12-3食事
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へとやっと帰って来たのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
す、すごいお料理!!(リル談)
「これはお刺身!? まさか生魚が食べられるだなんて!」
「ん~、こっちはお魚煮たやつだねぇ~」
私とルラは思わずうなる。
お刺身は白身魚だけど、ちゃんとお醤油とわさびも付けられ大根のつまの上に青しそのような物が敷かれ、飾りに小さなお花も添えられている。
煮魚も型崩れすることなく奇麗に煮られて、芽生姜とかさやえんどうの湯がいたものが飾られていた。
前菜から始まって様々な小料理が連続で出て来る。
そしてそのどれもが正しく和食。
しかも懐石料理。
どれもこれもハイレベルな味わいでもの凄く驚かされると同時に、にわか和食の私とは次元が違う。
「凄わねぇ~、このお野菜お花の形しているのね?」
「こっちは果物の恰好をしているけど全く別の食材か、何とも驚かされるね」
お母さんもお父さんもこの料理に驚いている。
そりゃぁ確かに本物の和食、しかも懐石料理を出されればそうもなる。
「どうだい? 今回は季節の良い魚が入ったから魚料理を中心にして見たが、刺身は大丈夫かい?」
イチロウ・ホンダさんはニカッと笑いながら目の前で次の魚をさばいて見せる。
それを見ながらお母さんはイチロウ・ホンダさんとファイナス長老に言う。
「初めて食べたけど、思いの外血なまぐさく無いものなのね? でもこれが有名なファイナス長老のおもてなしですか」
「来賓の時にイチロウにお願いして作らせているものですね。普段はもっと簡単なものが多いですが、イチロウの料理はどれもこれも素材の味が引き出されていてエルフである私たちにも食べやすいものが多いのですよ」
ファイナス長老がそう言っているとアレッタさんと言う胸の大きなエルフのお姉さんが徳利を持って来てファイナス長老たちのお猪口に透明な液体を注ぐ。
さっき聞いたけどこのアレッタさんってイチロウ・ホンダさんの奥さんなんだって。
だからイチロウ・ホンダさんも千年以上こっちの世界で生きているとか。
うーん、あんなに美人な奥さんにもらうだなんて、イチロウ・ホンダさんも隅に置けない。
と、ここで徳利から注がれるその液体の香りに私は気付く。
「あの、もしかしてそれって日本酒ですか?」
「ふむ、分かりますか? これはボヘーミャで醸造している日本酒です。ここの気候では高かすぎて発酵がうまく行きませんからね」
学園長はそう言ってお猪口をくいっと傾ける。
日本酒があるなんて……
そう言えばお醤油も生醤油っぽいし、煮物に田楽とか有るからお味噌もあるってことよね?
漬物もどうやら米ぬかを使った奴らしく、カブとか人参、大根が良い感じでつかっている。
この世界にも醤油や味噌、お酒とか有るんじゃないの!!
「お母さん、こう言った食べ物って知っていたの?」
「聞いた事はあるけど、食べるのは初めてよ。それにエルフの村にいるとお腹がふくれればあまり味は気にしてなかったからね」
うん、エルフ族の問題はそこなんだよねぇ。
外の世界に出ている渡りのカリナさんたちはエルフの村の食事のまずさを知っている。
いや、素朴でその素材自体を味わうには良いよ?
エルフ豆だって新鮮なのは確かに美味しい。
しかしこう言った和食を出されれば如何に普段自分たちが食べている物がマズ飯だか分かると言うモノ。
お母さん、あなた知っていたのに毎日エルフ豆だったのかーいぃ!
「うーん、あたしこう言うの嫌いじゃないけどもっとお肉とか食べたいなぁ~」
「お? そっちの嬢ちゃんは肉が好きなんか? 待ってな、今串カツも揚げてやるからな」
そう言って今度はイチロウ・ホンダさんは揚げ物の準備を始める。
てんぷらかと思ったけど、どうやらフライのようだ。
見ているとお肉とかに切れ込みを入れたりと流石に芸が細かい。
「あれ、野菜にまで切れ込み入れるんですか?」
「ああ、こいつは串カツって言うらしいがな、エルハイミの嬢ちゃんから教わったやつで火の通りをよくする為なんだよ」
え?
エルハイミさんとも面識あるんだ、イチロウ・ホンダさん。
あ、でも、ファイナス長老のお抱え料理人ならそれもそうなのか……
「イチロウはエルハイミからもアインからもいろいろな料理を学んでいますからね。私も一旦あちらの世界に帰りましたが、役目を終えたのでまたこちらに戻った時にあちらの新たな食べ物も持ち帰りイチロウに再現してもらっています」
学園長はお猪口をくいっとしながらそんな事を言っている。
「ユカさんにも教わったあのカキフライってのは美味いよな。あっちの世界じゃもうみんな腹いっぱい食事が出来るって話じゃないか? そうだ、エルフの嬢ちゃんたちもあっちの世界の料理について教えてくれねぇか? どうやら俺らよりずっと後の時代から来たみてーだしな」
「えっと、それはいいんですけど、代わりに少しお醤油やお味噌なんか分けてもらえませんか?」
お米が手に入って醤油やお味噌があれば日常的二だって和食が食べられる!
「それについては学園にもあります。あなたたちは私たちと一緒に住むのですから基本は和食となります」
学園長は私とイチロウ・ホンダさんが話しているとそう言ってくる。
え?
身元引受人はマーヤさんじゃなかったの??
一緒に住むってどう言う事?
「あ~そうか、二人には言ってなかったわね。学園では私たちの家に住んでもらうけど、ユカも一緒なのよ」
マーヤさんは美味しそうに串カツを食べながらそう言う。
えーと、マーヤさんが学園長と一緒で、私たちも学園長と一緒に住むってこと?
「しっかりと鍛えてあげますから覚悟をしなさい」
そう言って学園長は私とルラを見て薄く笑うのだった。
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