12-25大魔導士杯準備
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
私たちのクラスの出し物はものすごい評判で、学園長が査察に来た事でその知名度は更に爆上がり立った。
「とは言え、ベルルティスさん私たち明日から『大魔導士杯』に出なきゃならないのですよ?」
「そこを何とか空いた時間だけでもお願いします!!」
限定商品である白いパンケーキは伝説へとなっていた。
一日たったの十食。
それも時間限定となるとその存在自体幻ではないかと噂されていた。
いや、実在しますって。
そう突っ込みを入れたいけど、確かに一日作れる量が私がシフトしている時だけ。
試しに他の子に教えてたら生焼けっだったり、焦げて真っ黒になっちゃったりとうまく行かない。
誰か代わりに作れる人がいれば違うんだけどなぁ……
「じゃあ、もう一度だけ作り方教えますからそれでだめだったら諦めてください。明日から限定も『魔導士杯』優先になるので確約できませんからね?」
「いや、それじゃ困るのよ、うちの『エルフの森の喫茶』で出る幻の白いパンケーキは今やプレミアムがついて抽選券だって奪い合いどころかオークションで高値が付いているほどなのよ? これで限定数出せませんってなったら何されるか分からなくなるのよ!?」
もう既に何回目かのレクチャーだけどやっぱり作れる人が現れない。
「あの、それってエルフの人でないとダメなんですか?」
「え? あ、いや、焼くコツさえつかめれば誰でも出来るはずですけど?」
しがみつくベルルティスさんを剥がそうとしていると誰かが声をかけて来た。
見れば確かアルフェさんだった。
「あの、よければ私に教えてもらえませんか? エルフの方が作る料理は可能な限り覚えたいので」
「えーと、別にこれはエルフの料理って訳じゃないんですけど、ベルルティスさんアルフェさんに教えますからこれが最後ですよ?」
「アルフェさん、お願い覚えて!!」
既にワラをもつかむ思いのようだ。
実際にはちょっと器用な人ならば感覚さえつかめれば何とかなると思うんだけどなぁ。
私はアルフェさんを連れて厨房へと行くのだった。
* * *
「えーと、コツは卵の白身をメレンゲ状にした後に他の材料を入れるのに泡をなるべく潰さない事ですね」
私はアルフェさんにレクチャーしながらやらせてみる。
すると意外や意外、一回やり方を見せたらアルフェさんは私と全く同じような動きをして上手にこなしてしまった。
「良いですよ、じゃあ最後に焼くところですが、フライパンは熱し過ぎず、冷め過ぎずですね。こうして火でフライパンを熱して、バターを軽く塗ってバターの色が変わる前に一回濡れた布巾に乗せて粗熱を取ります。それからお玉ですくった生地を入れて蒸らし焼きをします」
アルフェさんの目の前で白いパンケーキを焼いて見せる。
頭の中で「ちゅうちゅうたこかいな、ちゅうちゅうたこかいな」と数回数えて蓋をとると、見事に膨れている。
それをフライ返しでひっくり返すとギリギリ焦げる前の状態で白っぽくなっている。
「よっし、裏返してもう少し蒸し焼きにします」
また頭の中で「ちゅうちゅうたこかいな、ちゅうちゅうたこかいな」と数回数えてからふたを開けてそれをお皿の上に置く。
これでちゃんと中まで火が通っているので大丈夫。
焼いた面はややぱりぱり気味でも時間が経つとな中の湿気が出て来てしっとりとなる。
真ん中はトロトロの感じでまさにたこ焼きと同じ。
このふわとろ感がとても美味しいのだ。
「なるほど、こうですね?」
そして驚くことにアルフェさんは一回で私と同じものを焼き上げた。
「すごっ! 完璧です、ベルルティスさんアルフェさんできちゃいましたよ!!」
「なんですって!? アルフェさん、これ行けますか?」
「はい、リルさんの動きは全て覚えました。リルさん、これってやはりエルフの人も好きでしょうか?」
アルフェさんはその後のデコレートも完璧に覚えて、もう私がいなくても大丈夫位な物を作り上げた。
たった一回教えただけで完璧にそれを覚えるとは、アルフェさんって天才?
「クラス委員長、行けると思います。それよりリルさん、エルフの方にもこれは好まれるでしょうか?」
「え? ええと、マーヤさんも美味しいって言ってたし普通のエルフならみんな喜んで食べると思うけど……」
実際村でこんなの出したらシャルさんあたりが黙ってないだろう。
これに更に蜂蜜かけたら甘くてもの凄く美味しいもんね。
「そうですか…… よっしゃぁー! ベイベイに帰ったらきっとあのお方もお喜びになられる、シェル様私絶対にいろいろな事を覚えて帰りますからね、そしてシェル様たちに誠心誠意尽くしますからね!!」
ん?
なんか今不穏な名前を聞いたような気がするけど……
「と、とにかくこれで白いパンケーキは何とかなりますね? ベルルティスさん私行きますね!」
そう言って急いで着替えてヤリスたちが待ってる控室に向かうのだった。
* * * * *
「遅いリル! みんな待ってたんだからね!!」
「すみません、例の白いホットケーキの作り方教えていたもんで」
「あら、あれをリルさん以外で出来る方がいるのですの?」
控室に行っていると既にヤリスたちが待っていた。
これから「大魔導士杯」に参加するチームのお披露目がある。
そして明日からいよいよ「大魔導士杯」が始まる。
「お姉ちゃん誰に教えたの?」
「うん、アルフェさん。一回教えただけで完璧に覚えちゃうんだもん、凄いよね?」
「アルフェ? ミハイン王国のあの娘? 確かベイベイの館から来た娘よね?」
「あらあらあら~そうしますとシェル様の所の娘ですの? 何代目のアルフェになるのでしょうかしら?」
なんかヤリスもアニシス様もアルフェさんの事良く知っているみたい?
「あの、ヤリスもアニシス様もアルフェさんを知っているのですか?」
「いや、知っているも何もアルフェって言ったら次期シーナ商会の総責任者候補じゃないの。代々シーナ商会の総責任者はアルフェ、ベーダ、デルザの三人が名前を継いでここボヘーミャで学びそしてベイベイの街に戻ってその功績を認められれば次期総責任者に成れる。もしダメだったらその名は剥奪されて別の名前になってよくて支店、最悪はナンバーズにまで落とされるらしいじゃない?」
何ですかそれ?
初耳なんですけど。
しかもシーナ商会って……
「あの、シーナ商会って、あのシーナ商会ですよね? 世界中にある百貨店の??」
「そうですわよ。シーナ商会には私のティナの国特産品で絹の下着も販売してもらっておりますわ」
えーとぉ、そうするとさっき聞いた不穏な名前って……
「シェルさんの関係者だったのか……」
「お姉ちゃん?」
いや、シーナ商会がシェルさんのお店だとは知っていた。
しかしシェルさんの関係者であのシーナ商会の次期責任者候補。
私は大きなため息を吐くのだった。
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