11-3出発準備
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
えーと、後買うものはっと(リル談)
「ん~っと、これとこれも欲しいかな?」
私とルラは現在これからの旅をするのに必要なものを買い込んでいる。
そしてこの後冒険者ギルドに行って、風のメッセンジャーで伝言をお願いするつもり。
ついでに冒険者ギルドでオオトカゲが手に入ると聞いたのでそちらも調達するつもり。
「お姉ちゃん、これも買おうよ!」
ルラはそう言いながら可愛らしい小瓶を持ち上げる。
なんか女の子が好みそうな格好のガラスの小瓶。
可愛らしい物を欲しがるとは、ルラもそう言うものに目覚めたかな??
「いいけど、何に使うの?」
「えへへへへ~、村に戻ったらまた美味しい物食べられないじゃない? だからシャルさんに蜂蜜内緒で食べさせてもらう時にこれにも入れてもらって何時でも蜂蜜食べられるようにしようと思って!」
うーん、まだ食い気が先だったか。
見た目はかわいらしい小瓶だけどこれは私も欲しいくらいに可愛い。
なので二つ買う事にする。
「お姉ちゃんも蜂蜜入れるの?」
「いや、単にかわいいだけだし蜂蜜だったら外の世界でも買い貯められるでしょ?」
「あっ!」
まあ、村に戻ったら当分外の世界になんか出られないだろうから元の生活にもまた慣れなければいけない。
そう考えると渡りのエルフたちが村に帰りたがらない理由も理解できる。
「とは言え、最低でも二百歳かぁ…… 後どれだけ時間がかかるのやら」
この一年半以上の時は私たちに時間の流れと言うモノを意識させてくれた。
エルフの村にいた十五年間は正直に言えば夢の中にいた様な感じさえする。
いつものご飯、いつもの泉、いつもの草むら……
ほとんど毎日会っているシャルさんだってずっと同じお隣のお姉さんって感じでそれがずっと続くのが当たり前。
そしてその先を考える必要すらない日常。
うーん、エルフって本当によくこんな生活を我慢出来るモンだ。
いや、知らないからできるのかもしれない。
外の世界は確かに過酷だった。
もしも私たちにチートスキルが無かったら遠の昔に死んでいる。
本来はそれがこの世界の当たり前。
「一応、感謝はしなきゃかなあの駄女神に……」
私はそんなことをぼんやり思いながら買い物をするのだった。
* * * * *
「ほう、イージム大陸のユエバのギルドマスターからの手紙か。なるほど、優秀な冒険者なのだな?」
「いえ、冒険者登録はしていないので冒険者って訳じゃないですけど……」
一体カーネルギルドマスターは何を書いていたんだろう?
色々と便宜をはかってもらえるように手紙を持たされたけど、アスラックの港町のように無理矢理クエストをよこされるのは困る。
ハウザーギルド長なんか強引だったもんなぁ。
「そうなのか? ジマの国でもユエバの町でも大活躍したらしいじゃないか?」
「嫌ですからね。私たちは水上都市スィーフに行くんですからね」
事前にそうくぎを刺す。
ここはツエマの港町にある冒険者ギルド。
一応有料で風のメッセンジャーによる伝言サービスもあるのでそれを利用すると同時に身分証明替わりであの手紙を出したらここのギルド長が是非にも会いたいとか言って来た。
この流れ、先に断っておかないとまずい流れだ。
「そうか、残念だったな…… 最近はどう言う訳か魔物が活性化して人手が欲しい所だったんだがなぁ」
「私たちは一刻も早く迷いの森のエルフの村に帰りたいんです。残念ですが他を当たってください」
私がそう言うとツエマのギルドマスターは残念そうな顔をする。
「そうか、ならば仕方ないな…… 最近田んぼにウナギの魔獣が出て困っていると言う話があってな、水上都市スィーフでこちらまで応援の要請が来ていたんだがな……」
ん?
田んぼ??
「あの、ちょっと良いですか? いま『田んぼ』って言いませんでしたか?」
「ん? ああ、そう言ったがそれが何か?」
「畑」で無くはっきりと「田んぼ」と言った。
この世界では稲作をしているとは聞いた事が無かったから「田んぼ」などと言う言葉が出てくるのは意外だった。
「まさかお米でも作っている訳でもあるまいし、『田んぼ』で何作ってるのかな?」
「いや、『田んぼ』と言ったら『米』に決まっているじゃないか?」
がたっ!
「ちょ、とっと待ってください、いま『米』って言いました? あの小麦みたいな感じでもっと白くなるつぶつぶの穀物」
「ああ、それだそれ。この辺だとあまり作っていないが水上都市スィーフでは特産物で『米』を作っているぞ?」
それを聞いた私は思わず立ち上がってこぶしを握ってしまう。
「お姉ちゃん?」
「ルラ、お米よお米! やっぱりこの世界にもお米があったんだ!!」
思わずルラの手を取り喜ぶ私。
なんたってお米よ!
白米よ!!
あの白くてつやつやのご飯がこの世界でも手に入る、食べられる!!
「その話、詳しく聞かせてもらおうじゃありませんか!!」
私のその勢いに思わずたじろぐギルドマスターであったのだった。
* * * * *
「それではお世話になりました!」
「あ、ああぁ……」
ツエマの冒険者ギルドマスターに挨拶して私たちは購入したオオトカゲに乗っている。
このオオトカゲはかなり人間に慣れているので何もしなくても水上都市スィーフを目指してくれるらしい。
私はツエマの冒険者ギルドでもらった紹介状を握りしめ早速出発する。
「さあ行くわよ水上都市スィーフ! そして田んぼを荒らすウナギの魔獣を駆除してお米をもらうのよ!!」
「お姉ちゃん、なんかやる気だね~」
「当り前よ、お米よお米! 白米は勿論、チャーハンだってカレーだってオムライスだって作れるわよ!!」
「おおぉっ!」
オオトカゲの上で二人して喜びながらあれも食べたいこれも食べたいと話し合う。
私たちは水上都市スィーフへ急ぎ向かうのだった。
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