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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十三章:魔法学園の日々
313/438

13-15晩餐会で

故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。

しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?

さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?

そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


 ガレント王国は世界の穀物庫と言われる国で、ここで生産される小麦やジャガイモなどの主食となる農作物は世界各国に販売をされている。

 なので「ささやかな晩餐会」と称するこの宴でももの凄い量のお料理が出されている。



「お姉ちゃん! 牛の丸焼きだ!!」


「凄いわね、獅子牛の丸焼きなんて初めて見るわね」



 立食会と雑談が始まると早速ルラはお肉を取りに走る。

 ドレスなので転ばない様に注意を促すけど、やはり歩きにくい。



「リル、ルラ~もうぅ~」


 後ろでヤリスが何か言ってるけど、ずっと隣にいて私とルラがヤリスのモノだって誤解されるのも嫌だから私もお料理を食べに行く。

 と、私の前に一人の青年が現れる。



「これはこれは可憐なお嬢さん、もしよければ私と一曲どうですか?」


「あ、えーとぉ……」


 青髪の背の高い青年。

 美形と言って良いその顔立ちは言い寄られたらどんな女の子でも頬を染めてしまうだろう。

 私が言い淀んでいると彼は更に私の手を取って膝をつき手の甲に口づけをする。


「エルフの女性が美しいのは知っていますが、あなたほど可憐なエルフは初めて見ます。お名前を宜しいですか?」


「え、えっとどちらさまでしたっけ……」


 なんか背筋がぞわぞわする。

 確かにイケメン高身長の優雅な物腰。

 良い所の貴族かなにかなんだろうけど、私の肌には合わない。



「あーっ! お兄様、リルは私のなんだから手を出しちゃダメぇっ!!」


「はい? お兄様??」


 手の甲に口づけされているその顔を見ると確かにどことなくヤリスに似ている。


「おっと失礼、エルフの方には私が誰だかわかりませんものね。改めて、ヴォクシー=ルナ・シード・ガレントです。この国の第一王子ですよ」


 げぇっ!

 ヤリスのお兄さんで第一王子ぃ!?



「お兄様、リルに手を出してはダメです!」


「こちらの可憐なエルフのお嬢さんはリルさんと言うのですね。ああ、何と可憐な! シェル様の美しさとは違うこの可憐さ。私があなたを守ってあげたい」



 ぶわっ!

 


 背景にバラが出たよ!

 しかもいつの間にか腰に手を回されて顔も近い!

 キラキラフォーカス使いまくりで目がキラキラしてるよ!!


「あ、あの、すみません私って踊り方知らないので、あっちで妹が待っていますのでこれで!」


 危うく押し倒されそうになるくらい近寄られるのを慌てて抜け出しルラの所へ逃げる。



「ふう、フラれてしまったかな? しかしあのエルフの少女、私の手元に置きたいくらいに可愛かったな」


「兄さま! リルとルラは私のモノです。このドレスを見てるでしょう?」


「ふっ、しかしアイシスから聞いているぞ? 彼女たちに無理矢理そのドレスを着させたのはお前だそうだな、ヤリス?」


「ぐっ、そ、それは……」


「まあいい、まだ時間はあるのだからな」



 何やらヤリスとヴォクシー王子は話している様だけど、ああいう誘われ方は私は嫌いだ。

 何と言うか、世の女性は全て自分が誘えば確実に落とせるみたいな。

 確かに第一王子ともなれば普通の令嬢はメロエロになるだろう。

 だけど私みたいなエルフに言い寄ってどうなる??



「もごもご、お姉ちゃんこれ美味しいよ~」


「うん、私にもちょうだい」


 とりあえず今はルラと美味しいものをいただく方が先決。

 私はルラと一緒に美味しいお料理を堪能するのだった。



 * * *



 宴は音楽が鳴り始めお誘いのダンスが始まっていた。

 お皿片手に私とルラは壁の花となる。



「リル、ルラ、一緒に踊らない?」


「無理です。私社交ダンスとかやった事無いですもん」


「あたしも無理~」


 何とか私たちと自分をアピールしたいヤリスはダンスのお誘いに来るけど、踊れないから無理と断る。



「でしたら私が手ほどきいたしますわよ?」


 そう言って現れたのはアニシス様とアイシス様たちだった。

 スィーフの皆さんやサ・コーンさん、ウ・コーンさんは向こうで何やらファイナス長老たちと話し込んでいる。

 なのでアニシス様とアイシス様は自由に動いていた。



「やっぱいいです。どうも私はこう言うの苦手で。ここで美味しいお料理を食べてますから」


「あら、残念ですわ。最初にリルさんとルラさんと踊れればリルさんもルラさんもヤリスのモノではないと証明できますのに」


「踊りましょう、アニシス様!」


 そう言う話なら別だ。

 どうやら最初に踊る人によってその人の関係が証明されるらしい。

 アイシス様をチラ見すると「まちがいない」とアイコンタクトを送って来てくれる。


 ならばここは無理してもアニシス様と踊るべきだ!!



「え~、ずるいぃ~せっかくリルとルラが私のモノだって宣伝するチャンスなのに~」


「ヤリス、同意を得ない無理矢理はダメですわよ? ちゃんとお互いの気持ちを確かめ合ってからでないといけませんわよ?」


「ぶぅ~」



 そう言いながらアニシス様はあたしの手を取ってホールへ行く。

 そして私の腰に手を当て手を取り耳元でささやく。



「リルさんは普通に私について着てくださいですわ。タイミングは私がとりますわ」


「え、はい、お願いします」



 そう言って曲が鳴り、踊り始める。

 アニシス様は私を引っ張るように動き回るけどこれが不思議にアニシス様に付いて行こうとすると踊りになっている。



「へぇ~、お姉ちゃんちゃんと踊れるんだ~」


「くぅ~、悔しいけど流石にアニシス様ね。完璧にタイミングをとってリルを誘導している」


「そうね、初めて躍る子をあそこまでうまく誘導するとは流石にアニシス」



 私たちの踊りを見ているルラやヤリス、アイシス様があっちで何か話している。

 何話しているんだろう?


「とっ!」


 そんな事に気を取られていたら転びそうになる。

 しかしアニシス様は慌てる事無く私の手を引きくるりと回して抱き上げる。



 じゃんっ!



 手を高く上げ、そして背中を抱かれ顔と顔が近い体制で踊りが終わると周りから拍手が起こる。

 まるで私とアニシス様が踊りの中心だった見たいに。



「あ、あのアニシス様そろそろ離しててもらえますか?」


 このままキスされてもおかしく無いような体制は危険この上ない。


「良かったですわぁ、これでリルさんは私と深い関係だと皆様にアピール出来ましたもの」


「え”っ?」


 アニシス様はさっと私を立ち上がらせ、そして軽く手を引くと私もかがんだような格好になる。

 そして隣のアニシス様も同様に腰を折りお辞儀をすると更に周りから拍手が起こる。


 ニコニコ顔のアニシス様とホールからルラたちのいる場所へ戻るとヤリスがふくれっ面でいた。



「ずるいリル! アニシス様とあんなに仲良く!! しかもみんなにアニシス様と深い中だって宣言するだなんて!!」


「はぁっ!?」



 ヤリスは 胸の前に拳を持って来てぶんぶん振っている。

 あのダンスの何処に一体そんな意味があるってのよ?



「最後にあの抱きかかえられるポーズは親密な仲を意味するのよ。まさかリルさんからアニシスにアプローチをかけるとは思わなかったけどね」


 アイシス様はそう言ってアニシス様に飲み物を手渡す。

 アニシス様はそれを飲んでから嬉しそうに言う。


「まさか最後にリルさんから身体を投げ出してくれるとは思いもよりませんでしたわ。おかげでやりたかった親密さのアピールが出来て大満足ですわ!」


「くぅ~それ私がやりたかったのにぃ~」


 満面笑みのアニシス様、もの凄く悔しがって地団太を踏むヤリス。

 私は思わずみんなの方を見るとファイナス長老が近くまで来ていて言う。


「リルはティナの国に嫁ぐことになるのでしょうか? そうすると私も一度ティナの国に出向いた方がいいのでしょうか?」



「ファイナス長老ぅ~っ!!」




 私の悲鳴が上がるのだった。 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] >げぇっ! >ヤリスのお兄さんで第一王子ぃ!?  ここで読者の何割が、頭の中で「ジャーンジャーンジャーン」とドラの音が響いた事だろうか。
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