12-9ガレント王国のお姫様
故郷のエルフの村へとやっと帰って来たリルとルラ。
しかしその特有のチートスキルが危険視されてエルフの村の長老から修行してくることを言い渡される?
さあ、魔法学園ボヘーミャに留学する事になっちゃったけどこの後どうなるか?
そんなエルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
え?
えええぇぇぇぇっ!?(リル談)
「このヤリス=ルナ・シード・ガレントの友人と知っての狼藉か!?」
ヤリスはそう意気り立ちながら拳を振り上げる。
って、ヤリスのフルネームは初めて聞いたけど、その名前って……
「あのぉ~、つかぬことを伺いますがヤリスってもしかしてガレント王国の関係者なの?」
「え? ああぁ、私はガレント王国第四王女なのよ」
「え”っ!?」
聞いてびっくりまさかの王族!?
いや、名前からあの王国の関係者かなぁ~くらいは考えていたけど、まさかお姫様だなんて。
魔法学園ボヘーミャは実力主義である。
平民でもこの学校へは試験を受け、その実力を示せば入学が出来る。
優秀な人材は特待生制度もあり、場合によっては学費やら何やらが免除される。
勿論完全にただと言う訳ではなく、各教授について研究室で助手の様な事をしなければならない。
これにより学費免除、生活費の元となるアルバイト代も出るので結構な数の学生がそれに取り組んでいたりもする。
何せ、ソルミナ教授のようにヒット商品が生みだされればその収益自体の何割かは研究室に入る。
中には授業そっちのけの教授も出て来てそれが問題視されたこともあったとか。
そんな学園だが、そう言った学生以外にも国の威信をかけた学生や王族、貴族の学生も来ていた。
それが目の前にいるヤリスである。
「あら、言ってなかったっけ? それより、リルにけがさせたのは誰? 顔は女の子の命よ? もし痕にでもなったら大変よ!」
そう言って私の肩に手を載せて揺さぶる。
がくんがくん
「あわわわわ、お、落ち着いてヤリス……王女様?」
「もう、ここでは私もただの生徒、ヤリスでいいわよ。それより誰にやられたの!?」
「あ~、お姉ちゃんってユカ父さんに鍛えられて付いたんだよね~」
横でそんな私たちを見ていたルラは頭の後ろに手を回しながらそうぽつりと言う。
それを聞いてヤリスはピクリと眉を動かす。
「ユカ父さん? まさか虐待!? 娘に傷を負わせるだなんてどんな教育方針よ!!」
「いや、ヤリス落ち着いて。これは学園長の特訓で、その……」
なんかうちのお父さんがとんでもない父親認定されそうなので慌てて訂正をする。
しかしヤリスはそんな私の言葉に眉間にしわを寄せる。
「学園長? リルってエルフよね? なんで人族の学園長が…… あ、もしかしてリルのお母さんってマーヤさん!? なるほど、だったら納得いくわね。」
いや、納得いかないでください!
どうやら学園長とマーヤさんの関係を知っているような口ぶりだけど、いくらマーヤさんがエルフだからってなんで私たちが実の娘になるのよ!?
「ヤ、ヤリスさん、落ち着いてお話しましょーじゃないですか。学園長とマーヤさんを知っているようですけど私たちはあの人たちの娘じゃありません。ファイナス長老から勉強して来いってここへ出されてその保護者が学園長とマーヤさんなんです。本当のお母さんとお父さんはちゃんとエルフの村にいますから、私たちはちゃんとした親から生まれたんですから! そ、そんな女性同士で子供作るだなんて事ありませんから!!」
ぜぇぜぇ。
思わず肩で息しながらそう力説する私。
学園長とマーヤさん二人の関係を知っているみたいだけど、普通だったら二人で子供なんて作れないから!!
「あら、そうなの? 私のご先祖様は両方とも女だって聞いてるわよ? 女どうしでも子供できるって」
「はいっ!?」
いや、何それ?
いくら何でもそんなトンデモ話聞いた事無いわよ?
何それ?
ガレント王国って一体どんな国なのよ!?
「へぇ~ヤリスのご先祖様って女どうしで子供できたんだ~ まるでエルハイミさんたちみたいだね~」
「あらルラ、私のご先祖様知っているの? その真名を知っているだなんて流石エルフね!」
「ばい”っ!?」
い、今ヤリスってご先祖様がエルハイミさんだって言ったぁ!?
そ、それってヤリスってエルハイミさんの血が流れているってことぉっ!?
「うーん、もう何代も前の話らしいけどね。おかげで私もこんな事が出来るの」
そう言った途端ヤリスは瞳の色を金色に輝かせまとっていた雰囲気を一気に変える。
体全体もうっすらと光ってこめかみの上に左右三つずつトゲのような癖っ毛がにょきっと生える。
「いつもは押さえているんだけど、どうも私だけご先祖様の血が濃く出たみたいなのよね~。気を付けないと周りの物壊しちゃうんで学園で修行して来なさいって言われたのよ、ご先祖様に」
「ご、ご先祖様ってまさか……」
「うん、始祖母エルハイミ様よ♪」
思わず頭を抱える私だった。
* * * * *
ヤリスがガレント王国のお姫様でエルハイミさんの子孫だと言うのは分かった。
色々と突っ込みたい所はあるけど、今は考えないようにしている。
「えーと、それで何で学食でこんな豪華なものが出されるのでしょーか?」
「え~いいじゃん、お姉ちゃん。せっかくヤリスが奢ってくれると言うんだから~」
私とルラの目の前に給仕付きで何処のフルコースかと言う位立派なお昼ご飯が出される。
しかも食堂のテラスの一角を占領して。
「うん? いつもの食事よ? 私の食事はおつきの料理人が作ってくれるのだけど、何時もほとんどのこっちゃうのよね。こんなにたくさん食べられないもの」
そう言ってヤリスはひょいっと料理を口に運ぶ。
西洋料理のフルコース、味も確かに悪くない。
ルラなんかさっきからお肉を結構食べているけど、またお腹壊さないでしょうね、あの子?
ちなみにヤリスは元の姿に戻っている。
青い髪の毛に赤黒い瞳。
こめかみの上に有ったトゲのような癖っ毛は引っ込んでいた。
「ご飯奢ってくれるの嬉しいけど、なんか私たちを見るみなさんの目が……」
「気にしない、気にしない。私なんか慣れっこよ? そんな事よりリルとルラってご先祖様に会ったんだって?」
ヤリスは目を輝かせて聞いてくる。
私はにとっては苦い思い出だったけどさっきはずみでエルハイミさんとシェルさんに会った事を言ってしまった。
どうやらヤリスは小さな頃一度だけエルハイミさんに会っているらしいけど、今の力が覚醒してからは学園で修行するようにと伝言を伝えに来たシェルさんに言われたらしい。
ヤリス自体は始祖母であるエルハイミさんを崇拝しているらしく、エルハイミさんの話が出た途端に食事に誘われ色々と聞かれていた。
なので私たちも仕方なく今までの経緯を話した。
「ふ~ん、つまりはリルとルラも特別な力があるんだ。あ、ちゃんと内緒にするから安心して。シェル様にも言われたけどこう言った特殊な力はあまり公にしちゃだめだって。何て言ったっけ、ジュメルだっけ? 危ない連中にも襲われるから気を付けなさいってね」
「ジュメルについても知ってるんですか…… 確かにあの連中面倒ですもんね」
「ジュメルは悪いやつだからあたしが倒す!」
ふんぬと鼻息荒くルラは言うけど、出来ればあの連中とは関わり合いになりたくない。
そんな私たちを見てヤリスはさらに嬉しそうにする。
「これで私たちは更に深い中になったわね。秘密を分かち合う仲間…… ああ、私の憧れた世界が見える、こんな可愛らしいエルフのお友達も出来てやっぱり学園に来て正解だわ!!」
何故か恍惚とするのにちょっと引っかかるけど、悪い人じゃなさそうだ。
私は出されたデザートに舌鼓しながらそんな彼女を見るのだった。
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