12-48大魔導士杯決勝戦その4
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
「【強化魔法】!」
ホリゾンチームのリーダーであるミラーナさんは【強化魔法】を唱え発動させる。
途端に相手のゴーレムの身体をうっすらと赤い光が包む。
「ハイリス、約十分間だけ攻撃力が上がったわ!」
「了解、いくぞっ!!」
どんっ!!
それまでのゴーレムの動きより早い。
やはり魔法の効力のせいか?
「ヤリス、防御は任せてですわ!」
「分かった、はあっ!」
こちらもこちらでアニシス様が防御を強化する魔法を高速詠唱してかける。
ヤリスの操るゴーレムの身体が淡い緑色で包まれ防御力が上がる。
ががんっ!
ホリゾンチームのゴーレムとうちのゴーレムが拳や手刀、蹴りを繰り出すが、どれもこれも相手の様子を見るような軽いもの。
決め手となる技を出すタイミングを見計らっている。
「ヤリス、あのゴーレム攻撃の後に右に体重をかける癖があるよ!」
「ん、分かった!」
ルラのそのアドバイスでヤリスは数度拳を放ち、相手のゴーレムの動きを制する。
勿論相手もやられっぱなしでなく反撃をするも、ヤリスのゴーレムに防御されて一旦距離をとる。
「チャンス! 三十六式が一つ、レイピア!!」
攻撃後右側に体重がかかると聞きヤリスは相手は下がった瞬間に技を繰り出す。
踏み込んだゴーレムがくるりと相手に背を向けると同時に足を蹴り上げ上体を倒す。
その一閃は鋭い突きのような蹴り。
まさしくレイピアの一撃のようだった。
がんっ!
思っていた以上にその蹴りが伸び、そして鋭かったためにホリゾンチームのゴーレムの右肩にその蹴りが見事に決まり肩の装甲を跳ね飛ばす。
慌てて下がろうとするホリゾンのゴーレムだったが、流石に威力があった一撃のせいでよろけてしまう。
「さらにチャンス、三十六式が一つ、ランス!!」
ヤリスはゴーレムの拳を両方とも一旦腰に引かせて大きく踏み込みながら両の手を突き出させる。
まるでランスで突撃するかのようにその荷重を十分に乗せた一撃がホリゾンのゴーレムに決まる瞬間だった。
「【幻影魔法】!」
ホリゾンチームのもう一人の獣人、ロティさんが魔法を発動させる。
途端に相手側のゴーレムが三体に分かれる。
「なっ!?」
ヤリスの操るゴーレムはそのうちの一体に両の拳を突き立てるも、実体が無いそれに思わずのめり込み、通り過ぎてしまう。
「餓狼漸!」
ガリっ!
そしてヤリスのゴーレムの背に防御魔法がされているにもかかわらず相手のゴーレムの爪が決まり、外装に見事に四本の爪痕が残る。
「くっ、防御の魔法がかかっているはずなのに」
「あれは…… 相手のゴーレムの爪に魔力が集中してまるで鋭い短剣のようになっていますわ!」
ホリゾンのゴーレムは両の爪を赤く輝かせ、身構える。
既に【幻影魔法】は切れていてまた一体に戻っているけど、流石に魔法を得意とするチーム。
こちらは事実上魔法の支援はアニシス様だけとなってしまう。
「流石ですわね、ゴーレムを操る獣人族の天性の素質、それをフォローするタイミングも魔術の使い方も流石はホリゾンという所ですわね」
「アニシス様、どうするんです?」
にわかのチームと違いホリゾン公国の威信をかけたホリゾンチームの息は合っている。
それに比べこちらの「エルフは私の嫁」チームは個々の能力は特殊なものがあっても連携が取れていない。
この決勝戦だって実際にはヤリスとアニシス様で戦っているようなものだ。
がんっ!
がりがりっ!!
ホリゾンチームのゴーレムは獣を思わせるような動きでどんどんと攻撃を仕掛けて来る。
そしてヤリスもその動きに対応するのが精一杯になって来る。
何せ強化しているはずの外装がどんどんと削られていくからだ。
「うふふふふふふっ、こんな事も有ろうかとあのゴーレムには更なる力が組み込まれているのですわ! ヤリス、行きますわよ!!」
「えっ?」
アニシス様はそう言ってヤリスの背に手を着け高速詠唱を始める。
そしてヤリスに魔力を注ぎ込みながら言う。
「さあ、私の最高傑作、その力を開放するのですわ!!」
アニシス様がそう言った瞬間ヤリスがやたらと色っぽい声を上げる。
「あふんっ! んぁ、体の中に熱いものが入って来るぅ~、こんなの、こんなのらめぇえええええぇぇぇぇぇぇ♡」
いや、今試合中っ!
思わず赤面して突っ込みを入れたくなる私の目の前でヤリスがいきなり覚醒モードになる。
それと同時にヤリスの操るゴーレムにも異変が起きる。
いきなり体の節々から、四大精霊の力が漏れ出す。
「お姉ちゃん、あれってっ!」
「あ、あれは…… 嘘でしょ、四大精霊がひと所に存在出来るだなんて……」
あり得なかった。
本来なら地、水、火、風の四大精霊は打ち消し合う力が作用して同時に別の精霊が存在すると消えてしまうはずだった。
しかし今あのゴーレムにはその四つの精霊力を感じる。
「行きますわよ、四大精霊による共鳴効果、あの伝説のマシンドールアイミと同じ無限の力が発揮できるのですわ、フルバースト!!」
アニシス様がそう言った瞬間だった、ヤリスの操るゴーレムを中心に緑のキラキラする光が周辺に一気に広がる。
それはホリゾンチームの近くだったので相手チームを全員飲み込む。
更に緑の光は私たちのすぐ近くまで広がっていた。
ぶわっ!
「な、何だこれは!?」
「うそ、この感覚、声が、声が聞こえる?」
「何なのこれは? ハイリス、危険よ下がってっ!」
「くぅううううううぅぅぅぅっ!!!!」
その光は相手のゴーレムをも包み込む。
途端にメイン操縦者であるハイリスさんが唸り始める。
「わ、私の中に何かが入り込む、何なんだこれは!!」
一体何が起こっているのよ?
私たちの目の前で緑の光に包まれたアニシス様を見るとうっとりとした顔でいる。
「うふふふふふふっ、やはりそうですわ。この光、全てを共感できる。今私はヤリスともハイリスさんとも一つになっていますわ。ぐふふふふ、ハイリスさんの身体、こうなっているのですねぇ~。やはり尻尾と耳が弱いのですわね? しかもまだちゃんと乙女♡ あらヤリスはまた胸が大きくなったのですわね?」
「個人情報駄々洩れっ!?」
いや、これって何の為のモノ!?
まさかアイシス様が女の子たちの情報集めるためモノッ!?
「くぅうううぅぅぅ、アニシス様があたしの中に入ってるぅ、ちょ、アニシス様そこだめっ!」
「いいですわぁ、たまにはヤリスも好いですわねぇ~。はぁはぁ、あら、そちらのミラーナさんも実はまだ乙女ですわね? ロティさんもうなじが弱いのですわね? ラッシュさんは、ごめんなさいですわ、私男性には興味ありませんの」
そう言ってアニシス様は頷いてからヤリスに言う。
「いいですわよ、もうすべてを把握しましたわ。ヤリス、イけますわよ!」
「い、いけるって、私アニシス様にイカされちゃうの?」
「まてまてまてまてっ! 公衆の面前で何言ってるんですかヤリスっ!!」
流石にこれには突っ込みを入れなくてはならない。
言い方ぁっ!
何言ってんのよ、ヤリス!
思わずそう突っ込みを入れる私にアニシス様は顔を向けて笑う。
「大丈夫ですわ、この共鳴効果の中では相手の動きは全てこちらにお見通しですわ、ヤリスこのままイってしまいなさいですわ!!」
「はうんっ! アニシス様私の中で暴れないでよ!! でも意味が分かったわ、相手の考え、動き全て理解できる!!」
ヤリスはそう言って防戦から一転、攻撃に移る。
「くそっ! 私の中から出て行け!!」
ハイリスさんはそう言ってヤリスのゴーレムを攻撃するけど、ヤリスのゴーレムは紙一重でその攻撃を避け、相手の胸に肘内を入れる。
「三十六式が一つ、ダガーっ!」
短い距離でも的確に相手の弱い所を突いたのか、最小限の動きのはずなのに相手のゴーレムが吹き飛ぶ。
がんっ!
ボンっ!!
「何っ!?」
「ハイリス! ロティ立て直すわ、【幻影魔法】を!」
「はい、【幻影魔法】!!」
ヤリスの攻撃に驚いたホリゾンチームは立て直しのために【幻影魔法】を使う。
途端に相手のゴーレムが三体に分かれる。
これではどれが本物か分からない。
しかし、ヤリスは叫んでそのままゴーレムを突っ込ませる。
「そんなの今の私には効かないわ! 三十六式が一つ、グレートソード!!」
大きく手刀を振りかぶり渾身の力を込めてその手を振り下ろす。
それは正しく大剣を振り落とすがごとく。
ヤリスのその技は【幻影魔法】で分かれた右側の一体に振り下ろされた。
ざんっ!
ばきんっ!!
「なっ!?」
見事に決まったその技に相手のゴーレムは肩からバッサリ右腕を切り落とされたのだった。
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