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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第三章:新しい生活
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3-8お買い物

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


ぞくっ!

ううぅ、なんか姉さんの事言われている気がする……(シャル談)


「ふおぉおおおおおぉぉぉぉっ!」



 私はその品揃えに驚愕していた。

 だってここには今まで見た事が無いような食材のパラダイスがあったからだ!


「へぇ~、凄いねお姉ちゃん。あ、魚が水槽にいっぱいいる~。まるで水族館みたい~」


 ルラはそう言ってガラスの水槽に沢山泳いでいる魚たちを見る。

 そして私はそれを見て驚く。



 だって全部海の魚なんだもん!!



「あら? エルフのお客様とは珍しい。いらっしゃいませ、お客様何をお探しでしょうか?」


 女性でスーツ姿の店員さんがいつの間にか私たちの後ろに立っていた。



 びくっ!



 まったく気配が無いのにいきなり後ろから声がかかるから驚いてしまった。


「あ、あの、パスタが欲しんですけど……」


「パスタですか? それでしたらこちらです。乾燥物の取り扱いエリアにございますのでご案内いたします」


 そう言ってスーツ姿の店員さんは足音を立てずにすいすいと先へ進む。

 慌ててその後を追うけど、一体この人って何者?


 

 私たちエルフは森の中で生活しているから、聴覚もとても敏感だった。


 なのに物音一つ立てないで私たちの後ろにいきなり現れたり、今もハイヒールなのに足音一つ立てないで私たちを売り場まで案内してくれている。

 それに後ろにいる私たちが遅れると見もしないのにちゃんと歩く速さを遅くしてくれる。



「こちらになります。パスタも各種取り揃えておりますのでどうぞごゆっくりご覧ください。また何か有りましたら近くの者にお声がけしてください。それでは私はこれにて」


 ご丁寧に私たちにお辞儀をしてからすっと姿を消す。



「え”っ!? き、消えたぁっ!?」


「お、お姉ちゃんまさか!?」


「違う違う! 私何もしてないもん!!」



 案内をしてくれたスーツ姿の女性はまるで影の様にすっと消えてしまった。

 勿論私はチートスキル「消し去る」なんて使っていない。

 なのにまるで忍者か何かのようにいきなり目の前から消えるだなんて!!


 思わず慌てふためく私たち。



「お客様、どうかされましたか?」


 売り場の近くにいた店員さんが私たちに声をかけてくれる。



「き、消えちゃった! さっきここにいたお姉さんが目の前で消えちゃった!!」



「ああ、それでしたらご安心くださいませ。レッドゲイル支店の支店長です。多忙な方なので他の事に出向いたのでしょう」


「支店長!?」



 なんなのよそれっ!?

 支店長は忍者か何かなの!?


 なんなのよこのシーナ商会って!!!?



 驚きに肩で息をついていると店員さんが私たちに訪ねる。


「お客様、何かお入りなのでしょうか? 必要であればご案内いたしますが」


「あ、えっと、そう、そうだ、パスタが欲しいのでした」


 あまりの事に危うく目的を忘れる所だった。

 すると店員さんは瓶に詰まったパスタを取り出してくれる。


「パスタは各種取り揃えておりますが、おすすめは早ゆで出来るこの一と六ミリ径がよろしいかと」


「太さまであるんですか!?」


 驚いた。

 パスタは用途によってその形状や太さが違う。

 それがここでは各種取り揃えられていた。


「お客様はどのようなものをお探しでしょうか?」


「え、えっと、とりあえずさっきのを五人前と、もしかして平たいパスタもありますか?」


「はい、ございます。ただ、そちらは乾燥パスタでは無く半生状態になりますが宜しいでしょうか?」



 生パスタ来たぁーっ!


 まじ?

 生パスタまであるの!?

 もう、それをクリームであさりとか入れちゃって食べたら最高ぉ!



「そ、それもください! とりあえず五人前!」


「ありがとうございます。ご一緒にトマトピューレなどはいかがでしょうか?」



 何っ!?

 トマトピューレまであるの!?



 にこにこしている店員さんにそれを出してもらうと瓶詰の真っ赤なトマトピューレだった。

 そして聞いてみるとちゃんと塩が入っていて煮込まれているから涼しい所に保管すればしばらくは大丈夫だとか。


 なのでまさかと思って乾燥バジルや乾燥チーズのパルメザンなんかもあるかどうか聞いてみるとあったよ食材!



「お客様、エルフの方にしてはお詳しいですね? まるでオーナーのようです」


「オーナーの人ってまさかエルフですか?」


「はい、我がシーナ商会のカリスマ、シェル様がオーナーですよ」



「はいっ!?」



 ちょっと、待って、今「シェル」って言わなかった?

 エルフで「シェル」の名前ってどう考えてもあの「シェル」さんしか思いつかない。



「あ、あの、つかぬことを伺いますが、もしかしてそのシェルさんって『女神の伴侶』のシェルさんですか……」


「はぁいぃ、勿論そのシェル様ですぅ!!」


 店員さんはそれはそれは素晴らしい笑顔でそう言う。



 うぅおおぉぉぉぃぃいいいいぃぃぃっ!!!! 


 またシェルさんかーいぃっ!!  


 

 なんなのあの人!?

 『女神の伴侶』とかって恐れられたり、こんな世界規模の商会のオーナーだったり、何者なのよ!? 

 そ、それにエルハイミさんとなんかものすごく仲良くて、こ、子供作るとかなんとか……


 分からない。

 あの人が一体何者なのか分からない……



 私は何故かものすごく疲れてもうそれ以上聞く気になれなくなり、パスタとトマトピューレ、それにいくつかのハーブを買い入れ代金を払ってお店を出る。

 もの凄く疲れた感じで。



「どうしたのお姉ちゃん?」


 荷物の紙袋を半分持ってくれているルラがお店を出ながら私に聞いてくる。

 私は大きなため息を吐きながらルラに答える。


「うん、シェルさんがらみがとんでもない事って再確認したの。まさかシーナ商会のオーナーだったなんて……」


「シーナ商会凄かったよね? いろいろ売っていて~」


 ルラは楽しそうにそう言うけど、シェルさんが絡んでいると知るとなんか複雑な気持ちになって来る。

 あの支店長だってほんと忍者か何かみたいだし、一体どうやってこの内陸に海の海産物運んでいるのだろう?


 ……やめよう、シェルさんだもの。

 考えるだけ無駄だ。


 私はシャルさんを思い出しぽつりと言う。


「シャルさん、シャルさんの言う通りですね……」




 昼下がりの大通りを歩きながら私は空にシャルさんの面影を映し出すのだった。



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