11-10そこに居たモノ
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
はぁ~、せっかくここからの話が盛り上がる所なのに……(ボビー談)
田ウナギ女伝説。
その昔、まだ水上都市スィーフが小さな町だった頃、あの祠が有った場所はリザードマン領で湿地帯だったそうだ。
その頃はリザードマンは古い女神様の教えに乗っ取り人族との交流が少なかった。
しかしそれでも全く人との交流が無かった訳では無く、わずかながらも物々交換などが行われていた。
そんな中、丁度あの祠のあたりに住んでいた美しい女性がいた。
彼女は湿地帯で採れる薬草や山菜、藻蟹などを取って生計を立てていた。
そんな彼女がリザードマンと恋に落ちた。
当然の事リザードマン族はそれを認めなかった。
そして人里離れた彼女に対して人間族も特に気にも留めていなかった。
彼女とそのリザードマンはリザードマンの部族の反対を押し切ってどこか遠くへ駆け落ちしようとしていた。
だが、駆け落ちをしようとしたその前の晩に悲劇は起こった。
ちょうどこの湿地帯に田ウナギが侵入していてその女性を見てひとめぼれをしたそうだ。
田ウナギは彼女が寝静まるの待ってその晩彼女の家に押し入り、そして……
「うわーっ! うわーっ!! ルラにはまだ早い!! ちょっとボビーさんお話止めてっ! ちょっとタンマ―っ!!」
ボビーさんの語るその「田ウナギ女の伝説」が思い切り大人の話になりそうなので話の途中で私は大声を上げてストップさせる。
ぜぇぜぇ、何でいきなりそんなアダルティーなお話になるのよ!!
肩で息を切らせている私にボビーさんやギルドマスターのグエラさんは不思議そうな顔をする。
そんな二人に私は顔を少し赤くしながら言う。
「んんっ、その晩の話は飛ばしてもらっていいですか? なんか色々と引っ掛かりそうなので…… 神の見えぬ手で『めっ!』されそうな描写臭がぷんぷんするので!!」
「うむ、残念ですなここからが盛り上がる所なのですが……」
「物語に濡れ場は必須ですぞリル殿?」
もの凄く残念そうにするボビーさんとグエラギルドマスター。
まったく、何がそんなに楽しいのやら……
「なんでその晩お話は飛ばすの?」
『ふむ、察するに交尾が行われていたのだよな?』
首を傾げ不思議そうにするルラ。
その横で思い切り暴露するパキムさん。
「そこっ! ルラに余計な事教えない!! あまり余計な事教えるとその辺の記憶を『消し去る』しますよ!!」
私の剣幕にパキムさんは出し入れする舌をピタッと止めて『う、うむ』とか言っている。
まったく、ルラの教育上よろしくない。
「こうび? お姉ちゃん何それ?」
「だぁーっ! いいから忘れなさい! まだルラには早いの!!」
それでもルラは気になったらしく首をかしげながら聞いてくる。
「まあいいでしょう。とにかくその晩に田ウナギのせいでその女は身ごもってしまうのです。そして翌朝やって来たリザードマンは復讐を胸にその田ウナギを追うのですがそのまま帰らぬ人となり、その女は泣く泣く子供を産むのですがそれは田うなぎと人が入り混じった化け物になったそうです。そしてその女は出産と同時に命を落とし以来そこには残されたその子供が残ったそうなのですが……」
そう言ってボビーさんは一冊の本を取り出す。
「ここから先の伝承はこの本のページが破られていて話が途切れます。しかしその伝説はあの辺の人々に語り継がれていたらしいのですが何せ古い話、その後の物語は誰も知らないと言うことになってしまっております」
ボビーさんはそこまで話すと大きく息を吐いてお茶を口に運びながらため息をつく。
物語自体が完全には現在までに伝えられなくて、地元の人もうろ覚えでそんなような話があったくらいでいたらしい。
だからあの祠の下から出てきた大きな田ウナギが何なんなのかは良く分かっていない。
「うーん原因は分からずじまいですか。しかし何らかの関係はありそうですね……」
『確かにな。俺もそんな話は初めて聞いたよ』
リザードマンであるパキムさんもよく知らない話らしい。
しかしあの祠から大きな田ウナギが出てきたのだ、間違いなく関係はあるだろう。
「とにかく、まずは明日の朝あの祠の調査をしましょう。話はそれからです。街には被害は無いようですが、一刻も早く原因を突き止めて田んぼを守らないと、私たちのお米が!!」
「お姉ちゃん、やる気だねえ~」
『ふむ、米がそんなに欲しい物なのか?』
ぐっとこぶしを握る私にルラもパキムさんも私を見るけど、何が何でもお米をゲットする為に頑張らなくては。
私は祠のあるあの田んぼの方を見ながらそう誓うのだった。
* * *
翌朝早速あの祠の方へ行ってみると何やら大きな丘が出来あがっている?
「何あれ…… って、あれ全部田ウナギ!?」
それは丘ではなく山盛りに絡み合った田ウナギたちであった。
あの祠を中心に固まっているようで、時折うねうねとうごめく。
一体どうしたんだろう?
「お姉ちゃん、あれ見て!」
ルラにそう言われ指さされたところを見ると……
「なんじゃこりゃぁッ!!」
私の驚きの声がこだまするのだった。
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