11-1港町ツエマ
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
あ~、もうしつこぃいっ!!(ルラ談)
『のう、我の嫁にならんか? さすれば大海の秘宝をおぬしにやるぞ?』
「いらない! もうしつこいぞ水龍、あたしはお姉ちゃんと一緒にエルフの村に帰るんだからまとわりつかないでよ!!」
あれから数日、船の航行は順調だった。
一つの事を抜かして。
なんだかんだ言って水龍をぶっ飛ばして無事航海が続けられるかな~っと思っていたらその後にも何故かクラーケンやシーサーペントなんかと言う本来この海域には現れない海の魔物が多発した。
まあその都度ルラが撃退するのだけどその都度何故かみんなルラに惚れてしまってこうして付きまとわれている。
『水龍よ、いい加減にあきらめろ。ルラは我と一緒になるのだからな!』
『いやいや、貴方のような少女をそのいやらしい触手でうねうねする気満々な輩にルラ譲は任せておけません! ここは私がルラ嬢をぐるぐる巻きにして愛でてあげましょう!』
船の周りに大怪獣が三匹もくっついているので他の魔物たちが寄ってこない。
本来は多少は魔物が襲ってくることがあると聞くのにそう言ったことはこの三匹のお陰で全くなかった。
「あー、もうみんなうるさーぁいっ!」
甲板で日向ぼっこしていた私とルラはいい加減しつこく付きまとう三匹にうんざりしていた。
ルラなんか時たま怒ってぶん殴ると、よけにこいつら頬を染めて寄ってくるというおぞましさ。
おかげでドン引きである。
『一体どうしたら我の愛を受け入れてくれるのだ!?』
『いやいや、水龍など放っておいて我と!』
『何を言う、ルラ嬢は私とこそ!』
船の後ろにくっついて来てあーだーこーだとうるさい。
流石に船長はじめ他の皆さんは危害が加えられることが無くなったので苦笑しながらも慣れてきてしまって、こいつらの事は完全に私たちに押し付けて来ていた。
「もう、とにかくもうすぐサージム大陸につくんだし、みんなは海から出られないでしょう? 諦めて帰ってよ!!」
『ぬっ? もう陸地につくのか??』
『海から出られぬと??』
『ふっ、そのような事私には些細な事です!』
そう言って水龍もクラーケンも更にはシーサーペントまでが何やらごにょごにょ言い始めた。
そして三匹とも体がうっすらと光ってしぼんでいき、そしてその光が甲板へと……
『これならば陸にでも上がれるわ!』
『ふん、長きに渡り生きてきた我には造作もない事!』
『さあルラ嬢、私の胸へ』
きゃーっ♪
三つの光が甲板に降り立ったかと思うとそれは美形の三人の男性になっていた。
緑色の長髪に頭に角、耳の所に水かきの様なものが有る水龍。
堀の深いその顔立ちは宝塚で出てきそうだ。
朝黒の肌に背中にうねうねした触手が生えていて、白い髪の毛にワイルドなやんちゃ風の顔立ち。
細マッチョで腕組みしてニカっと白い歯を輝かせているクラーケン。
青い髪の毛に白い肌、でもお尻からは蛇のような尻尾が生えている。
女性と見間違うような細い線の切れ長な目が特徴的なシーサーペント。
三人は完全に人の姿に化けてこの甲板に立っていた。
そしてみんな真っ裸。
周りにいた婦女子の皆さまはそのイケメンたちに黄色い声を上げている?
いや、真っ裸でモザイク総動員の場所を頬を染めながら凝視しているからそっちもか??
『ふっ、これならばおぬしと一緒に居られるぞ?』
『やめんか水龍、ルラの事は我に任せておけ』
『いい加減にしなさい。さあルラ嬢、私と共に』
そんな事言いながら婦女子の皆さまに取り囲まれてちやほやされ始める。
あ、なんか向こうで男子諸君がハンカチ噛んで悔しがっている?
「なんだみんな人の姿になれるんだ。じゃあ一角獣と同じだ。でもあたしは誰とも結婚しないよ? あたしが好きなのはお姉ちゃんなんだから!」
だきっ!
ルラはそう言って私に抱き着いて来た。
「うわっ、ちょ、ちょっとルラぁ?」
「えへへへへへ~あたしはお姉ちゃんとずっと一緒だよ!」
抱き着きながらルラは満面の笑みでそう言う。
まあ慕ってくれるのはうれしいけど、この子意味わかって言ってるの?
姉妹だよ?
同性だよ?
しかもエルフではまだ幼女だよ??
あ、そうか子供の頃にある好きな子と結婚とか言うたわいない感情かぁ……
『ぬっ!? 少女同士でだと!?』
『そ、それはそれで眺めていて良いモノなのだが……』
『ふっ、尊いですね』
いやお前ら何頬染めて尊いものを見る目してるのよ!?
紳士か?
紳士なのかぁ!?
「とにかくあたしはお姉ちゃんと一緒なの! みんなはとっとと自分の海に帰ってそこでお嫁さん探しなよ!」
ルラは私の後ろに回り込みながらそう言う。
そして影から顔を出しベロを出しながらびぃ~っとか言っている。
『ぬう、しかしおぬしのその拳、忘れられんのじゃ』
『ああ、ガツンと我の心に響いた』
『あんなに激しいのは久しぶりです。魂が震えましたよ』
いやそこ、キラキラとしたさわやかスマイルで言う事じゃないってば!
きゃーっ♪
おかげで婦女子の皆さんは大騒ぎだけど。
私は大きくため息をつく。
ルラは殺さない程度に殴る時に手加減はしているみたいだけど逆にそれで惚れられてしまった。
もうじきサージム大陸に着くと言うのにまさかこの後も付きまとってくるつもりなの?
「はぁ~、こんなんじゃサージム大陸に着いてもごたごたがおこりそうだわね…… 私ってシェルさんじゃないってのに……」
ぴくっ!
ため息交じりに私がそう言うと水龍たちがぴくぴくとしてこちらを凝視する。
『今、シェルと言ったか?』
『まさか、あの【女神の伴侶シェル】の事か?』
『そ、そう言えばルラ嬢はエルフ族……』
何故か水龍たちは私たちを見る目が変わってきた。
『の、のう、もしやおぬしたちはあのシェルの知り合いか?』
「え? シェルさんですか?? はぁ、まあ知り合いと言えば知り合いですが……」
なんか脂汗をかきながら水龍が聞いてくる。
私がそう答えると他のクラーケンもシーサーペントも額に汗を溜めながら聞いてくる。
『な、なぁ、まさか近くにシェルがいるのではないだろうな?』
『そ、そう言えばしばらく前に黒龍様が大海の上を飛んで行くのを見ましたね…… まさか黒龍様も近くにいるのでは!?』
なんかクラーケンもシーサーペントもそう言っておどおどし始める。
「黒龍ってコクさんだよね? そう言えばジマの国から飛び立ってこっちに来ているんだっけ? クロさんやクロエさんも一緒だったよね?」
ルラが思い出しながらそう言うと真っ青になって水龍もクラーケンも、そしてシーサーペントも回れ右をする。
『す、すまぬが我は急用を思い出した。残念ではあるが我はこれで!』
『あ、ちょっと待て! わ、我も急用が!!』
『くっ、持病の癪が…… すみません、ルラ嬢。私も薬を取りに行きますので!』
そう言って三人は慌てて海に飛び込んでい行く。
そして元の姿に戻って一目散に立ち去ってしまった。
「え、ええぇとぉ……」
「ふう、帰って行った。良かったねお姉ちゃん!」
未だ私の後ろで顔だけ出してその様子を見ていたルラはにっこりと笑っている。
う~ん、シェルさんの名前出したりコクさんの事言ったりしてこれか。
「ツエマの港町が見えてきたぞ!!」
遠くなってゆく水龍たちを見ていると帆の上の見張り台からそんな声が響いて来た。
私は慌てて船の端に行ってその先を見る。
そこには水平線の向こうに大きな大陸が見え始め、港の灯台らしきものも見える。
「とうとうサージム大陸に帰って来たんだ!」
「うん、お姉ちゃん!」
私はルラと抱き合いながらそう、喜ぶのだった。
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すみません、本作しばらくお休みいたします。
先週交通事故に遭って右手が痺れてまともに動きません。
ですので、キーボード打てるくらいになるまでしばらくお休みいたします。
このようなお話を読んで下さる読者様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解いただき、もうしばらく更新はお待ちください。
早く治さないと……
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*申し訳ございませんが、私生活がまだまだ忙しくなっておりまして土、日曜日の更新はしばらく休止させていただきます。
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