11-18今日もお米料理
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
今日は何作ろうかなぁ~?(リル談)
私たちはエルフの村から迎えが来ると言うことで、ここ水上都市スィーフでそれを待つ事となった。
「お姉ちゃん、そろそろ行こうよ~」
「はいはい、今行くわよ」
自慢のプラチナに近い金色の髪の毛をツインテールに縛って左のおでこ上に大切なトランさんからプレゼントされた髪留めを付けて私は立ち上がる。
今日もこれから冒険者ギルドに行く事になっている。
そしてお米を使った料理をそこで作ってお米のすばらしさを更に広めなければいけない。
そうすればここスィーフでのお米の生産もさらに増え、良質なお米が手に入るチャンスも増える。
ぐっとこぶしを握って私はその使命感にふくらみの少ない胸をいっぱいにしている。
「今日は何のお米使った料理になるの?」
「そうだねぇ、そろそろお米を主食的にしたものにしたいんだけど……」
宿を出て冒険者ギルドに向かう私とルラ。
街中をとぼとぼと歩きながら今日は何を作ろうか考える。
と、路上販売の店がちらほらと見え始める。
「流石に水上都市と言うだけあって淡水魚とか川エビとかいっぱい売ってるわね?」
「お姉ちゃん、これってタニシ?」
見れば桶に網が張ってあってその中にタニシのような物がぎっちりといる。
そう言えば生前田舎のおばあちゃんがタニシの味噌汁なんか作っていたっけ。
そんな物が飲めるのかと驚いたけど、シジミと同じで田舎では食べるのだとか。
とは言え、これをご飯に合わせるにはちょっとね。
なので他の物を見るけど、川魚や沼魚は臭みが強いし、骨が面倒なのが多い。
ニジマスやアユのような小型なら塩焼きにするのが一番手っ取り早いんだけどなぁ……
と、大型の魚が目に入る。
「これって、鮭?」
「ほんとだ、サケだ~! あたしサーモンのお寿司好き~」
確かにサーモンのお寿司は美味しい。
それにどこかの駅弁で食べたおし寿司なんかもあったけどあれは美味しかった。
しかし川魚は寄生虫とかが多いと聞く。
私の下手な知識ではそれにより食中毒になってしまう恐れがある。
例え毒をチートスキル「消し去る」で消しても寄生虫は消し去れない。
「うーん、鮭かぁ。おにぎりの具とかでは定番よね? あ、そうだ!!」
私はひらめきその鮭を買い入れる。
「お姉ちゃん、鮭で何作るの?」
「んふふふふ、たまにはさっぱりした物の良いでしょ?」
そう言って私は包んでもらった鮭を腰の魔法のポーチにしまい込むのだった。
* * * * *
「鮭の塩焼きかい?」
「はい、それでご飯を食べるのも良いのですが今回はもっとさっぱりと、お酒を飲んで小腹が減った時とか軽く食事をするのにもってこいの物を作ります」
言いながら鮭の解体をお願いする。
流石にここまで大きなものは私の力では簡単にはさばけない。
なので三枚おろしにしてもらって切り身鮭にしてもらう。
それを塩を振ってしばし水を抜いてから塩焼きにしてもらう。
この辺はこちらスィーフでも普通にしているらしいので全部ナムニさんたちにお任せ。
三枚おろしで余ったあらは大根と一緒にあくを抜きながら煮ておく。
味付けは生姜と塩のみと言うシンプルなものにしておく。
私は炊きあがったご飯をざるに入れて軽く水ですすいでぬめりを取っておく。
そして海藻と魚の出汁で取ったスープに塩と少量のお酒を入れて味を調え温めておく。
そこへお茶の葉を入れてお茶の味がにじみ出てきたらお茶っ葉を抜き取って準備が出来る。
お椀に洗ったご飯をよそって出汁の効いた汁を入れて、そこへほぐした焼き鮭をたくさんのせて、炒った白ごまを少々かける。
それを人数分作って皆さんの前に出す。
「はい、出来ました! さらさらの鮭のお茶漬けです!!」
おおぉ~!
「わーい、鮭茶漬けだ~。あたしこれも好き~」
「米をスープに浸してほぐした焼き鮭か…… 一体どんな味か想像も出来んな」
「これ、このまま喰うのか?」
「簡単にできるんだな、前の二つに比べて」
ルラも皆さんもお茶漬けを前に思い思いの事を言っている。
私はそんな皆さんにスプーンを渡して言う。
「さぁ、熱いですから火傷に気を付けて食べてくださいね」
いいながら自分の分を手に取りスプーンを入れてそれを口に運ぶ。
ぱくっ!
「んっ、いい塩梅!」
口に運んだそれはご飯を洗った事でサラサラになっている。
そして出汁の効いた汁はお茶の渋みとほんのり苦みも効いていて非常に良い。
更にほぐした鮭の塩気がお茶漬けをかき込むスピードを上げてくれる。
炒ったゴマのほんのりとした香ばしさも非常にいいアクセントとなっている。
「うはぁ、お茶漬けさらさら~」
「これは何ともさっぱりとしていて簡単にかき込めてしまうな!!」
「米がさらさらしているとは、これはこれでいいな!」
「確かに酒飲んだ後にちょっと食うとかにいいかもしれん!!」
皆さん熱々なのにそんな事言いながら、さらっとお茶漬けを完食する。
ちょっと最近油の多いものが続いたのでこう言ったさっぱりなものもいいかもしれない。
あ、これにワサビ入れても良かったかなぁ?
「しかし驚いた。米にこんな使い方があったとはな」
「まだまだあるんですが、他の食べ方なんかだと病人食としても使えるんですよ。かなりゆるめに煮込んで軽く塩を振って食べると食欲の無い病人なんかにはとても優しい食べ物になりますし、消化にも優しいんですよ」
私がそう言うとナムニさんは腕を組んで唸る。
「これほどのモノを俺たちは今まで全然気にしてなかったとはな。全くを持って損した気分だよ」
「お米はこのほかお酒を造ったり発酵させたりといろいろ使い道が有りますからね。そうそう、種類によってはうるち米なんかだとおもちも出来ますしね」
「もち? なんだいそれは??」
「うーん、ご飯を潰して作るようなモノなんですが、うるち米じゃないとなぁ…… そうだ、ちょっと違いますけどこんなのも出来ますよ!」
私はそう言いながら小豆を洗う。
これってちょっと時間はかかるけど、アスラックの町で手に入れた圧力鍋を使えば簡単にできる。
早速それを取り出して小豆を煮始める。
そして簡単につぶれるくらいになったらお砂糖を投入。
ふたを開けた状態でへらでよく練りながら粘度を増してゆく。
最後に一振り塩を入れて出来上がり。
そう、あんこを作ったのだ!
「後はこのご飯を軽く潰して……」
ボールを軽く濡らしてからご飯を入れて棒を使ってご飯を潰してゆく。
完全に潰さない程度で手を濡らしそれを一口大の俵型にして先ほどのあんこを周りに塗りたくって行く。
それを何個も作ってお皿に並べて出来上がり!
「えーと、おはぎとか牡丹餅って呼ばれてますね。デザートのような甘味です」
「あ~、これってお婆ちゃんのうちで食べた事ある! 甘いんだよね~」
「黒くてなんかもこもこしているな……」
「甘いのか?」
「デザートにしては地味な感じだが……」
「シンプルで素朴な味わいですけど、お茶とかと一緒に食べると美味しいですよ?」
私はそう言いながらお茶を入れる。
とは言え、この世界でお茶と言うと通常は紅茶なので、シーナ商会で以前買っておいた抹茶を入れる。
お作法とか知らないから単にお湯に抹茶の粉を入れて掻き回しただけなんだけどね。
お茶とおはぎを皆さんお前に出す。
するとナムニさんは恐る恐るそれをフォークに刺してかじる。
はむっ!
「んッ!? こ、これは何とも素朴だが面白い食感と甘みの強い煮崩れた豆だな??」
それを見ていた他の皆さんも一斉にかじりつく。
「へぇ、これはこれで行けるぞ!!」
「周りが甘いが真ん中の潰された米がもちもちとしていて甘さを中和してくれるな! ねばねばが強くなってそれはそれで面白い食感だ」
「えへへへへ~、甘ぁ~いぃ!」
皆さんおはぎをかじりながらそんな感想を言っている。
ルラに関してはお茶も適度に飲みながらおはぎを食べている。
私も自分の分をフォークで切り分け口に運ぶ。
「ぱくっ! もごもご。 うん、甘いあんこがおいしいわねぇ~、ご飯ももちもちでいい感じ。お茶が渋くて甘くなった口の中をさっぱりとしてくれるのって良いわよね~」
久しぶりにおはぎを食べた。
これって真ん中をあんこにして周りをお米、そして更にその周りを白ゴマとかきなことかでも美味しいのよね~。
そんな事を考えながらみんな何となくほっこりとしながらお茶をすするのであった。
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