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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十四章:脈動
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14-2式典の後で

故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。

しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?

さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?

そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


 秋口の新入生や留学生の為の式典が開かれている。



「はぁ~、こういうのって眠くなるのよねえ~」


「ヤリス、ちゃんとしないと怒られますよ?」


「あ、ユカ父さんだ~」



 式典では形式的な祝辞や学園長からの挨拶、学園での注意事項などが通達され、程無く終了をする。

 しかしその後にアニシス様が慌てた感じでやって来る。



「リルさんルラさんヤリス今いいですかしら?」


「はい? どうしましたアニシス様??」


 アニシス様にしてはだいぶ慌てている。 

 一体何があったというのだろう?


「スィーフから追加連絡がありましたの。例の魔物がスィーフの街から離れて北上を始めているというのですの!」


 スィーフから「鋼鉄の鎧騎士」を倒せるほどの魔物が北上かぁ……



「てっ! それってもしかして『迷いの森』に向かっているんですか!?」


「そこまでは分かりませんわ。しかし体勢を整えられていない連合軍は動きが遅く例の魔物を追って行けないそうですわ。この件については既に精霊都市ユグリアのファイナス市長に連絡が入っているらしいですが、下手をすると『迷いの森』にも影響が出てしまうかもしれませんわ」


 アニシス様はそこまで言って私たちを見る。

 もし、そんな化け物が迷いの森に紛れ込んだら。

 いや、でも村にはあの結界があるし、長老たちもいる。


 でも何だろう、この胸騒ぎは?



「とにかく、この事をユカ父さんに伝えましょう。アニシス様、一緒に来てください。ヤリスも!」



 こういう時は直感を信じるのが一番。

 私は急いで学園長であるユカ父さんの元へと向かうのだった。



 * * *



「ふむ、その件でしたら先程風のメッセンジャーで連絡が来ました。ファイナス市長はあなたたちには大人しく学業をする事を伝えられています」


 ユカ父さん事学園長に話をすると、既に連絡が来ていたらしい。

 しかも私たちの事についても。


「あの、でも万が一があったらまずいんじゃ……」


「リル、あなたの気持ちが分からない訳ではありません。しかし今あなたたちがエルフの村に戻っても仕方ないでしょう? ファイナス市長の言う通り学業に従事する方がいいでしょう」


 ユカ父さんはそう言ってお茶をすする。

 確かに迷いの森自体に影響があった訳でもないし、心配だからと言って学業をおろそかにして戻る訳にも行かない。


「しかし学園長、『鋼鉄の鎧騎士』を倒せるほどの魔物なんて一体何なのですの?」


「それは私にもわかりません。しかし普通の魔物が『鋼鉄の鎧騎士』に対抗できるとは思えません。今は情報も不足しています。様子を見るしかありません」


 ユカ父さんはそう言ってやはり静観する旨を言う。

 しかしアニシス様は引きさがらなかった。


「では私が様子を見に行ってまいりますわ。ゲートの使用許可をいただけますかしら?」


「アニシス、あなたがわざわざ動くというのですか?」


「私の使用人であるミリンディアさんたちの故郷の事も心配ですわ。それに中古とは言え我がティナの国が作った『鋼鉄の鎧騎士』がまたこうもあっさりとやられるとは気になりますわ」


 アニシス様はそう言ってユカ父さんを見る。

 ユカ父さんは暫し黙っていたけど、頷いて答える。


「分かりました。あなたなら大丈夫でしょう。アニシス、ゲートの使用を許可します」


「ありがとうございますですわ、学園長」


 アニシス様はそうお礼を言ってすぐに踵を返す。


「あの、アニシス様……」


「リルさんもルラさんもしばしお別れですわ。大丈夫、状況を確認したらまたすぐに戻ってまいりますわ」


 アニシス様はそう言ってにっこりと笑ってサ・コーンさんとウ・コーンさんを引き連れて扉から出て行くのだった。



 * * *

  


「結局アニシス様やスィーフの連中は行っちゃったね」


「そうですね。ちょと心配ですけど……」


「なんであたしたちが行っちゃダメなんだろうね?」



 教室で机に突っ伏していたらヤリスがそんな事を言い出す。

 心配ではあるけど確かに今は情報が少なすぎる。

 それに今私たちが行ってもどうこうなるもんじゃない。



 ぱんぱんぱんっ!



「はいはい、受講を始めるわよ。と、その前に新入生よ。自己紹介してね」


 ソルミナ教授は教室に入って来てぱんぱんと手を打ちながら受講を始める為に知らせる。

 でもその前にどうやら新入生がこの講義に新たに参加するらしい。



「ウェージム大陸から来ましたアリーリヤです。よろしく……」



 そこにいたのは私たちを同じくらいの大きな眼鏡をかけた緑色の髪の毛に深い藍色の瞳の色を持った女の子がいた。



「あらぁ~、あの子結構可愛いわね!!」


 ヤリスがやたらと反応する。

 確かに見た感じ可愛くて大人しそうな女の子だ。



「え~と、その辺の空いている席についてね。さて、講義を始めます」


 ソルミナ教授はそう言ってアリーリヤと名乗った少女に席に着くよう言う。

 彼女は頷いてから真っ直ぐにこちらに来る。

 こちらに……



「あっ……」


「ここ空いているわよね? いいかしら……」



 私のすぐ横の空いている席を指さしてそう言う。

 まあ、だめってわけではないので頷くとすっと隣に腰を下ろしてきた。



「ねぇねぇ、あなたウェージム大陸から来たって言ってたけど、どの辺から来たの?」


 たまらずヤリスが彼女にそう聞く。

 すると彼女は大きな眼鏡をくいっとしてからヤリスに言う。


「あなたは確か、ヤリス=ルナ・シード・ガレント。ガレント王国の第四王女……」


「え? 私を知っているの?」


 驚くヤリスに彼女は薄っすらと笑って頷く。

 そして今度は私とルラを見て言う。


「そしてこっちがエルフの村から来たリルとルラと言う双子の姉妹ね……」


 彼女は私たちも知っている様だった。




 そして同じく薄っすらと笑うのだった。

   


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