちエルフやドワーフ、草原の民たちを住まわせる妖精界、人族が住まう人間界、精神のよりどころとなる精神界に分けたそうな。
で、私たちエルフは精霊と樹木を元に作られた妖精に分類できるのだけど、樹木が人間界に存在する物だからこっちの人間界でも住めるとか。
あ、ドワーフは土の精霊と鉱石や土から生まれ、草原の民はやはり精霊と草から出来てるらしい。
これら妖精はもともと妖精界の住人だったけど、素材となる物がそれぞれ人間界ってこともありこの人間界で生活できる。
噂では精霊界に出入りできるところがこの世界にはまだ残っているらしいけど、そんな行った事の無い世界に行きたいとは思わない。
まあ、天地創造の時代の事なので詳しくは分かっていないけど、どうやらそうなっているらしい。
ソルミナ教授の開発した「風のメッセンジャー」や「天候予報機」などは魔晶石核が使われているけど、寿命がありずっと使えるわけではない。
ここで言う寿命とは精霊たちがこの世界に留まれる時間と言うか何と言うか。
寿命と表現されるけど、死んでしまうのではなく精霊が精霊界に帰ってしまうという感じかな?
なのでボヘーミャから各国にその都度それらを更新で販売をしている。
そしてその魔晶石核の寿命を延ばす方法が双備型魔晶石核。
これは精霊どうしが干渉しあってこの世界に残ろうとするやり方で、双方がお互いを干渉する事により持続的に存在をしようとするので長期運用ができるらしい。
そして共鳴効果が出て出力は単体の二乗。
これだけでもそこそこ使えるけど、マシンドールの様なサイズであれば問題無かったらしい。
けど身の丈六メートルくらいある「鋼鉄の鎧騎士」では流石に出力が足らない時がある。
そこで考案されたのが「連結型魔晶石核」という事らしい。
連結型魔晶石核は文字通り魔晶石核を連結してその出力を上げる方法なのだけど、ただくっつけているわけではないらしい。
その技法はかなり特殊で、異空間を利用する方法らしい。
つまり、魔晶石核の中に魔晶石核がある異空間を作り、それを同じく別の魔晶石核中に異空間を作り上げ放り込むというモノらしい。
これはもともと魔王が考案した方法で、当時の魔王は異空間操作に優れた人物だったらしい。
その異空間に入れられた魔晶石核の中の精霊は、人間界で無いので安定してそこに留まるので長期運用は勿論、自分の魔晶石の中の異空間に他の精霊がいるのでずっと干渉しあい常に運転状態を保つ事が出来るようになる。
結果、高出力が発揮できてオリジナルの十二体と呼ばれるものに関しては神殺しの太古の竜に匹敵する能力を保有しているとか。
その最高峰がティナの国に封印されている真紅の「鋼鉄の鎧騎士」、ティアナ姫専用機と呼ばれ空でさえ飛べたとか。
「ちょっと待ってください。今までの中にもの凄く気になるワードが沢山有ったような気がするんですけど……」
私は話の途中で思わず口を出してしまった。
だって、「魔王」とか「ティアナ姫」とか不穏な文字が混じっているから。
「なんで魔王が「鋼鉄の鎧騎士」作ってるの?」
ルラがアニシス様に私が思っていた疑問を聞く。
だって、「魔王」ってエルフ族にしてみれば天敵みたいなものなのに。
「それは、魔王は誰かに転生していても覚醒するまでどこの誰になるか分からないからですわ。当時、言い伝えでは約千年前の魔導士にその魔王が覚醒したらしいのですが、覚醒する前の優秀な魔導士が異空間について詳しく、この『鋼鉄の鎧騎士』の動力源を新たに作り上げたと言われてますわ。ただ、人の力では四つまでしか連結が出来ず、最終的にはオリジナルには女神様がご助力したと言い伝えられていますわ」
やっぱり!
「ティナア姫」とか言うワードが混じっている時点で絶対にエルハイミさんも関わっていると思った!!
つまり、どれもこれも今あるとんでもないものはエルハイミさんが関わっていると言う事だ。
「ふ~ん、それは私も知らなかったわ。そんなオリジナルがあるだなんてね」
「あら、ヤリスの国、ガレント王国の宝物庫にも一体銀色のオリジナル『鋼鉄の鎧騎士』が存在するはずですわ。確か十二番目の機体でガレント王国の首都ガルザイルを守る王家の力となっているはずですわ」
「え”っ? そんなの知らないわぁ…… って、あの埃かぶっている古いやつがそうなの!?」
なんかヤリスは大いに驚いている。
という事は千年前からガレント王国の宝物庫にしまわれたままって事か……
なんか宝の持ち腐れみたいな。
「ただ、オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』は乗り手を選びますわ。適合者で無ければ起動時に消費する魔力だけですぐに気絶してしまうという、誰にでも乗れるものでは無かったのですわ。だからオリジナルの十二体以降はその劣化版が作成されるようになったのですの。でもそれでさえ今の技術の数倍上を言っていたと伝えられていますわ。何せ女神様から与えられた神聖なる工具が無いとそれ等オリジナルやその後の劣化版は修理も改造も出来ないと言われていましたからですわ」
いや、人の手に扱えないものあっても仕方ないでしょうに。
でもそうすると何故アニシス様はそんな連結型魔晶石核なんてものを作ろうとしているのだろうか?
「アニシス様、そするとアニシス様が作ろうとしている連結型魔晶石核って誰でも使えないんじゃないのですか?」
「そこなのですわ! アイミのような四大精霊の王を封じ込めた魔晶石核の原理は一つの体内に四大精霊を共住させるという有り得ない事を成してますの。勿論今の私たちの技術でそんな事は出来ませんが、それにヒントを得て試す価値があるのが四大精霊たちの連結型魔晶石核なのですわ! これが上手く行けば理論上スパイラル効果に近いサイクルによる高出力が可能となり、操縦者自体の起動魔力を必要としなくなるはずですの。つまり、誰にでも扱える高出力の『鋼鉄の鎧騎士』が作れると言う事ですわ!!」
アニシス様はそう目をキラキラ輝かせながら言う。
前々から思っていた、アニシス様の魔道に対する知識は凄いけど、事「鋼鉄の鎧騎士」に対する情熱も凄い。
「ふ~ん、つまりアイミの原理を使って高出力の連結型魔晶石核を作るってことね? 今のは確か四連型が最高値だっけ? そう言えば当時は十連とか当たり前に有ったわね。ああ、でもあの戦争でやばそうなものは全部エルハイミさんがいろいろな所へ封印したんだっけ」
「はい? エルハイミさんが封印??」
それまで黙っていたソルミナ教授がそう言う。
ここでもエルハイミさんが関わっている?
「オリジナルは勿論、その後作られた十連なんて普通の人が使えないじゃない。でも稀に使える人が出て来て大事になっちゃたりしたのよ。で、危ないからオリジナルは封印、十連型もその後は生産を止めて徐々に解体していったのよ。で、今ティナの国のお家芸である四連でも扱える人が限られているって状態ね」
「そこなのですわ。だから私は新型の連結型魔晶石核を完成させたいのですわ!」
うーん、なんかとんでもない事にならなければいいのだけど。
でもまあ、新型連結型魔晶石核を作る目的は分かった。
うまくいくかどうかは分からないけど、まずは魔晶石核の作成を推し進めなければ。
私はまだ原石の魔晶石を握ってみる。
まだまだ沢山魔晶石核は作らなきゃならない。
当分はここへのお手伝いに来なきゃと改めて思うのだった。
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