11-15お米確保
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
水上都市スィーフの特産物である米が田ウナギの被害によって大打撃を受けていた。
ここ水上都市スィーフはサージム大陸の中でも南方にあり、気候も穏やかで自然も豊かな場所である。
特産物のお米も隣の田んぼで田植えをしている横で稲の刈り入れが出来ると言う環境でもある。
なので面積さえ取れればその収穫量が格段に上がるのだが……
『どうやら田ウナギのようだな』
「あの、何でまだ田ウナギが?」
水田の土手を修復したのに水が抜けると言う問題があるそうだ。
調べてみると小型の田ウナギが泥を掘って穴をあけてしまっていたらしい。
せっかく水を止めて刈り入れをしようとしても隣から水が染み出て来て田んぼがまたぬかるむとか、田植えが終わったのに水が抜けてしまうとか結構問題となっている。
『田ウナギ自体はこうやって竹細工で出来た罠で簡単に捕まえられるので良いのだが、かなりの量がいて処分に困っている』
パキムさんはそう言って桶にいっぱいにいる田ウナギを見せてくれる。
小さいのはドジョウくらい、大きいのは正しくウナギくらいの大きさ。
そのニョロニョロしたのは色合いもあまりよい物ではないので見ていて気持ち悪い。
「お姉ちゃん、これって食べられないの?」
「いやあんた、こんな気持ち悪いの食べるつもり?」
『ふむ、田ウナギを食うか…… 確かにこいつらはその辺に捨てても強いのでなかなか死なずに雨などが降れば水辺へ自力で戻って行きまたあの大きさになるからな』
ルラの発言に嫌そうな顔をしているとパキムさんがそんな事を説明してくれる。
確かにそれだけ生命力が強いのならばその辺に放置しても生き延びてまたあのデカい田ウナギになって被害が出てしまうかもしれない。
ただ始末するだけもちょっとかわいそうでもったいないし……
「うーん、何か方法を考えてみましょう」
私はそう言って昔テレビで見た中国の料理を思い出すのだった。
* * * * *
「田ウナギをさばくですか? そもそも田ウナギとは食べられるものなのでしょうか?」
冒険者ギルドには厨房もあってここで食事もできる。
大きなギルドだと宿屋や鍛冶屋、道具屋の併設してある所もある。
ここスィーフの冒険者ギルドはまさにその大きなギルドだった。
「はい、ドジョウみたいなんですが今ちっこいのをさばけるでしょうか?」
ギルドには魔物の素材を採取する為に解体作業も請け負っている。
なのでドジョウくらいの田ウナギを見せながら聞いてみる。
「うーん、やった事は無いけど試してみるか」
そう言いながらまずはナイフで切ってみる。
やはりと言うか首を落として腹を裂き、内臓を取ってから開きにするのだけど、なんか背骨が簡単に取れそう?
何度かやっているうちに解体屋さんは竹のヘラを持ってくる。
「意外と身が柔らかいな、こっちの三十センチくらいになって来ると流石に簡単にはいかないけど、このちっこいのは意外と簡単に処理できるな」
言いながらへらで頭を落とし、お腹の内臓を引っ張り出し開いて背骨を取る。
身が柔らかいせいだろう、慣れて来ると結構なスピードで出来る様だ。
それは遠い昔テレビで見たアジアの料理特集のそれと同じような感じだった。
「しっかし、こんな黒っぽい魚食えるのかねぇ?」
「うーん料理次第らしいですけどね、食べられはするようですね」
身が少し黒っぽいちょっと見た目があれだけど、確かに前にテレビで見たのと同じ感じだった。
私はそれを受け取り解体代金を払ってから今度は厨房へと向かう。
厨房へはギルドマスターから話が行っていて、この田ウナギたちを調理させてもらえることになっている。
『田ウナギは食べた事がないが、美味いのだろうか?』
「保証は出来ませんけど、やってみましょう!」
私はそう言いながらニンニク、生姜、砂糖、エルフ豆の塩漬け、エシャレット、ビネガー、お酒、唐辛子と片栗粉などの食材を取り出す。
そしてテレビで見たレシピを思い出しながらまずは田ウナギの開きをさっと水で洗ってお酒と片栗粉をまぶしておく。
鍋に油を多めに敷いて細かく切ったニンニクを入れる。
じゅぅ~っ!
強めに熱しておいたのですぐにニンニクのいい香りが立ち込める。
唐辛子と生姜も入れてさらに香りを出してゆく。
「ふわぁ~、中華料理の良い匂い~」
横で見ているルラは私が作る料理を覗き込みながらそう言っている。
確かにニンニク、生姜、唐辛子を油でい炒めるとそんな香りになるもんね。
そこへ先ほどの田ウナギの開きをお酒と片栗粉をまぶしておいていたモノを入れてさっと火を通す。
火が通ったら更にお酒を少し入れ、砂糖、エルフ豆の塩漬け、お酢、細かく切ったエシャレット入れてしばし煮込む。
ぐつぐつと煮焼くようにして暫し、味が染み込み始めたら水溶きの片栗粉を垂らしてとろみをつけさせる。
「よっし、そろそろ良いかな?」
全体に味が良く絡んだらお皿に乗せて更に細かく切ったエシャレットを少量振りかける。
「はい、出来ました『田ウナギの中華風炒め』!」
おおぉ~!
パチパチパチ
ルラとパキムさんは出来あがったそれに拍手する。
まあ、昔見たあやふやなレシピだったけど、基本は忠実に守っているから大丈夫でしょう。
私は早速みんなにフォークを手渡す。
二人ともそれをフォークで刺しまじまじと見る。
「何か黒っぽくて変な感じだけどいい匂いだね~」
『どれどれ……』
ぱくっ!
「んッ!? これ美味しいかも!!」
『ほう、確かに。ニンニクの香りが強めだが肉は柔らかく臭みも消えているので食べやすいぞ!!』
どうやらうまく行ったみたい。
私もフォークでそれを刺して口に運ぶ。
ぱくっ!
「んひゅっ、これは確かに見た目以上に行けるかも!」
何と言うか、ニンニクを多めに入れろとか言っていたような気がしていたのでその通りにして正解だったみたい。
多少は泥臭いかと思っていたけどニンニクと生姜のお陰で泥臭さは感じられない。
ドジョウくらいの小ぶりなものを選んで使ったので一口で食べらるサイズ、そしてその身がやたらと柔らかい。
味付けも中華風なのでちょっと脂っこいけど逆にそれが良いかもしれない。
何と言うか、ぱさぱさの回鍋肉より少し油の多い方がおいしい感じと同じかな?
甘みと軽い酸っぱさと辛味がエルフ豆の塩漬け、豆板醤のようになっているモノでうまくまとまっている。
「ああ、これで白米が有ればなぁ~」
「そうだね、これご飯欲しくなるね~」
私とルラがそんな事言っていたら厨房の人が声をかけて来る。
「米が喰いたいのかい? ちょうど今炊けたのがあるけどいるかい?」
「え”っ!? お米あるんですか!!!?」
「食べる食べる!!」
思わず厨房の人にそう言って立ち上がる。
するとその人は笑いながら言う。
「その代わりそれ味見させてくれないか? なんかさっきからいい匂いがしてて気になっていたんだよ」
「はい、勿論いいですよ!」
こうして私たちは念願の白米を食べる事が出来るのだった。
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