13-26そろそろ移動ですなんですけど
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
連合軍に新たな切り札が出来て一安心していた。
「あ、あのアニシス様もしよろしければこいつのお礼にお食事など如何ですか?」
アイザックさんは早速アニシス様をお誘いする。
機体のチェックをしていたアニシス様はアイザックさんをちらりと見てからまた書類に目を通しながら言う。
「お誘いはうれしいのですが、私この子の整備をしなければなりませんわ。ルラさんのあの蹴りで各部関節のダメージや装甲の補修もしなければなりませんの」
それを聞いたアイザックさんはがっくりと肩を落とす。
なんか可哀そう。
私はアニシス様の元へ行って手元の書類を見る。
するとそこには私とルラがアニシス様の部屋に行ったら何しようかと書き連ねられていた。
「アイザックさん、ルラがとぉってもアイザックさんにお話を聞きたいそうです。勿論私やヤリスも同じです。良いですよね、アイザックさん!」
「え? あ、それはその……」
「アニシス様も一緒に食事しますよね?」
言い淀んでいるアイザックさんにもう一押しでそう言うとアニシス様の方をちらりと見る。
しゅばっ!
「ええもちろん行きますわ! リルさんとルラさんのお誘いならどこへでも!!」
「と、言う事でアイザックさんも大丈夫ですよね?」
「あ、ああぁっ! 勿論だとも!!」
こうして私のキューピット作戦はうまく行くのだった。
* * * * *
「これはこれはアイシス王女様、ヤリス王女様、それにこちらはティナの国のアニシス王女様ではないですか? おや、連合の隊長さんまで。よくぞお越しくださいました」
やっぱりここにもあるんだね、シーナ商会。
アイシス様が街で食事するならいい場所があると言って連れられてきたのはシーナ商会だった。
このシーナ商会、オーナーがあのシェルさんだというのはあまり知られていない。
しかし今や全世界の主要都市には必ずと言って良いほどあるこのシーナ商会はその品揃え、物流量、そして経営のスタイルが前世の百貨店そのものであった。
「流石は王都のシーナ商会、品ぞろえがティナの国のシーナ商会より充実してますわねぇ~」
このシーナ商会の責任者と言う女性に連れられて店内を案内されレストランの階まで行く。
ここにはなんとエレベーターの様なものまである。
連れられて行ったそこはこのシーナ商会の建物の中で一番上の階。
ガルザイルの夜景が一望できるまさしくVIP席。
「どうぞ皆様こちらへ」
そう言ってここの責任者はさらに奥の個室へと私たちを連れて行く。
そこに入って驚く。
何とガレント城が一望できる部屋であった。
「こ、これは……」
アイザックさんが思わずうなる。
なんでだろうと首を傾げアニシス様やアイシス様を見ると苦笑をしている。
「普通の商会でこんな事をしていたのが見つかったら即時その店はおとり潰しですね」
「本当にそうですわぁ~。でもシーナ商会はシェル様のお店、そこへ国レベルのモノが口を出すなどおこがましいですものですわ」
そう言う二人にアイザックさんは頬に一筋の汗を流しながら言う。
「そう言う……ことですか…… では私も何も見なかったっ事にしておきましょう」
そう言って深いため息をつく。
一体どう言う事なんだろう?
「ヤリス、ヤリス。これって何か問題あるのですか?」
「ん? ああ、この部屋ね。普通王城に向かってこれだけ見晴らしよ良くして、なおかつこれだけ近いなんてテロするのにうってつけじゃない? この位の高さや距離ならその気になればここから国の重要人物を狙撃だって出来るわよ? 場合によっては魔法をぶち込むことだってできる。だから普通は王城に向かってこんな部屋作っていたら何かの意図があるって思われるのが普通よ。でもシェル様のお店ならそれも許される。むしろシェル様がここから私たちを見てくださっているなら、万が一女神様も一緒だなんて考えたらもうそれだけで!!」
なぜかはぁはぁと息が荒く案るヤリス。
いや、エルハイミさん女の子が好きと言ってもヤリスが好きじゃ無いんだから……
「とにかくここは大丈夫な店ですし、防音もしっかりとしていますから安心です」
「防音もって……」
途端に私とヤリスの血の気が引いて行く。
何故今日はスィーフの皆さんやウ・コーンさん、サ・コーンさんを連れてこなかったのか。
ここに居る面子はアイザックさん以外アイシス様の事を知っている。
と言う事は……
「久しぶりに羽目を外せますね…… くっはぁーっ!! おい酒だ酒! すぐに酒もって来いっ!!」
「「ひぃいいいいぃぃぃっ!」」
思わず私とヤリスの声がハモる。
「おら、お前ら座れ座れ! アニシス、ご苦労だった、これで俺もお役目まっとうだ。後は連合のロディマスに任せて俺もティナの国に遊びに行くぜ!! いいだろうマブダチなんだからよぉ~」
「うふふふふ、やはりアイシス様はその方がらしいですわ。もちろん歓迎いたしますわよ~」
「よっし、話は決まった! おらアイザック、ボケッとしてないで酒を注げよ、ちゃんとアニシスにも次いでやるんだぞ?」
言われたアイザックさんは額にびっちりと汗をかいている。
それをアニシス様はそっとハンカチを出して言う。
「アイザック様、この事は内密にですわ。アイシスはたまにこうしてストレス発散しないといけませんのよ?」
「ア、アニシス様がそうおっしゃられるなら…… しかしアイシス王女がこうも変わられるとは……」
「んだとぉ? てめえもうじうじしてねーでちゃっちゃとアニシスに告白しろや! キンタマついてんのかぁ、ええぇっ!?」
「え、あ、あ、アイシス様!!!?」
アイザックさんの動揺も分かる。
いや、変わりすぎでしょうにアイシス様。
私とヤリスは思わず抱き合ってガタガタ震えている。
「おお、そうだそうだ、アイザックの『鋼鉄の鎧騎士』壊したんだ、エルフの嬢ちゃんたちにはちゃんと詫び入れてもらわねぇえとなぁ~。おら、こっち来いよ!」
そう言われて私とルラはアイシス様に引っ張られてその横に座らさられる。
「しっかりと奉仕してもらうからなぁ? 手ぇ抜いたらベッドまで連れてくぞ、おらっ! 分かってんだろうなぁ?」
「ひぃいいいいぃぃぃっ! 分かりましたから、ちゃんとしますからぁッ!!」
「アイシス様面白いね~、はい、アニシス様もお酒どーぞ♪」
「あらぁ~嬉しいですわ~、ルラさんにお酌してもらうだなんて、思わず飲み過ぎてしまいそうですわぁ♡」
こうして私の提案したアイザックさんとアニシス様のお食事チャンスはことごとく覆されるのだった。
* * * * *
「うううぅ、頭痛い……」
「う~ん、あたしまだ気持ちわるぅ~いぃ~」
翌朝、アイシス様の部屋に連れ込まれる事だけは回避できた。
しかししっかりと飲まされて王城の部屋に戻されたので朝から頭ガガンガンする。
そう言えばヤリスはあの後飲みが悪いとか言ってアイシス様に折檻喰らう羽目になりそのままアイシス様の部屋に連れていかれたらしい。
コンコン
目が覚めてしばらくしたら部屋のドアがノックされた。
「どうぞ」
一応着替え終わって、顔だけは洗ったので部屋に入るのを許可する。
するとアニシス様が良い笑顔でそこに立っていた。
「いよいよ明日は私の国へ出発ですわね! 私、リルさんとルラさんが来てくれるのが楽しみで楽しみで夜も眠れませんわぁ~」
いや、寝てください。
と言うか、一緒にあれだけ飲んだのに何故それだけ元気?
「あら、もしかしてリルさんもルラさんも二日酔いですの? ちょっと待っていてくださいですわ【状態回復魔法】」
アニシスアマは高速詠唱ですぐに魔法を発動させる。
すると私とルラの頭痛や吐き気が一気に無くなる。
「あ、あれ?」
「うわぁ~、気持ち悪いの無くなったぁ~」
「うふふふふ、昨日はアイシス様に飲まされてましたものですわ。でも、もう大丈夫ですわね?」
にっこりと笑うアニシス様。
いや、今回は本当に助かった。
アニシス様の魔法のおかげで回復できたので素直にお礼を言う。
「助かりました。ありがとうございますアニシス様」
「ありがとう~、アニシス様!」
「いえいえ、お礼は体で…… んんっ、なんでもありませんわ」
いや、今ハッキリとお礼は体でって言った!
言ったよね!?
思わずドン引きする私たちの所へうめき声を伴ったヤリスがやって来た……
「ううぅ、リルにルラは大丈夫? 明日にはティアの国に…… あら、アニシス様も来てたんですか?」
「あらヤリス、おはようございますですわ」
「お、おはようございます…… いたたたたぁ……」
ヤリスはお尻を押さえていたがっている。
一体何が……
「大丈夫ヤリス? どこか痛いの?」
「だ、大丈夫よ、お尻だけだから…… ちょっと血が出ちゃったけど【回復魔法】でもう治ったから」
いやお尻って……
「そ、そんな事より明日は移動だから今日こそは私の後宮を見てもらうわよ! せっかく大魔導士杯で優勝して許可もらったんだから、リルとルラも是非見て行ってよ! あ、アニシス様も来ます?」
「まあ、後宮だなんて羨ましいですわ~。参考までに是非とも見に行かせてもらいますわぁ~」
ニコニコ顔でアニシス様もそう言うけど、後宮の意味って知ってるの?
「あたしも行く~。ねえお姉ちゃん『コウキュウ』って何?」
「え、あ、それは……『高級』なお部屋の事!」
「あれ、リルにはもう言ったっけ? そうなのよ、凄く良い出来なのよ!! 朝ごはん食べたら早速行きましょうよ!!」
あ、あれ?
後宮て「高級」なの?
私は頭にクエスチョンマークを浮かべながらもみんなで朝ご飯を食べに行くのだった。
面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。
誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。




