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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十一章:南の大陸
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11-7水上都市スィーフ

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


ついたぁ~(ルラ談)


 水上都市スィーフ。


 ここはイザンカ王国のブルーゲイルやレッドゲイル、ジマの国やドドス共和国に並ぶ古くからある街。


 湿地帯の少ない陸地を中心に建物の土台を高くした建築物が多く、沼の近くや湿地の中にあるその姿はまるで水上に建てられたように見える。

 なので水上都市とも呼ばれている。



『さあ着いたぞ、ここが水上都市スィーフだ』



 パキムさんはそう言って見えて来た街を指さす。

 今までのイージム大陸とかと違って街全体が城壁に囲まれている訳では無かった。



「へぇ~、周りに大きな壁が無いんだねぇ~」


「ほんとだ、あ、でもあっちに見えるお城みたいなのにはちゃんと城壁があるんだ」


 街の中央部に大きなお城が立っていた。

 流石にそれは城壁に囲まれていて、国家の象徴となるような美しい青味がかった屋根が印象的なお城だった。



『人族が作るものはよくもああ高い物が作れるものだな。我々リザードマンは高床式の家くらいしか作らんのにな』


 パキムさんはシュルシュルと舌を出し入れしてため息でもついている様だった。


「そう言えばリザードマンの集落も近くにあるって聞きましたが?」


『うむ、ここよりもう少し西の完全な湿地帯が我らが領土。まあ今はスィーフとも仲が良くなって交流が増え、中にはここへ住んでいるリザードマンもいるがな』


 そう言ってパキムさんはなんか遠くを見るようだった。


「ふーん、じゃあ水上都市にはパキムさんの仲間がいるの?」


 そんな事にはお構いなしにルラはパキムさんにそう聞く。


『ああ、いるぞ。もっとも彼らは人族の生活に慣れてしまってずいぶんと変わってしまったがな……』


 パキムさんはやはり舌をシュルシュルと出し入れしてため息をついている様だった。



『まあいい。まずは水上都市の冒険者ギルドに行くぞ。リルとルラと言う応援が来た事を伝えなければな』


「そうですね、冒険者ギルドがあれば風のメッセンジャーで伝言サービスも出来ますよね? 精霊都市のファイナス長老に連絡入れなきゃなんで」



 とにもかくにもまずは冒険者ギルドへ向かう事となった。

 私たちはパキムさんの案内で城壁の無い街へと足を踏み入れるのだった。



 * * * * *



「このエルフの嬢ちゃんたちが応援だって? いくら精霊魔法が使えるからって、こんな嬢ちゃんたちが頼りになるのかねぇ?」



 冒険者ギルドに行って受付嬢に話をしたらその上司とか言うおじさんが出て来て私たちを見るなりそう言う。



『ふむ、ボビーがそう思うのも無理はないだろう。見た通りエルフの中でもまだかなり若いからな。しかしその実力は相当なモノだ。リル、あの手紙を』


「あ、はい、えっとツエマの冒険者ギルドとユエバの冒険者ギルドの手紙なんですけど……」


 私はパキムさんに言われてあの手紙を出す。

 それをボビーと呼ばれたおじさんは受け取り渋々と中を見る。


 そしてしばし……



「いや、これが本当なら助かるんだが。どうも嬢ちゃんたちを見ているとな……」


『うむ、しかし実力はこの俺が保証する、なにせこの二人はあの【女神の伴侶シェル】様のお知り合いなのだからな』



 がたっ!



 パキムさんがそう言うとボビーさんは思わず椅子から立ち上がる。

 そして目を見開き額に汗をにじませる。



「ま、まさかシェル様のお知り合いだとは! これは失礼をしました、どうぞ街を消し去るのだけはご勘弁を!!」



 いや、何それ?

 私たちがシェルさんと知り合いなだけで一体どう言う扱いよ!!



「あの、そんな事しませんから落ち着いてください。シェルさんとは顔見知りですけど私シェルさんじゃないですからそんな事しませんてば」


「ほ、本当ですな? 頼みますよ、もう城を壊されるのこりごりです。あ、女神様にもどうぞよろしくお願い致します。うちの国王も深く、凄く反省してますんで……」



 一体過去に何があったと言うのだろう?

 もの凄く気になるけどこれ以上シェルさんと一緒にはされたくない。

 

 確かに面倒事を避けるのにシェルさんの名前を出すのは便利かもしれないけど、同等に扱われるのは流石に……


 ボビーさんはそう言って額の汗をぬぐう。

 そして少し失礼と言ってこの場を離れた。



「お姉ちゃんて街消さないよね?」


「する訳無いじゃない! ルラ、あんたまで私をシェルさん扱いする気?」


 いきなりこの子は……

 確かに私のチートスキル「消し去る」を最大に使ったら行けるような気もするけど、あまり力を使い過ぎると流石に色々と消耗するし、もともとそんな事をする気はさらさら無い。



『ふむ、やはりリルたちの力は異常なのか?』


「いや、その、異常と言うか何と言うか…… 個性? ですかね……」


 まさか本当の事を言うわけにはいかない。

 コクさんの話では私の力は女神であるエルハイミさんと同じ所から来ているらしい。

 それに「あのお方」と呼ばれる駄女神もそれは否定していないのでかなりの力なのだろう。


 私はそう答えて目線をパキムさんから外す。

 するといきなり声をかけられた。



「お待たせしました、私はここスィーフのギルドマスターをしておりますグエラと申します」



 見れば六十歳くらいのおじさん。

 後ろにボビーさんがコソコソ隠れるかのようについて来ている。



『おお、ギルドマスター久しぶりだ。この二人が心強い助っ人だ』


 パキムさんは嬉しそうに舌をシュルシュルと出し入れする。

 グエラと名乗るったおじさんは私たちの前まで来て握手を求める。



「話は聞きました、それと手紙も読みました。あなた方の活躍は他のギルドマスターのお墨付き、是非とも魔物退治にご協力ください」


「は、はぁ。えっと、私はリル、こっちは双子の妹のルラです」


「こんにちわ~」


 握手をしてルラも紹介するとグエラさんはルラとも握手してもみ手でもしそうな感じで話始める。



「シェル様とお知り合いとの事ですが、シェル様はこちらにはおいでに無いのですかな? それと女神様も」


「シェルさんはいませんよ。エルハぃ…… 女神様も」


 女神様って言ってもエルハイミさんはあの姿だと私たちと同じくらいの年頃の女の子にしか見えない。

 女神様の時はエルハイミさんの大人バージョンで黒龍のコクさんそっくりなナイスバデーの女性になっているはず。

 なので毎回「女神様」って言われてもピンとこないのよねぇ~。


   

「そうですか、よかった…… あ、いえ、これはこっちの話で! ご、ごほん。それで状況なのですがこのスィーフの特産物である稲の田んぼに田ウナギの魔物が多発しまして、このままでは今年の精霊都市や魔法学園に納入する分の米の確保も難しく成りそうでしてな」


「ちょっと待ってください、精霊都市にもお米を納品していたんですか!?」


 意外な名前が出て来て驚いた。

 精霊都市ユグリアはファイナス長老が市長を務める街。

 そこにお米が納品されていたって!?


「まさか、ファイナス長老やロンバさんたちってお米をユグリアで食べていたんじゃ……」 


 ありうる。

 なんだかんだ言ってファイナス長老もしたたかな所はある。


 私がぐっとこぶしを握ってグエラギルドマスターに言う。



「田ウナギやっつけますから私たちにもお米分けてください!!」




 私のその鬼気迫る叫びに何故かみんなビビるのだった。



面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


*申し訳ございませんが、私生活がまだまだ忙しくなっておりまして土、日曜日の更新はしばらく休止させていただきます。

読んでいただいている方にはご理解いただけますようお願い申し上げます。


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― 新着の感想 ―
[一言] >「まさか、ファイナス長老やロンバさんたちってお米をユグリアで食べていたんじゃ……」  >ありうる。 >なんだかんだ言ってファイナス長老もしたたかな所はある。 ファイナス(バレた!?) …
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