12-26大魔導士杯開催
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
「魔術総合実演会」、通称「魔演会」の最大の見どころは何と言っても「大魔導士杯」である。
毎年この「大魔導士杯」に参加する者は、ある者は祖国の名誉と期待を、名もなき者たちは名声を、そしてその実力を示したい者は力試しをする場でもある。
「今年は全部で十六チームかぁ、まあ例年と同じくらいだわね」
魔導士杯に出場するチームのお披露目が終わり、いよいよ第一回戦の対戦相手を決めるくじ引きが始められる。
箱に各チームの代表者がボールを一つ取り出し、番号を確認する。
その番号で第一回戦の対戦相手が決まり、トーナメント方式で勝ち上がっていくシステムらしい。
「それじゃ行ってくるわね」
ヤリスはそう言てステージの上に上がる。
私たちはステージの上に上がって行くヤリスを見送る。
「毎年そのお題は試合が始まる直前まで秘密にされていますわ。ですから本当に実力が無いと勝ち進むのは難しいのですわ」
アニシス様はそう言って私たちのチームの代表者であるヤリスがくじ引きのボールをとる様子を見ている。
私は首を傾げアニシス様に聞く。
「直前までお題が分からないのですか?」
「そうですわ。ですからこれに勝ち進む事は正しく名誉となりますわ。実際私やヤリスも自国の期待を背負ってますので無様な姿はさらせませんの」
そう言ってアニシス様は珍しく厳しい目をする。
上級生でどちらかと言うとふんわりした感じが強いアニシス様だけど、今だけはその眼光も鋭い。
「やはり水上都市スィーフからのチームは例年レベルが高いですわね、是非私の部屋にお招きしたいですわ!!」
「はい?」
アニシス様の厳しい視線の先には水上都市スィーフからの留学生チームがいる。
みんな女性ばかり。
しかもアニシス様と同じくらいの年齢で、皆様ご立派なものをお持ちな美女軍団。
思わずアニシス様を見返してみるとその顔がだらしなく瞳にハートを宿しデレてる。
アニシス様、あなたって人は……
「うふふふふ、彼女たちが私の部屋にいらっしゃればそれはそれはもう可愛がってあげるのにですわ♡」
「あの、アニシス様・・・・・・」
ぐへへへへとよだれが垂れそうになるアニシス様に呆れる私。
「お姉ちゃん、決まったみたいだよ」
しかし今は呆れている場合じゃない。
どうやらヤリスが第一回戦の相手を決めた様だ。
「第一回戦の相手は……」
「ドドスチームだって、お姉ちゃんドドスってあのドドス共和国の?」
トーナメントの対戦相手がステージの上の表に掲示されてゆく。
私たちのチームの対戦相手はドドスチームと書かれていた。
「ドドスチームですの? 確か全員殿方のチームでしたわね。ふう、これで心おきなく初戦は勝ちに行けますわね。相手が女性では負かすのが可愛そうですもの」
アニシス様はそう言って相手のチームを見る。
お披露目の時に紹介があったドドスチーム。
イージム大陸のドドス共和国から来た留学生たちだ。
全員男性で見た感じ硬派のように見える。
「一回戦てどんなんだろうね~ あ、ヤリスお帰り~」
「ふう、一回戦目の相手がドドスかぁ、お題が何か分からないけど初戦としては手加減無用で行けそうね、これが女の子だけのチームじゃ勝った時に後味が悪いもんね」
いや、ヤリスも何アニシス様みたいなこと言ってるのよ?
私は呆れてやはりエルハイミさんの血筋なのかとか思いながらステージを見る。
『それでは第一回戦の相手も決まったようだ、これより『大魔導士杯』の開催を宣言する! さあ栄えある若者たちよ、その力を示すのだ!』
ステージの上ではこの学園の生徒会長であるアスラス=ホリゾン生徒会長が魔導士杯の開催宣言をする。
すると一斉に歓声が上がりこの魔術総合実演会のメインイベントがいよいよ始まるのだった。
* * * * *
「明日から四日間連続で『大魔導士杯』かぁ、忙しいなぁ」
私はそう言いながら渡された予定表を見る。
明日の第一回戦は「知識」についての対戦となるらしい。
どんなお題で「知識」について勝負するのか未知だけどやるからには頑張らないといけない。
「第一回戦は『知識』についてかぁ、例年だとクイズ方式だったり、目の前の題材でお題の魔道具を作り上げたりとかだったわよね?」
「そうですわね、魔術に関する知識を試される場ですから何が出て来るかは分かりませんわね」
「魔術に関する知識ですか? そうすると上級生の方が有利になるのですか?」
魔術に関する知識は座学を沢山受けた方が有利になる。
その為の座学であり、魔術師はその知識量の多さも重要な事になる。
ここへ来てしばらく経つけど、ああ見えてもソルミナ教授の受講は確かに勉強になる。
今まで私たちエルフが使う精霊魔法は単に精霊たちに魔力の乗った言霊でお願いをして代価で魔力を渡せば良いとだけ思っていた。
しかしそれを魔術的に解析して原理をもっと詳しく理解するとその過程がどうなていたのかとか、何故精霊によっては私たちの言葉を受け入れてくれないのかとかも分かって来る。
そしてそれは魔術の魔力がマナに作用する原理と同じく、精霊にもどうやって魔力が伝達していくかの理解に繋がった。
おかげで実技の講義では精霊魔法を使う時に以前より精霊たちのコントロールがうまく行くようになった。
あ、実技の講義って専門の場所に行くとその結界内だけは「戒めの腕輪」の効果が暫定的に消えてちゃんと呪文が唱えられるようになる場所がある。
でなければ学園にいる間に実技の講習が進まなくなるもんね。
まあそんな訳で、ここでの受講は大変為にはなっている。
となれば、上級生や更に上のクラスである中等科の方が有利なのでは?
そんな疑問を上級生であるアニシス様に聞いてみる。
「あのアニシス様、『知識』勝負って上級生や私たちより上のクラスの方が魔術についての知識が豊富だからそっちの方が有利なのではないのですか?」
「そうですわね、ある意味そうですが例年の出題傾向はただ単に魔道の知識が多ければいいと言うものではありませんわ。どれだけ魔術を理解していると言うかが重要となってまいりますから一概に上級生たちが有利とは言えませんわ」
アニシス様はそう言ってにっこりと笑う。
そうなると本当にどんな「知識」の勝負になるのだろう。
「ま、悩んでも仕方ないわよ。明日その場になってみないとお題も分からないしね。それよりちょっとお腹すいちゃった、ねえ出店でたこ焼きあったから行って見ない?」
「わーい、たこ焼きだぁ、行こう行こう!」
「そうですわね、考えても仕方ありませんわね」
「そうですね、うん、とりあえずたこ焼き食べてからにしましょう!」
私たちはとりあえず出店のたこ焼きをみんなで買いに行くのであった。
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