11-16連絡
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
チャーハンも食べたいなぁ~(ルラ談)
「うはぁ~、お米美味しかったねぇ~」
「うん、すっごく久しぶりだったもんね、やっぱ白米は必須よ!」
実に十七年近くぶりであろうその白米はちょっとぼそぼそしていたけど美味しかった。
お米自体がこの世界にあったと言うのは驚きだったし、エルフの村近くにまでお米の納品が有ったと言うのも驚きだった。
知っていれば絶対にエルフのお父さんやお母さんに無理言って食べさせてもらったものを……
これって絶対にファイナス長老とか食べてるよね?
エルフにだってこれは食べやすいし、何よりお米は色々と使える。
取り除いたぬかでぬか漬けも出来るし、レパートリーもすっごく増える。
カレーだって親子丼だってチャーハンだってオムライスだって作れる。
それにお米が有れば確か発酵させて麹も作れるから完璧な味噌や醤油も作れそうだ。
『リルとルラは米は初めてか?』
「えっと、食べるのは初めてですけど知ってはいました。やはり美味しいですね、お米」
「ねぇねぇお姉ちゃん、これでカレーライスとかチャーハンも出来るよね?」
食べ終わってお茶を飲んでいるとパキムさんがそう言って立ち上がる。
私もルラもにこにこしながら食後のお茶を飲んでいるとパキムさんは手をあげて言う。
『腹も膨れたし、俺はもう行く。無事エルフの村に戻れること祈っているよ』
シュルシュルと舌を出し入れしながらそう言ってこの場を去る。
私たちも手を振ってパキムさんとお別れをする。
「パキムさんもお元気で!」
「ばいば~いっ!!」
リザードマンってもっと怖い人かと思ってたけどパキムさんはそうではなかった。
この世界にはいろいろな種族がいる。
やっぱり異世界なんだなぁとか思いながら私たちはパキムさんの姿が見えなくなるまでその後姿を見送るのだった。
* * *
「さてと、それじゃぁ報酬のお米を引き取りに行きましょう」
散々脅したおかげでグエラギルドマスターは最終的にはお米十袋と金貨で報酬で手を打つと言うことで話がついていた。
精霊都市ユグリアと魔法学園ボヘーミャには田ウナギによる収穫減と言うことで何とか話を合わせる事となっていたようだ。
そしてその分を私たちの報酬に回すと言うことになって本日その準備が出来たと言う事でここへ来ていた。
「くれぐれもシェル様にはよろしくお伝えください」
「分かってますよ。今度会ったら言っておきます」
私はにこにことそう言いながら山積みになっているお米の袋を魔法のポーチにしまい込んで行く。
今までに結構いろいろなものは詰め込んでいたけど、とうとうお米まで手に入った。
そしてグエラさんにお願いして今後私たちにもお米がまわってくるように精霊都市ユグリア経由でお米を届けてもらう事にしていた。
あ、これはちゃんと代金を払っているので、むこう十年は半年に一度、六袋程送ってもらう事になっている。
後はイージム大陸にまで飛ばされたのに迎えも無しで自力で帰って来たのだからと言ってファイナス長老にお米をしっかりと回してもらうようにお願いすればいいわけだ。
「ぬふふふふふ、これで村の戻ってもお米が食べられる」
「やったねお姉ちゃん! あたしチャーハン食べたい!!」
エルフのお父さんやお母さんにも食べさせてあげよう。
きっと虜になるはずだ。
代金の金貨を一度に支払って契約書にサインしてその紙を引き渡す。
「しかし、エルフの方が米を欲しがるとは。そんなにいいものですか? ここスィーフでは食べるものもほとんどいないと言うのに」
「え? ほとんど食べないんですか??」
せっかくのお米の産地だと言うのにほとんど食べないだなんてもったいない!
私が驚きそう聞くとグエラさんは笑いながら言う。
「何せ米の料理はここでは豆と一緒に茹でるのが普通でしてな。精霊都市ユグリアで米だけ炊くと言うのをうちのギルドでもやってみましたが何と言うか、味も薄いですしねばねばするので人によっては嫌いますからね」
豆と一緒に煮るとか、ねばねばで味がしないとか……
それってお米の能力をも全然発揮できていないからでは?
私は思わずグエラさんに聞く。
「他にはここではどんな食べ方をしているんですか?」
「後は茹でたものをサラダに混ぜるくらいですかな? 葉物野菜だけでは物足りない時に使いますな」
確かにお米を使ったサラダもあるって聞いたけど、本当に使い方が下手というか何と言うか。
お米にはもっと美味しい使い方があると言うのに!!
「なんかもったいないですね、もっと他にもいろいろと美味しい食べ方があると言うのに」
「米にですか?」
半信半疑で私を見るグエラギルドマスター。
いいでしょう、そこまで疑うなら実証して見せましょう!!
私はもう一度ギルドの厨房を使わせてもらう事にするのだった。
* * * * *
「それでまたエルフの嬢ちゃんたちが何か作るってのかい?」
「はいまたお邪魔しますね」
そう言ってこの厨房の責任者であるナムニさんは腕組みしてお米を見ている。
「まあ、ギルドマスターからは話はもらっているから好きに使ってくれ。嬢ちゃんたちに教えてもらった田ウナギの炒め物は結構人気が出ていたからな。この米で何作るか俺も楽しみだよ」
そう言いながら笑っているナムニさん。
私は既に精米されたお米を確認して頷く。
「ちゃんとぬかも取られてすぐにでも使えるわね。それじゃ始めましょう!」
そう言って私は早速お米を洗う。
そしてざるに水を切ってしばしおいてから蒸し器を準備する。
「あれ? お姉ちゃんお米炊かないの??」
「うん、今回はお米の美味しさを十分に引き出す物を作ろうかなってね」
言いながらお米を蒸し始める。
ルラは私の横でその様子を見ている。
しばらくして蒸しあがったお米が蒸し上がる。
それをボウルに入れて伸ばし棒で少し潰す。
粘り気が出てきたそれを薄く引き伸ばしておく。
「何作るの?」
「んふふふ~、ルラもきっと好きになるものよ。 さてと」
私はそう言いながらピーマンや玉ねぎ、にんじんなどを一口サイズに切って、豚肉も細切りにして片栗粉とお酒をまぶしておく。
それらを温めておいた脂の中に入れて軽く素揚げにする。
よく油をきって鍋に戻し、塩、胡椒、ニンニクと生姜のみじん切りを入れて炒める。
手持ちも残り少なくなってきたけど魚醤もちょっと混ぜて味を調えたら溶き栗粉を入れて弱火でゆるめになるように煮ておく。
その間に薄く延ばしておいたお米を温めておいた油の中に入れて行く。
じゅわぁ~!!
途端にお米が油で揚げられるいい香りが漂う。
「ふわぁ、いい匂い!!」
「でしょ? さあ、きつね色にこんがりと揚がったらよく油をきってっと」
きつね色にこんがりと揚がったパリパリのおせんべいのようなお米をお皿に並べる。
熱々のそれに塩をかけてそのまま食べても美味しいけど、私は準備していたあんかけをそのパリパリのおこげのような物にかけて行く。
ぱきぱきぱきっ!
熱々のおこげは音をたてながらあんかけの水分を吸い始める。
「さあ出来た! おこげのあんかけよ!!」
あげたお米のいい香りにトロトロのあんかけがじゅわっと染み渡る。
もうその香りは厨房に充満していて他の料理人の人も手を止めこちらを見ている。
「おいしそう!! お姉ちゃん食べてもいい?」
「勿論、いただきましょう!!」
私はそう言って熱々のおこげにあんがかかっているそれをスプーンですくって口に運ぶ。
「はふはふ、ん~このパリパリがあんかけでしなッとなったばかりのがたまらないのよね~♡」
「はふはふ、ぱりぱり、おいひぃ!!」
私もルラもその熱々をはふはふ言いながら食べる。
お米の香ばしい香りが口の中に広がり、適度の塩気のあるとろとろのあんがたまらない。
野菜やお肉の旨味も相まってどんどん行けてしまう。
あ~、でもこれって、お肉でなく海鮮でもよかったかなぁ?
白菜やきくらげ入れても美味しいよね?
私たちがそれを食べているといつの間にか厨房の人たちが私たちの周りに来ている。
「な、なぁエルフの嬢ちゃんよ、それ俺らにも食わせてもらえないか?」
「もの凄く美味しそう、あの米が」
「油で揚げるなんて考えても見なかったよ」
まあこうなるとは思っていたので多めには作っておいた。
なので私はにっこりと言う。
「どうぞ、冷めないうちに食べてください」
私がそう言うとみんな一斉にスプーンを伸ばして来る。
そして口に運び一斉に驚きの声をあげる。
「なんだこれぇ!? 凄く香ばしい香りが口の中に!!」
「ぱりぱりとしなっとしたのがこれまた面白い食感だ!!」
「これ米だよな? こんなに旨いだなんて!!」
そしてナムニさんもこれを口にして驚く。
「あの米がこんなにうまくなるなんて……」
「でしょ? お米には無限の可能性がるんですよ。他にもお米を使った料理っていっぱいあるんですよ?」
私がそう言ってにっこりと言った時だった。
「ああ、いました、いました。リルさんルラさん精霊都市スィーフのファイナス市長から風のメッセンジャーが届いてますよ、すぐにこちらに来てください!!」
「はえ?」
グエラさんのその知らせに思わず変な声を出す私だったのだ。
面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。
誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。
*申し訳ございませんが、私生活がまだまだ忙しくなっておりましてしばらく不定期更新とさせていただきます。
読んでいただいている方にはご理解いただけますようお願い申し上げます。




