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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十一章:南の大陸
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11-19エルフのお迎え

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


暇ぁ~(ルラ談)


 水上都市スィーフに来て早三週間近くが経った。



 この都市は名前の通り周辺を沼や湖に囲まれている。

 街の中にも大きな池なんかが有って、その上に柱がたてられ建造物があるところもある。

 ヴェニスではないけど通路が川になっている場所もあり、移動はもっぱらボートという場所さえある。



「はぁ~暇ねぇ~」


「うーん、今日は何するぅ~?」



 宿屋の窓からそんな風景を見ている私は窓枠に寄りかかりながらそうぼやく。

 流石に冒険者ギルドの食堂で連日お米を使った料理を披露していたけど、一週間もすればそのレパートリーも限られてくる。


 既にオムライスやカレーライス、各種丼物や田ウナギを使ったかば焼きなんかも考案した。

 そうそう、意外な話ここスィーフにも魚醤はあった。

 でもジマの国とは違い川魚で作るのでちょっと匂いがきつい。

 まあそれでも使い方次第なので既にその魚醤もたくさん買い込んでおいた。


 冒険者ギルドの厨房では私が教えたお米を使った料理をマスターする為にナムニさんたちが練習をしているはずだ。

 流石にこれ以上教えても覚えきれないと言うので二日前から私たちがお米を使った料理を教えてるのはお休みとなった。


 そうなると何もすることが無いので暇となる。

 正直ここスィーフでは特に観光するつもりも無かったので余計にやる事が無くなるとぼぉ~っとするしかない。



「何時エルフの村から迎えが来るのかな?」



 ふとルラは窓の外を見ながらそんな事を言う。

 私も同じくぼぉ~っと窓の外を見ながら答える。


「エルフだから時間の感覚がゆったりよね、多分ひと月くらいは来ないんじゃないかな……」


 水上都市スィーフから迷いの森まで馬車で二週間くらいで着くらしい。

 そこから森の外周を迂回する街道を通って精霊都市ユグリアに更に二週間くらい。

 そうすればもうエルフの村に着いたも同然だった。


 しかしエルフの村から迎えが来るなら迷いの森を迂回せず村からいきなり南の方へ出るルートで来れば二週間くらいでここ水上都市スィーフに着くはず。

 

 でも相手はエルフ。

 とにかく時間の感覚がゆったりとしているから、急いでいるとか言いながらもその倍はかかるだろう。


 私はそんな事を思っていた。



 こんこん。



 二人して窓の外を眺めていると部屋のドアがノックされた。

 誰かなぁ~とか思いながら私はのっそりと扉の方へ行きながら声をかける。



「はいはい~、どちら様ですか~?」


「私だ、戦士長のソルガだ」



 はいっ!?

 い、いま戦士長のソルガって言ったぁ!?



 私は慌てて扉を開く。

 するとそこにはエルフにしては筋骨隆々とした男のエルフの人が立っていた。



「そ、ソルガさん!? なんでソルガさんが!!!?」


「え、ソルガさん?」



 愕然とする私に窓の方にいたルラも驚き駆け寄って来る。

 するとソルガさんはほっとしたような顔つきになって私とルラの頭に手を載せて撫でる。



「良かった、村から消えたと聞いた時は肝を冷やしたぞ。しかし二人とも元気そうで何よりだ」


 そう言ってにっこりを笑う。

 しかし私はそんな事よりなによりソルガさんがここへ来ている事に驚かされる。



「なんでソルガさんがここに居るんですか!?」


「そう言えば忙しいってラーニィー言ってたのに~」



 頭を撫でられながらそう聞いてみる。

 ルラもソルガさんの娘であるラーニィーにソルガさんはいつも忙しくてあまり家に帰って来ていないと聞いていた。


「ファイナス長老から頼まれた。二人が自力で水上都市スィーフまで戻って来たと聞いてな。まさかこんな若木に自力で戻って来いとはな。ファイナス長老から話は聞いている、二人ともスキル持ちなんだってな?」


 「うっ……」


 まあ、ソルガさんなんて戦士長が来る時点で尋常じゃない。

 私やルラの力について知らされているってことはあるだろう。

 でなければそうそう簡単にこんな所にまで戻って等これない。


「トランやジッタの事は残念に思う。しかし二人が生きてここまで戻って来た事はとてもうれしく思うぞ」


 そう言ってソルガさんは腰をかがめ私たちと同じ目線にまでなる。

 エルフ特有の濃い緑色の瞳。

 私やルラも同じ色の瞳をしているけど、ソルガさんのそれはさらに濃い色に見えた。



「よく頑張った」



 そう言うソルガさんに私もルラも思わず抱き着いて泣き始めてしまった。


 もともとそんなつもりは毛頭なかったのに同じエルフ族の、しかもソルガさんに会ったらもの凄く安心感と懐かしさがあふれ出して来る。

 お父さんと同じような森の香りがする。

 人間で言うとちょっと汗臭い匂いなのだけど、今はそれがとても安心できる香りだ。


 ソルガさんは何も言わず泣いている私とルラの背中を優しくたたいてくれるのだった。



 * * *



「しかしシェルの奴、エルハイミさんに言って迎えにくらい来ても良かったのにな」


「いや、シェルさんがここに現れたらスィーフの街が大騒ぎになっちゃうんじゃ……」



 ひとしきり泣いて落ち着いた頃にソルガさんは今までの事を聞きたいと言って下の食堂で食べ物を注文しながら話を始めた。

 実はシェルさんはソルガさんのいとこで、ソルガさんを兄呼ばわりしていたそうな。

 と言う事はシャルさんのいとこでもある訳だ。  

 

 そんなソルガさんに今までのいきさつを説明してどうやってここまで戻って来たか話をする。



「そんな事まで…… しかし、ジュメルと言ったな? まさか奴等がリルとルラに目を付けるとはな。そこまで二人のスキルは特殊と言うことか? それで、一体どのようなスキルなのか教えてもらえるか?」


 ソルガさんは運ばれてきた料理を私たちに勧めながら葡萄酒を軽く飲む。

 私はソルガさんの目の前にコップに水を入れて差し出す。



「水を『消し去る』!」



 私のチートスキル、「消し去る」を発動させてコップの中の水を消し去った。


「これが私のスキル、『消し去る』です。物体を消したり、記憶を消したりもできるみたいです」


「あたしは『最強』だよ~! 地竜てのもやっつけたんだよ!!」


 実践をして見せながらルラも自分のスキルについてソルガさんに言う。

 それを見たソルガさんは唸りながら聞く。



「ファイナス長老の話ではこれらの力はかなり強力だと聞いたが、リルとルラはちゃんとコントロールできているのか? 今までに暴走や制御が出来なかったことは無かったのか?」


「う~んと、ないと思う~」


「そうですね、今までに暴走とかは無かったと思います、使い過ぎて疲れちゃったってのはありましたけど」



 それを聞いてソルガさんは大きくため息をつく。


「今のところは問題無さそうだな。しかしそのスキル、通常のスキル持ちとは違うとファイナス長老は言っていたな?」


「え、ええぇとぉ……」



 うーん、他のスキル持ちの人ってどんなのか知らないけど、黒龍のコクさんの話やあの駄女神なんかからの話だとこの力の源はエルハイミさんと同じ所から来ているらしい。

 つまりは女神様と同じ力って言うことになる。


 コクさんなんかすごく羨ましがっていたもんなぁ~。


 私はそんな事を考えながらソルガさんに言う。



「ええと、他のスキル持ちの人と会った事が無いので自分のスキルってのがどの程度かは知りません。もしかしてそんなスキルがあると村から追い出されちゃうんですか?」


 おずおずと心配そうに聞くとソルガさんは首を振る。



「こんな若木を村から追い出すなんてする訳無いじゃないか。しかし、そのスキルはあのジュメルに狙われるほどだ、要注意となる。村までは私がしっかりと二人を守りながら帰るぞ!!」




 そう言ってソルガさんは葡萄酒を一気にあおるのだった。



面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


*申し訳ございませんが、私生活がまだまだ忙しくなっておりまして更新はしばらく不定期とさせていただきます。

読んでいただいている方にはご理解いただけますようお願い申し上げます。


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