13-20鋼鉄の鎧騎士修理の件
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
「なるほど、つまりその連合軍の『鋼鉄の鎧騎士』を直してほしいというのですわね?」
あの後、平謝りしてから街を見るのもそこそこにお城に戻ってアニシス様を探していた。
ちょうど野暮用とやらも終わってアイシス様とお茶をしていた所だった。
「連合軍にはこれから動いてもらわなければなりません、アニシス私からもお願いします」
「そうですわね~。リルさんとルラさんが私のお部屋に遊びに来て下さるのならいいですわよ?」
ニコニコとそう言うアニシス様。
しかし私は内心もの凄く脂汗を流している。
だって、ヤリスの部屋もちょっとアレだったけどアダルティーなアニシス様の部屋って言ったら一体!?
「あ、あの、遊びに行くのはいいのですが、何もしませんよね?」
「私は同意が無いと手を出さない主義ですわ。ちゃんと相手が同意してくれればそれはそれはもう可愛がってあげますわよ!!」
はぁはぁと何故か息が荒くなるアニシス様。
背筋をぞわぞわとするモノが走るのは何故だろう?
「うん、分かったよ! あたしアニシス様の部屋に遊び行くからアイザックさんの『鋼鉄の鎧騎士』直してあげて!!」
「では商談成立という事でよろしいですわね、リルさん?」
「……は、はい」
こうなると約束するしかない。
私は小さくため息をつくのだった。
* * *
「ずるいわよねぇ~リルもルラもアニシス様の後宮に行なんて!」
「いや、後宮じゃなくてお部屋ですけど……」
ヤリスは途中で街の案内が終わってしまい膨れている。
いや、あんただって「鋼鉄の鎧騎士」と手合わせして十分に楽しんだのでは?
ぶうたれるヤリスだったけど、アイシス様の前では大人しくしていた。
私たちは翌日連合に行ってアイザックさんの「鋼鉄の鎧騎士」を修理する事となった。
「でもちゃんと直るのかなぁ……」
「大丈夫でしょう。それにアイザックさんだってアニシス様に会えるとなればそれだけで嬉しいはずよ?」
「アニシス様が直すの上手だから?」
ルラはよくわからないという風に首をかしげているけど、やはりおこちゃまには分からないかぁ~。
私は人さし指をびっと立てながら言う。
「アイザックさんはきっとアニシス様が好きなのよ!! だってアニシス様の事話すともの凄く嬉しそうだし、会いたがっていたじゃない!!」
「ん~? そうなの?? 『鋼鉄の鎧騎士』直してもらえるからじゃないの??」
「なにそれ、アイザックのやつアニシス様に気があったって言うの? あの朴念仁が?」
ヤリスも話に加わって来て首をかしげる。
いや、だってあの態度どう考えてもアイザックさんはアニシス様が好きでしょう?
しかも二年も前から!!
一国の王女様に思いを寄せるとか、「鋼鉄の鎧騎士」なんだから正しく騎士様。
功績を上げてお姫様とのラブロマンス!
これは萌えるわ!!
乙女の夢よ!
「アイザックさんはきっと二年前からアニシス様の事が好きなんですよ。だってルラに『鋼鉄の鎧騎士』壊される事よりアニシス様の事の方がずっと気になっているみたいじゃないですか。これって お姫様に思いを寄せる騎士様のお話そのものですよ! ああ、アイザックさんアニシス様に会ったらどんな顔するだろうかな?」
私はそれを考えるともう楽しくて仕方ない。
しかしルラとヤリスは顔を見合わせきょとんとする。
「アイザックさんが?」
「アニシス様をねぇ~。でも肝心なアニシス様がそんな気は毛頭ないんじゃない? アニシス様って女の子が好きだから」
がはっ!
私は思わず現実に引き戻されてしまった。
そうだった、アニシス様は女の子が好きだったんだ。
「そ、そうするとアイザックさんって……」
「フラれるわね」
「あうっ!」
ヤリスにバッサリ言われて私は思わず膝をつく。
そんな、乙女の夢が、ラブロマンスがぁ……
「まあそれでも約束しちゃったし、明日はアニシス様と一緒に連合軍に所に行かなきゃね。でも直るのかしらあの『鋼鉄の鎧騎士』?」
「そ、それは…… 直ってもらわないと困るんですけど」
「そ、そうだよ! アニシス様に頑張ってもらわないとアイザックさん泣いちゃうよ!!」
妹のしでかしたことに姉としても責任を感じるけど訳で、とにかく明日はアニシス様に何とかしてもらわないといけない。
私はラブロマンスを忘れて「鋼鉄の鎧騎士」が直る事を願うのだった。
* * * * *
翌日の朝早くからアニシス様は私たちと一緒に連合軍の駐屯地へ向かっていた。
「あ、あの、アイシスお姉さまがなぜ一緒にいるのですか?」
「私が同席では不満ですか、ヤリス?」
「い、いえ滅相もございません! アイシスお姉さまもお忙しいのにと思いまして!!」
一緒に馬車に乗っているヤリスは背筋をピンと張ってそう言う。
何故かアイシス様も一緒に来ているので馬車の中は一杯だった。
私とルラ、そしてヤリスが座る相向かいにアイシス様とアニシス様が座っている。
アニシス様はにこにこ顔だ。
「うふふふふ、リルさんとルラさんが私の部屋に来てくださる。きっと私の部屋に来れば考えを変えてくれますわ~」
「あの、行きはしますけど変な事しないでくださいよね?」
「大丈夫ですわ、私は合意が無ければ和姦しませんわよ。安心してくださいですわ」
いや、もの凄く不安です!
今ハッキリとピー音言ったよね?
問題発言言ったよねッ!?
「アニシス様ばっかずるいですよ…… 私だってリルとルラには許可もらって作る後宮に来てもらいたいのに……」
「いや、行きませんからねそんな所へは!」
私はヤリスにはっきりとそう言うと膨れる。
「なんでよぉ~。リルに私の子供産ませるのにぃ~」
「無理です!」
駄目だこいつら、早く何とかしないと……
揺れる馬車の中で私は本気でそう思うのだった。
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