11-6同行者
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
水芭蕉って何だっけ?(ルラ談)
なんだかんだ言ってリザードマンのパキムさんは私たちと一緒に水上都市スィーフに行く事となった。
『そうか、リルとルラはあのシェル様のお知り合いだったのか』
「いや、知り合いではありますけど……」
そのシェルさんのお陰でこれだけ苦労していると言いたいのだけど、あの人が故意にしている訳では無かったので強く言えない。
お父さんやお母さん、シャルさんまでシェルさんがエルフの村に帰って来るとトラブルがあると警戒する気持ちがよく分かる。
「でもパキムさん良かったの? ツエマの町で冒険者募集しなくて」
『なに、リルやルラがいてくれればすぐにでもあの田ウナギどもを退治できる。期待しているぞ。がはははははははっ』
そう言って大笑いする。
うーん、悪い人じゃないんだけどちょっとおおざっぱと言うか。
ちなみに私とルラはオオトカゲの背に乗っているけどパキムさんは歩いている。
パキムさんの話だとそろそろ湿地帯に完全い入るので常に地面がぬかるんでいるので普通の旅人は苦労するらしい。
オオトカゲやリザードマンは足とかに水かきがあってそれのお陰でぬかるんでいてもしっかりと歩けるそうな。
事実もう地面はぬかるみ始めているけどパキムさんの歩く速度は変わらない。
「そう言えばウナギの魔物って言ってましたけどパキムさん『田ウナギ』って言ってましたよね?」
『そうだ、奴等は『田ウナギ』と呼ばれている魔物だ。悪食でなんでも食べる。本来はそれ程数は多くないのだがここ最近急に増えて来ていてな、奴らが田んぼにいると稲を倒して育たなくなってしまうのだよ』
うーん、ウナギってあの黒っぽくてにょろにょろしたやつよね?
どうもその田ウナギってのがピンとこない。
「そんなにいるんだ~。 でもなんで急に増えたんだろうね?」
『それは分からない。しかし早い所奴等を始末しないと今年の収穫に影響が出るからな』
そう言ってシュルシュルと舌を出し入れする。
私はぐっとこぶしを握っている。
「任せてください、お米の為なら何でもしますから!!」
『ふむ、リルのあの消し去る力、ルラのあの怪力があれば早々に奴等を始末できるだろう。期待しているぞ』
「任せて! あたしは最強だもん!!」
「お米の為です、私だってやりますよ!!」
パキムさんのそれに私たちは強く応えるのだった。
* * * * *
湿地帯に入って数日。
完全に道らしきものは無くなって、草が生い茂るぬかるみのある場所にいた。
「なんか尾瀬の湿地帯みたいね。草はあるけど木々がほとんどない」
「結構水があるね、なんか田んぼみたい」
『この辺は特に水が多い場所だからな、不慣れなモノには歩く事さえ難しいだろう』
そう言うパキムさんは相変わらず普通に歩いている。
オオトカゲも今までと変わらず動いているので実際にはどれだけ大変だか私たちには分からない。
そんな事を思いながら風景を見ているとパキムさんがふいに止まる。
『むっ? これは……』
オオトカゲも止まってパキムさんが見ている方向に頭を向ける。
一致何があったのか気になってパキムさんに聞いてみる。
「どうしたんですか?」
『うむ、どうやら田ウナギのようだな。あそこだ』
パキムさんの言う方を見るとなんか小高い丘がある。
田ウナギってウナギっぽいらしいからあんな水の無い所にいるものだろうか?
「お姉ちゃん、あれ動いていない?」
同じくそれを見ていたルラが指さしながら言う。
私たちエルフは視力も良いので遠くまでよく見えるけど、一点でなく全体をよく見ると確かに動いている?
『ふむ、来るか!』
そう言いながらパキムさんは鱗を逆立て爪を伸ばし身構える。
「え? ええぇっ!?」
パキムさんが身構えてすぐにその小高い丘はこちらに向かって動き出す。
そしてよく見ると丘ではなく緑とか茶色とかの迷彩色のような皮膚の何か巨大なモノだった。
それは近くまで来るとのっそりと鎌首をもたげる。
「うわぁ~、なんか水龍みたい~」
「何呑気な事言ってるのよ! うわっ、なんかお腹が黄色と黒で気持ち悪い色!!」
鎌首を持ち上げたのは確かにウナギっぽいやつだった。
しかしその配色が何とも気持ち悪い。
今まで鰻と言う漠然としたものを想像していた私には見た目にとても気持ち悪い物に映っていた。
『こんな所にまで田ウナギがいるとはな! 覚悟するがいい!!』
そう言ってパキムさんは田ウナギに飛び掛かる。
ぱくっ!
しかし飛び掛かったパキムさんを田ウナギはあっさりと食べてしまう。
「え”っ!?」
「あ~、パキムさん食べられちゃったよ?」
あまりにも一瞬だったので思わず呆然としてしまう……
「ぢゃないっ! パキムさん!! ルラ、助けるわよ!!」
「うん、あたしは『最強』!!」
ルラはそう叫びながらオオトカゲの上から飛び立つ。
そして田ウナギのあの気持ち悪いお腹にその拳を打ち込む。
ずにゅっ!
「うわっ、ぬめぬめっ!!」
殴ったルラはそのぬめぬめのせいで完全に田ウナギを殴り飛ばす事は出来なかった様だ。
湿地に着地して殴った手を嫌そうに振る。
「お姉ちゃんこいつやだぁ~ぬめぬめ、ぐちょぐちょだよぉ~。こんなのにやられたらあたしもぬっちょんぬっちょんのぐちょぐちょになっちゃうよぉ~」
「言い方っ! と、それ所じゃないわね」
流石に完全にノーダメージでは無かったようで田ウナギは口を開きそこからパキムさんが上半身を抜け出す。
『ぶはっ! 死ぬかと思ったぞ!!』
「いや、そのままじゃまた食べられちゃいますってば! こうなったらあのぬめぬめを『消し去る』!!」
私は手をかざし田ウナギのあのぬめぬめを消し去る。
「よっし、今度こそ! あたしは『最強』!!」
ルラはもう一度飛び上がり田ウナギに拳をぶち込む。
ばごっ!
『ぐぎゅるぅ!』
『ぐわぁ~っ!』
田ウナギはルラに殴られて吹き飛ばされるけど咥えられていたパキムさんはその勢いで口から離れてそのまま湿地に落ちて来る。
どばしゃっ!
見事に頭から落ちて突き刺さるパキムさん。
田ウナギはルラに殴られて向こうでぐったりとしている。
どうやら死んだようだ。
「ふう、お姉ちゃんこのぬめぬめと泥んこ消し去ってよ~ あたし汚されちゃったよ~」
「いや、だから言い方ぁっ!」
この子狙って言ってるんじゃないでしょうね?
そんな事を思いながらオオトカゲをパキムさんの所まで行かせると心得たようにオオトカゲはパキムさんを咥えて引っこ抜く。
ずぼっ!
『ぶあはっ! ほんとに死ぬかと思った!!』
「いやいや、パキムさんあれ何なんですか!? あれが田ウナギとでもいうんですか!?」
『む? そうだが。あれはまだ小さい方だがな』
あれで小さいと!?
じゃあ田んぼにいるのはあれよりデカいのがゴロゴロいるって言うの!?
私は思わず動かなくなった田ウナギをもう一度見るのだった。
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