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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十二章:留学
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12-44決勝戦準備

故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。

しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?

さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?

そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


 決勝戦で使うと言われているゴーレムを受け取りに大魔導士杯実行委員会の部屋に行く。



「ゴーレムって動きが鈍いあのゴーレムですよね?」


「うーんちょっと違うかな。毎年ここで使われているのは甲冑みたいなゴーレムよ。しかも中が空洞になっているやつだから意外と動きは速いしね」


 ヤリスのその説明を聞きながら何となく想像するけど、中身ががらんどうってなんか弱そう。

 でも全身を覆うような甲冑と言う事はルラが好きそうだ。


 何となくルラを見ると目を輝かせてヤリスを見ている。



「ねぇヤリス、それってかっこいいの!?」


「うーん、実用性優先の形状のはずだからあまりゴテゴテはしてないはずだけど、見た目は普通かな?」


 ヤリスは以前見たであろうそのゴーレムを思い出しながら言っている様だ。


「ねえお姉ちゃん、そのゴーレムの中にあたしが入って戦っちゃダメ?」


「こらこら、それじゃゴーレム操る意味がないじゃないの。それにルラの身体でそのゴーレムとかを着込むのって難しくない?」


 私とルラは身長百五十センチ無い。

 多分甲冑のようなゴーレムなので成人男性の体格だと思う。

 そんな甲冑をルラが着込むんじゃ上下に分かれた二人羽織でもしなきゃ間に合わないだろう。


「ううぅ~ダメかぁ~。ヒーローもので途中からパワーアップで甲冑着込むのは定番なのにぃ~」


 いやそれ基準が違うから。

 これ決勝戦だから。

 何処かの武闘大会じゃないから。



「着きましたわね、失礼しますわ」


 コンコンとアニシス様が扉を叩いて部屋に入ると生徒会の人たちがいた。



「あら、あなた方は『エルフは私の嫁』チームの方々ですね。決勝戦進出おめでとうございます。ゴーレムの受け取りですね?」


「はい、そうですわ。私たちのゴーレムは何処ですの?」


 最初に出迎えてくれたのは確か副会長の女性だった。

 銀色のサラサラの髪の毛で、色白の美人さん。

 ちょっと意外だったのがそれほど豊かでないお胸ってことかな?



「此度の決勝戦進出おめでとう。ガレントの姫とティナの姫が手を組んだと聞いた時は胸躍りましたぞ。やはり最後まで残られたか」



 そう言って奥にいた男性が立ち上がりこちらにやって来る。

 この人も銀髪だけど、確か生徒会長。



「流石は女神様の血を引かれた方々だ。このアスラス感服しましたよ」


「これはこれはアスラス様、ごきげんよう。そのようなお言葉、ありがとうございますわ。しかしお相手がアスラス様のお国の方になるとはですわ」


 ん?

 私たちの対戦相手はホリゾンチーム。

 生徒会長の国が対戦相手って事は、生徒会長の出身ってホリゾン公国??


「はははは、これは学園での催し物。そして私はこの学園の生徒会長を務めます。公国に対する忠義は有りますが生徒会長としての責務もあります。それに今はあなたと同じ学生の身分、ここでは王族貴族は関係ありませんよ」


 そう言って奥へ行くと布がかけられた人型の物がある。



「どうぞお受け取りを。あなたたちのゴーレムです」



 そう言ってその布を取り去ると銀色に輝く全身を覆う甲冑が現れた。

 思わず隣でルラが「おおおぉ~」っとか言っている。

 

 見た目はごつごつとした装飾は無いけど、すっきりとしていながらマッシブルなその姿は正しく肉弾戦に特化したような感じだった。



「さて、どなたが契約されるかな?」



 アスラス生徒会長はそう言って私たちを見る。

 するとヤリスが前に出て名乗り上げる。


「私が契約します」


「ほう、ガレントの姫が今次のメイン操縦者ですか。となるとガレント流の妙技を拝めますかな?」


「あまり期待しないでください。私は末娘、まだまだ未熟とお姉さまたちに言われてますので」


 ヤリスはそう言ってスカートの端を持って軽く膝を沈める。

 確か貴族たちの簡易の挨拶のはず。

 

 それを見てアスラス生徒会長も胸に手を当て軽く頭を下げる。



「失礼した、あなたの御健闘を祈ります」


「ええ、勿論です。ありがとうございます」



 そんな生徒であるにもかかわらず貴族王族としてのやり取りを見ていると、ヤリスもアニシス様もやっぱり王族なんだと感心する。


 しっかし、アスラス生徒会長がホリゾン公国の貴族とはねぇ~。

 思わずアニシス様に小声で聞く。



「アニシス様、生徒会長ってホリゾン公国の貴族の方だったんですか?」


「あら、リルさんはご存じないのですの? アスラス様はホリゾン公国の第一王子でいらっしゃるのですわ。ちなみに副会長のラザリヤさんもホリゾン公国の貴族の方で、アスラス様の許嫁ですわ」


「え”っ!?」



 いや、ホリゾン公国の第一王子って言うのも驚いたけど、あの美人のお姉さんが生徒会長の許嫁って。

 美男美女のカップルって本当にいるんだ。


 私がそんなこと思っていたら副会長のラザリヤさんがアニスを呼んでゴーレムの前に立たせる。

 そしてゴーレムとヤリスに手を向け呪文詠唱を始めると足元に大きな魔法陣が浮かび上がる。



「流石ですわね、ラザリヤ様の魔道操作は魔法の名門が多いホリゾンでもかなり優秀と聞いておりましたわ」


 その様子を見てアニシス様がぽつりと言う。

 私はそれを見ながらアニシス様に聞く。


「あれってすごいんですか?」


「本来契約には複雑な手続きをしなければなりませんが事前に魔法陣でその過程を準備しておいたのでしょう、詠唱はその魔法陣の起動と最低限の命令しか入っていませんわ。なるほど、こういう使い方があるのですわね」


 なんかアニシス様も感心している所を見るとかなりの腕前らしい。

 アニシス様だって高速詠唱とかいろいろな魔法が制御出来てかなり優秀なはずなんだけどなぁ。


 そしてヤリスとゴーレムがうっすらと光ったと思ったらその光が消えた。



「んっ、これって……」


「はい、契約が済みました。意識すればゴーレムと同期できますが、動かすごとに魔力を飛ばしてコマンドを入れなければなりませんから魔力切れに注意してください」


 ラザリヤさんはそう言って手をおろすとヤリスが目を輝かせて言う。



「凄い! これが同期した感覚なのね!! 面白い、意識を集中するとゴーレムから私を見ている映像が頭の中に映る!」



 喜んでいるヤリス。

 しかしちょっと眉間にしわを寄せる。


「でも、複雑な動きさせようとするとかなり集中が必要ね? 本体であるこっちの身体を動かしながらゴーレム操るのって結構難しいわね」


「ゴーレム同士での戦いは操縦者はほとんど動かない場合が多い。その代わり制御に集中できればガレント流の妙技も十分にくりだせる。後は仲間の魔法支援やこの後このゴーレムの魔道によるカスタマイズも規定以内であれば可能。二日後の決勝戦を楽しみにしてますぞ!」


 生徒会長はそう言って両手を上げる。


 うん、ゴーレムの受け取りは終わった。

 後はアニシス様が言う魔道によるカスタマイズをする訳だ。


 私たちはゴーレムを受け取り、自分たちの控室へと向かうのだった。



 * * * * *



「ところで、ゴーレムのカスタマイズってどうするんです?」  



 控室に戻ってからヤリスがゴーレムの扱いに慣れる為と言ってゴーレムと組体操みたいなことやっている。



「うふふふふ、そこは私にお任せくださいですわ。ティナの国は『鋼鉄の鎧騎士』生産では世界トップ。その魔道技術を駆使してこの子をカスタマイズしてあげますわ!」


 何故かうれしそうなアニシス様。

 スィーフのお姉さん方を呼びつけて自室から何やらいろいろな魔道具や部品を持ち込んでいる。


 そしてヤリスを呼んでゴーレムとの同期を切らせてばらばらにゴーレムを分解し始める。


「規定では武器類は一切禁止、外部装甲を越えないカスタマイズは可能との事ですわ。ですので双備型魔晶石核は勿論、各手関節の強化、外装であるミスリル合金の強化にヤリスとの契約である契約印の保護、後は後はですわ~」


 なんかすごくうきうきとしながらいろんなものを取り付け始める。



「流石クレイジーカスタマーと呼ばれるアニシス様。アイシスお姉さまと気が合う訳よね~」


「ヤ、ヤリスいいのあれって? なんか精霊力まで感じる何かを沢山取り付けているけど!!」


「凄い凄い、全部の種類の精霊がなんかあの石に閉じ込められているね~」




 確かに外装はそのままなのだろうけど、その中身にどんどんと危なそうなものを詰め込み始めるアニシス様を見ながら私はちょっと不安が大きくなり始めるのだった。



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