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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第三章:新しい生活
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3-9今日のまかない飯は

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


リルちゃん、もっと舐めっせてぇ~♡(アスタリア談)


「へぇ、これがパスタなんだ。あれ? こっちの平たいのって柔らかいんだね?」



 アスタリアちゃんは私たちが買ってきたまかない飯用のパスタを見ながら聞いてくる。


「うん、二種類を取りあえずね。でも今日は細い方を使おうと思うんだ。おかみさんにも許可もらったから、今から準備するね」


 そう言いながら私は食材をいくつか並べる。



 今日作るつもりのまかない飯、ルラのリクエストでもあるミートソーススパゲティーを作るのだ!



 私はウキウキしながらお肉を切り刻む。

 一番手間のかかるのがミンチ肉なんだけど、この世界にはミンチ機なんて無い。

 だからお肉を薄く切って細切りにして、さいの目に切ってから無心に包丁でたたいて細かくしていくしかない。

 ボークソテー用の豚肉を少し拝借してトタトタと小気味よい音を立てながらお肉をミンチにしてゆく。


 このやり方はおかみさんから習った方法だった。


 前にロールキャベツを食べた時にミンチ肉について聞いたらこうやって作るそうだ。

 だからお店の料理として出すのは大変なのでまかない飯でしか作らないとか。

 

 確かにミンチ肉をこうやって作るのは時間がかかる。

 それに確かに手間だ。

 だけどここで妥協したらあのほろほろのミートソースにならない。



「お姉ちゃん、手伝おうか?」


「だ、大丈夫。もう少しでミンチ肉出来るから。これさえできれば後は簡単よ」


 ルラが覗き込んでくるけど、この子お料理なんて全くできない。

 エルフの村にいた時はお皿洗いとかの手伝いはしていたのでそう言った方面は出来る。



「へぇ、リルちゃん器用だね? 私お肉細かくするの苦手なんだよね~」


「お、美味しいものを食べる為です。それに私たちエルフはお肉とかの消化が悪いからこう言った風に細かくした方が良いんですよ」



 とたとたとたとた……



 アスタリアちゃんは私がミンチ肉を作る所を興味深く見ている。

 レナさんもアスタリアちゃんも仕込みの手伝いはするけどミンチ肉だけはおかみさんがいつもやっていた。


 これってちゃんと細かくしなきゃだめだし、よく切れる包丁を使うしかないので結構危ないし重労働だ。



 しかし、ミートスパゲティーの為よ!!



 私はそれでも何とかミンチの山を作り上げたのだった。


「さてと、次はお野菜ね。セロリと玉ねぎ、あと人参とニンニク少々……」


 ミートソースは自分で作る場合とても美味しくなる。

 各野菜を細かく刻んでボールに入れて準備する。


 そしてフライパンに細かく切ったニンニクを入れてオリーブ油で炒め始める。

 すると途端にいい香りが漂い始める。



「あ、いい香り! へぇ、ニンニクを油で炒めるとこんなに香りが強くなるんだ」


「パスタ料理ではよく使うんですよ!」



 横でずっと見ているアスタリアちゃんに答えながらフライパンのニンニクに火を通してオリーブ油に香りを移す。

 そして香りが出た頃にあのミンチ肉を入れる。



 じゅぅ~!



 熱せられたフライパンにミンチ肉が入ると良い音を立てながらミンチ肉が焼かれ始める。

 焦げ付かない様に、塊にならない様にへらでかき混ぜながら塩を振り、全体に色が変わり始めたら刻んだ野菜も入れる。



「お姉ちゃん、もしかしてこれならハンバーグも作れるかな?」


「うーん、でも豚肉と獅子牛肉を七対三の割合で入れなきゃだから結構手間になるね。両方のお肉を手に入れなきゃだし、ちょっとすぐには作れないかな? それにソースも問題あるしね」



 ルラの言いたい事は分かる。

 ミンチ肉があればハンバーグも出来そうだ。

 でも新鮮なたまごとか、パン粉、片栗粉とかまだまだ食材も必要だから今後の課題かな?



「へぇ~、なんかぼろぼろなんだね?」


「うん、そろそろ良いかな? ここにトマトピューレとワインを少し入れて煮込みま~す」


 アスタリアちゃんが興味津々で見ているなか、大体焼けて来て全体的にしなっとなって来たのでトマトピューレとワイン、そしてバジルとオレガノの乾燥ハーブを入れる。

 そして弱火にしてふたを閉めてくつくつと煮始める。



「さてと、アスタリアちゃん、今日のシフトどうなっていたっけ?」


「えーと、先にホールをリルちゃんとルラちゃんだね。その後に私たちが交代すれば後はお父さんでとりあえずは大丈夫だと思うよ?」


 そうするとまかない飯のパスタを茹でるのは私たちとアスタリアちゃんが交代したタイミングかな?

 本当はゆで上がりが一番おいしいけど、硬めに茹でておいてオリーブオイルを絡めておけば作り置きとしては大丈夫かな?

 食べる寸前にもう一度お湯で麺を温めてからソースをかければ大丈夫そうだし。


 と、フライパンの蓋から湯気が沢山出ているのに気付く。

 作り置きのブイヨンスープを少し拝借してふたを開けたフライパンに流し込む。

 そしてゆっくりとかき混ぜるとお肉ごろごろのあのミートソースになる。



「ふわぁ! ミートソースだ!!」


「ぬっふっふっふっふっ、うまくいったわね。どれ?」



 掻き回したヘラの端っこについているソースを舐める。


 

 ペロ!



「んっ、美味しい!」


「お姉ちゃんずるい! あたしも!!」


 言いながらルラは舌を出してへらを舐める。



 ペロリ。



「おおぉっ! ミートソースだ! あ、でも前に食べてたレトルトのよりおいしい!!」


「な、何? そんなにおいしいの? ねね、リルちゃん私も舐めていい?」


 たまらずアスタリアちゃんも舌を出して舐めようとする。

 と、私が舐めたすぐ近くを舐める?



「あっ!」



 ぺろっ!



 思わず小さな声を出してしまった。

 ルラとはも小さい頃から一緒に何か舐めたりしていたから気付かなかったけど、アスタリアちゃんが舐めるって事はこれって……



 か、間接キッス!?



 そんな事を意識し始めたら途端に恥ずかしくなってきたぁ!!



「んっ! これ美味しい!! もう少し舐めさせて」


「あ、じゃぁあたしも~」



 そう言いながら私が握るへらにアスタリアちゃんとルラがかわいらしい舌を出してぺろぺろと舐めている。



 ふ、二人が私の持つへらをぉーっ!!     


 

 何この状況!? 

 一心不乱に二人の美少女が私の持つへらをぺろぺろと!?


 なんか変な気分になって来る。

 私だってもう少し味見をしてみたくなる。



 さ、三人でへらを舐め回す……



 もう変な気分になりまくって私も舌を出してへらを舐め回す。

 すると残ったソースの争奪戦のように三人でへらをぺろぺろと舐め回し始める。


 なんかものすごく興奮する。

 口の中はミートソースの味でいっぱいなのに、アスタリアちゃんやルラが舐めた後がなんか甘く感じる。

 これって二人の味なのかな?



「何を三人でやってるんだい?」



 びくっ!!



 いきなりおかみさんが声かけて来て思わずビクついてしまう私。


「ぷはぁ! 美味しい!!」


「ほんとだね、このソースとても美味しいよね! 凄いよリルちゃん!!」


 ルラとアスタリアちゃんはペロッと唇を舐めてそう言うけど私だけ味なんか分からなくなってきてドキドキと心臓が高鳴っている。


「へぇ、リルが作ったソースかい? どれ」


 おかみさんはそういいながら スプーンでそれを少しすくい上げ口に運ぶ。



「!?」



 そして大きく目を見開き私を見る。


「なんだいこのソースは!? 初めて食べる味だけどとても濃厚で旨いじゃないか!!」


 おかみさんはそう言ってもう一度スプーンでそれをすくい上げ口に運ぶ。


「あ~、いいなあぁ~おかみさん」


「ほんと、お母さんそれまかない飯なんだから今食べちゃダメだよ~」


 ルラとアスタリアちゃんはそう言っておかみさんを見る。


「リル、これって何て料理だい?」


「あ、えっと『ミートスパゲティー』って言います。あの麺と一緒に食べるんですけど」


 私がそれを言うとおかみさんはガシッと私の肩を掴んで言う。



「すぐに食べさせてもらえないかい?」


「はい!?」




 真剣なまなざしでおかみさんはそう言うのだった。



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