3-13鋼鉄の鎧騎士祭
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
おおぉ~、これが「鋼鉄の鎧騎士」なんだぁ~。
あたしより強いかな?(ルラ談)
トランさんたちは準備の為ここに三日間くらいは「赤竜亭」に滞在する事となった。
「えへへへへぇ~トランさぁ~ん♡」
「お姉ちゃん、朝からトランさんにへばりつきっぱなしだね……」
朝トランさんと朝食を一緒にしようと部屋のドアを叩くと眠そうなトランさんが出てきた。
どうやら昨日は皆さんと前祝いでは無いけど結構飲んだ様だ。
しかしそろそろ起きないと朝食とお昼が一緒の時間になってしまう。
おかみさんにお願いして朝食はお金を出すから私に作らせてくれと言ったら快諾してもらった。
しかもお金は要らないから自由に材料も使って良いと言われたので思わず腕によりをかけちゃった。
なのでトランさんを起こして腕に抱き着きながら下の階へと降りて行く。
「ふわぁ~、流石に昨日は飲み過ぎたよ」
「お水いります?」
席について準備しているとトランさんはそう言うのでコップにお水を入れて手渡す。
「うん、ありがとう」
トランさんはそう言いながらコップの水を飲み干す。
そして私が作った朝食が並ぶそれを見て苦笑いをする。
「リル、朝ごはん作ってくれるのはうれしいけどこれってちょっと量が多くないかい?」
「大丈夫です、ルラもいますから!」
一応三人前だけど多めに作っているのは否定しない。
ルラはこう見えても結構食べるから大丈夫だろう。
「うーん、まあいいか。それじゃぁいただきます」
「どうぞ召し上がれ!」
私はにこにこしながらトランさんが食事を始めるのを眺めるのだった。
* * *
「今日の予定? うーん、エシアたちはまだ寝ているだろうからね。暇はあるかな?」
「本当ですか! じゃあトランさんお祭りに連れて行ってくださいよ!」
「あ、『鋼鉄の鎧騎士祭』はあたしも見たい!」
このレッドゲイルでこの時期に開かれている「鋼鉄の鎧騎士祭」。
なんでもその昔に戦があった時に首都ブルーゲイルに増援に出たのが事の始まりだとか。
そもそもその「鋼鉄の鎧騎士」ってのはシャルさんにも聞いたけど身の丈六メートルから七メートルくらいの巨人で、魔道兵器だとか。
中にはそれを操縦する人が入ってその「鋼鉄の鎧騎士」を操るらしいのだけど、その「鋼鉄の鎧騎士」ってのがもの凄く強くて並みの攻撃は全く受け付けない上に対魔法処理を施された外装は並みの魔法じゃまったく通じないとか。
そんな化け物のような強さを誇る「鋼鉄の鎧騎士」だけど今は数も少なくこのレッドゲイルでも街を守る事に徹しているとか。
確かにあんな地竜みたいのが現れたら普通の人じゃ太刀打ちできないもんね。
なのでそのお祭りとなると年に一度大々的に開かれているらしい。
「『鋼鉄の鎧騎士祭』かぁ。そう言えばリルとルラはまだ『鋼鉄の鎧騎士』を見た事が無いんだっけ? 初めて見ると圧巻だよあれは」
「本当!? 是非見たい!!」
「ルラったら。トランさん連れってもらえますか?」
瞳うるうるでトランさんに懇願するとにっこりと笑って「いいよ」って言ってくれる。
私はもう嬉しくて仕方ない。
「やったー! じゃあすぐに行こうよ!!」
ルラは立ちあがり私とトランさんの手を引っ張る。
「分かった分かった。準備するから一旦部屋に戻ろう」
「はい!」
思い切りいい笑顔で答える私だった。
* * *
「わぁ! あれが『鋼鉄の鎧騎士』なの!?」
ルラが思わず声を上げる。
お城に行くとお城の広場に見上げるほど大きな鎧が並んでいた。
「鋼鉄の鎧騎士祭」なのでレッドゲイルのお城も一般開放され、この国イザンカ王国製の「鋼鉄の鎧騎士」が私たちを出迎えてくれた。
「あっちにはガレント王国製の『鋼鉄の鎧騎士』もあるね。お、こっちはホリゾン公国製だ。珍しいねホリゾンのがあるなんて」
トランさんはそう説明しながらお城の広場を案内してくれる。
既に祭りの一番のメインイベントである模擬戦は終わっていて今年の優勝者の「鋼鉄の鎧騎士」が祝福に飾られ広場の中央に立っている。
「ねえ、『鋼鉄の鎧騎士』ってすごく強いんだよね? あたしより強いかな??」
「ははは、多分ルラより強いぞ? なんたって『鋼鉄の鎧騎士』が三体いれば地竜を仕留められると言われるほどだからね」
三体って……
それを飛び蹴りでやっつけたルラは一体……
「ふーん、あの怪獣をやっつけられるんだ~」
「そうだよ、多分『鋼鉄の鎧騎士』は誰よりも強いだろうね……」
「シェルさんよりも?」
ルラは首をかしげながらトランさに聞く。
するとトランさんは大笑いしながら言う。
「はははははっ! シェルは特別だよ、彼女は『女神の伴侶』と呼ばれ、精霊王たちを一度に何体も使役できる。その力はメル様にも引けを取らないと言われているからね」
うーん、精霊王って四大精霊である地、水、火、風の最上位精霊で、各属性の精霊を従えるってアレ?
話だけは聞いた事あるけど一度も見た事無い。
シェルさんってそんなに凄い人なんだ……
いや、みんなの反応見ているとただの凄いじゃない様だけどね。
「あ、あの焼き菓子売ってる! お姉ちゃん買ってよ!!」
「もう、ルラったら食べる事ばかり。はいはい、買ってあげますよ~」
トランさんを引っ張りながら出店の方に行く。
そしてルラにあの焼き菓子を買ってあげてふと気づく。
「あ、髪飾りとかもあるんだ。わ、これ奇麗!」
「リルは団子より花か。ははは、そうだリルに朝ごはんのお礼に何か買ってあげようか?」
トランさんは出店の装飾品を売っているお店に私が興味を持っているとそう言ってくれる。
「い、いいんですか?」
「うん、どれが欲しい?」
そう言って一緒に髪飾りを見てくれる。
私は色々あるそれを見ながら悩む。
今はツインテールにしているけど、かんざしも良いし、櫛も良い。
髪留めなんかも可愛いし、種類もいろいろ有る。
「うーん、悩みますねぇ。どれもこれも良いし……」
本気で悩んでいるとシンプルなのだけどやたらと目に留まる髪留めが目に入る。
何と言うか、装飾が凄いとかそう言うのではないのだけどもの凄く気になる。
「あの、トランさんこれってつけてみてもいいですか?」
「うん? 勿論良いよ。どれ?」
私が指さすとトランさんはにっこりと笑ってそれを取り上げ私の髪にそれを付けてくれる。
左側のおでこの辺にそれは何と言うかもの凄くしっくりとしていた。
「へぇ、僕もこれが似合いそうだと思っていたけどルラの金髪にこの髪留めは良く似合うね」
「えっ? トランさんもこれが気になっていたんですか?」
驚きそう聞くとトランさんはにっこりと笑って頷く。
何それ!?
以心伝心!?
私の気になったのとトランさんが気になっている物が同じだったなんて!!
「あ、あのこれが良いです」
「うん、じゃあこれください」
トランさんがそう言うとお店の人はにっこりと笑いながら言う。
「いやぁ、お客さんお目が高い。これはドワーフの細工物ですよ。そちらのお嬢さんにとてもお似合いだ。まるでお嬢さんの為に作ったかのようですな! お嬢さんも彼氏さんからのプレゼントとは羨ましいですな」
「か、彼氏っ//////!!」
「ははは、じゃこれお代ね」
トランさんも否定しない!?
私は思わずトランさんの腕に抱き着きそしてにっこり顔でお礼を言うのだった。
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