12-10とある朝
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
朝ごはん何ぃ~?(ルラ談)
ここへ来て既にひと月近くが経った。
「リル、ルラ朝ごはんよ~」
「はい、今行きます」
「う~ん、ご飯~?」
ここの生活にも慣れたもので、毎朝マーヤさんの作るお味噌汁の香りで目が覚める。
まるで生前の実家にいるような感覚にすらなって来る。
とは言え、学園長は躾も厳しく事ある事に色々と言ってくる。
まあ、居候させてもらっている身分なので仕方ない事なのだけど……
「ルラ、ほら早く起きて顔洗って来なさいよ」
「うーん、分かったぁ~」
私は既に起きて着替えも終わっている。
ルラは寝ぼけた顔を擦りがら寝間着である浴衣を脱ぐ。
「ルラ、あんたまた下着付けないで寝てたの?」
「う~ん、ちゃんと今から穿くよぉ~」
そう言いながら素っ裸のままタンスから下着類を引っ張り出し穿いて行く。
確かにお風呂上りに浴衣だからその方が寝心地いいので穿かないとゆったりは出来るけど、流石に女の子としてそれはどうかと思う。
蒸れないのとかはいいんだけどね~。
そんな事を思っているとルラが着替え終わり、一緒に洗面所で身だしなみを整える。
そして居間に行くと学園長が書類に目を通していた。
「おはようございます」
「おはよう~ユカ父さん」
「ぐっ! ル、ルラ、ユカ母さんでも良いのですよ……」
いや、最近思うのだけど学園長ってますますお父さん役に適任してきている。
だって丸いちゃぶ台に朝ごはんが並べられ、そこの上座に朝から座ってお茶すすりながら新聞じゃないけど書類見ている姿は正しく昭和のお父さん。
国民的アニメのあの海のご家族のお父さんそのものだ。
「はいはい、みんなそろったわね? さあご飯食べましょう♪」
マーヤさんは完全にお母さん状態。
エプロンしたままちゃぶ台にきてお味噌汁を配って行く。
そして学園長の横に座ってからお櫃のご飯世よそってみんなに配る。
「はいユカ。ほら、何時まで書類見てないで、さあ食べましょう」
マーヤさんにそう言われ学園長は書類を横に置く。
そしてみんなそろってから手を合わせ、合掌。
「「「「いただきます!」」」」
完全な日本の朝ごはんだった。
白米にお味噌汁。
ああ、おみそ汁の具は季節の野菜が使われていてほんの少し刻みネギも使われている。
驚いた事に白味噌で、良い出汁を使っているので朝の冷えた体が温まる。
ちなみに夜は赤味噌か合わせみそ出してくるあたりマーヤさんも凄いと驚かされる。
そしておかず。
今朝は漬物になんと納豆が出て来た。
しっかりと海苔まであるので驚かされる。
小鉢にはアサリのような物が煮つけられたものまであり、ちゃんと醤油が使われている。
「納豆ねばねばだねぇ~」
「いや、ここへ来て本当に驚かされますが完全に和食じゃないですか……」
「そうねぇ~、ユカが日本食が良い言ってるから私も勉強したのよ。食材もこっちの世界でも手に入るようになったし、精霊都市ユグリアや貿易都市サフェリナからも食材送ってもらえるから助かるわぁ~」
ニコニコしながらそう言うマーヤさん。
本来はこっちの世界でそれらが手に入るだけでもすごいと言うのに。
前に聞いた話だと、千年前くらいからこう言った食材は細々と作られていて、あのイチロウ・ホンダさん監修の元各都市の特産物として流通しているそうな。
ここ学園都市ボヘーミャでも安定した気候で、一年が寒くもなく、熱くもない温度なので安定して清酒が作れると言う事もあり、高級酒として世界に売られているとか。
但し、日持ちがしないので本当に限られた市場にしか出回っていないとか。
「とは言え、エルフ族でこんな和食が作れるだなんて、何処で覚えたんですか?」
「ああ、ユカとは私『命の木』でつながっていて、前にユカがあっちの世界に帰っちゃった時に私の意識がユカに繋がったままだったのでそっちの世界の知識とかも覚えたのよ。試行錯誤はあったけど、ユカが喜ぶから和食もイチロウ・ホンダさんに教わって出来るようになったよね~」
ニコニコしながらアサリの煮つけを口にするマーヤさん。
しかしその言葉に私は思わず学園長を見る。
「あの、あっちの世界ってもしかして日本ですか?」
「そうですね、こちらに召喚されてずっと心残りだったことを果たし、そして問題となる事の後始末をしてから居場所がないのでこちらの世界に戻ってきました。あちらの世界は私のいた時代とは変わり過ぎた。そして年老いる事無いこの体はあちらの世界では異様でしたからね」
学園長はそう言ってみそ汁をすする。
「でもユカが戻って来てくれてうれしかったわよ~、もうずっと一緒で離れなんだから~♡」
「マ、マーヤ、子供たちの前です。今は……」
「良いじゃない、少しくらいは。ちゅっ!」
なんかのろけ話になって来たと思ったらマーヤさんはいきなり学園長に軽く口づけする。
「なっ///////!」
「あ~、マーヤ母さんユカ父さんにチュウしたぁ~、うちのお母さんとお父さんと同じだ~」
驚きのあまり私は赤面するけど、ルラはうちの両親もよくやっている事を持ち出す。
うちの両親は小さい頃からよくやっていたから気にならなかったけど、目の前で女の人同士でそんなことされたら驚くって。
「マ、マーヤやめなさい。子供が見ている」
「うふふふふ、残念ね~これで御布団の中なら続きが出来たのに。さて、二人とも早く食べないと授業に遅れるわよ?」
何となく妖艶なマーヤさんを呆気にとられ見ていた私は慌てて食事を済ませ、ルラを引っ張って学校へと行くのだった。
* * * * *
「おはよう、あらリルどうしたの赤い顔して?」
「お、おはようヤリス。な、なんでもないから……」
教室に行くとヤリスがいた。
軽く挨拶をして隣に座るとヤリスはすっと手を私のおでこに当てて言う。
「風邪かしら?」
「う、うん、ありがと心配してくれて」
素直に感謝を言うとヤリスはそのまま私の前髪をあげて自分のおでこを付けて来る。
「なっ、ヤ、ヤリス///////?」
「うーん、熱はないよね? ん~、リルは今日も可愛いわねぇ~」
近い近い!
毎回思うんだけど、ヤリスってなんかスキンシップ強めじゃないの?
さっき学園長とマーヤさんのキスシーン見ちゃったからちょっと興奮しているけど、ヤリスにまでこんなことされたら余計に!!
だってヤリスってお姫様だからきれいだし、じっとその赤黒い瞳に見られると吸い込まれそうになるし、ちらっと見た唇は瑞々しくて柔らかそうだし……
「あ、あっ///////」
「ん~、どうしたのかなぁ~?」
何となく息が荒くなってしまう。
なんかヤリスもやたらと艶っぽいし……
「だ、だめ///////」
「ん~、何がダメなのかぁ~はぁはぁ……」
だめ、こんなの女の子同士でしちゃだめ。
でも、なんかヤリスが……
「お姉ちゃん、ソルミナ教授来たよ~」
「はっ!?」
私は慌ててヤリスから離れる。
「ちっ」
あれ?
なんかヤリスが舌打ちしたような??
「はいはい、受講を始めますよ~、みんな席について」
ソルミナ教授のその声に私たちは慌てて席に着くのだった。
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