10-28船
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
おっ買い物、おっ買い物ぉ~♪(リル談)
海獣も撃退してデービッドさんのお兄さんお店も順調に行っているみたいで、後は私たちが乗る船の準備が出来るのを待つだけだった。
「お姉ちゃん、また買い物?」
「当然よ、ここでしか買えないモノは今のうちに買っておかなきゃ!」
いよいよサージム大陸へ渡る訳だけど、そこまで行ってしまえばあとは「迷いの森」に向かって北上すれば私たちエルフの村につける。
エルフの村から転移して早一年半。
いろいろ有ったけどやっと戻れる。
しかし戻ったが最後私やルラのような「若木」、人間で言うと三歳児くらいのエルフは最低でも二百歳になるまでは村から出る事は出来ないだろう。
となればまたあのまずいエルフ飯を食べるしかない。
もともとこの魔法のポーチはシャルさんの持ち物だけど、緊急事態だったので活用させてもらっている。
シャルさんも村から出る事無く、思い人のアインさんが迎えに来てくれるのをずっと待っている。
そうすると、どう考えても今後美味しいものはまず食べる事は出来ない。
だったら今のうちに、お金のある分だけ買えるものは買っておきたい。
「ルラ、よく考えて。村に戻たら私たちは最低二百歳になるまで絶対に村の外なんか出させてもらえないわよ? そうすればまたあのエルフ豆の毎日よ?」
「うげぇ、そう言えばそうだった~。どうしよう、お姉ちゃん!?」
ここへ来てやっと事の重大さに気付いたルラ。
心底嫌そうな顔をして私に聞く。
「このポーチに買えるだけ美味しい食材とかいろいろ入れておいてシャルさんにお願いして保管してもらうの! 後は少しづつ大切にそれらを使って村から出れる年齢まで我慢するしかないわよ……」
言いながら自分もげんなりしてくる。
だってどう考えても二百歳まであと百八十年くらいはある。
生前の私には想像もつかない事だけど、あのエルフの村にいると感覚が狂ってくるから恐ろしい。
一年二年なんてそれこそ昨日一昨日くらいに感じてしまうのだから。
……おかげでこっちで生まれてエルフの村にいた十五年間なんて精神的にも何も全然成長した気がしない。
生前の年齢から合計すれば私だって精神年齢がもう三十路!?
うっ、花も恥じらう女子高生だったのに……
時の過ぎるのはこうも残酷なモノなのだろうか……
「はぁ~、二百年も外の世界にいけないのかぁ~。 でもまあお姉ちゃんが一緒ならいいか~」
「ルラ……」
元は小学生一年生になったばかりの赤城拓人君。
今では私の双子の妹として完全になじんでしまったけど、同じ境遇の仲間がいると思うと精神面で助かる。
この先まだまだ長いエルフ人生、ルラとはずっと一緒だったからこの先もずっと一緒なのかな?
「でもさ、ファイナス長老にあたしたちの秘密の力であるスキルの事バレちゃったんだよね? もしかしてあたしたちエルフの村に帰れないってことはないよね?」
「うっ、そ、それは無いと思う…… いや、無いと思いたいわね……」
結局私たちのチートスキルについてはファイナス長老にばれてしまった。
こんなスキルを持っていると大長老のメル様が黙っていないだろうって渡りのエルフのカリナさんは言っていたので秘密にしていたのだけど……
「ファイナス長老は長老たちの中でも理解のある人だから多分大丈夫だとは思う。追い出される事は無いと思うけど…… あ~、でもメル様はどうだろうかな? もしかして玩具にされちゃうのかな??」
うちの村には八大長老と言いうのがいる。
そのうち最古の長老と呼ばれる四人は「女神戦争」の時代から生きていると聞く。
もう何万歳かは分からないけど、あの四人ってほんと何考えているか分からない。
いつも村の奥にある世界樹って言う金色の葉っぱの大きな木の下でうとうとしている。
残りの四人は次代の長老と言ってファイナス長老とかがその中に入っている。
実際にいろいろな事をやっているのはこの四人の長老たち。
大長老である最古の長老たちに比べればずっと若いと言われているけど、一番若い長老だってもう数千年は生きているらしい。
若木である私たちにしてみれば想像もつかない。
「どうなるかは分からないけど、エルフのお父さんやお母さんには心配かけているし、トランさんの家族には遺髪を届けなきゃだしね…… 多分大丈夫だとは思う」
私はそう言って空を見上げる。
この世界はエルフの村でもレッドゲイルの街でもジマの国だってドドスだって空は同じだった。
先の事は分からないけど、まずはお父さんやお母さん、それに隣のお姉さんであるシャルさんだって心配してくれているはずだから帰らなきゃ。
「だから今のうちにやれることはやっておかなきゃね」
「うん、そうだお姉ちゃんあたし海の魚も食べたいからそれも買っておこうよ! エルフの村じゃ川魚しか無かったもんね」
「そうだね、それじゃぁ市場にも行ってみようか?」
そう言いながら私たちは市場へ向かうのだった。
* * * * *
「ふぅ~、買ったねぇ~」
「ルラがあれも食べたいこれも食べたい言うからでしょうに~。でもまあ新鮮なお魚や貝なんかも手に入ったし、絞めてもらったから魔法のポーチに入れた時のまま鮮度は保てるもんね」
なんだかんだ言ってかなりいろいろ仕入れていた。
航路が開通したので安心して近場での漁も出来たらしく市場の品物は潤沢だった。
地竜を売ったお金はまだまだあるので結構奮発していろいろ買っちゃった。
最後には市場のお魚ほとんど私たちが買い占めている状況だった訳だけど。
それとイージム大陸で無いと手に入らないと言われる香辛料とかも沢山買っておいた。
よくよく話を聞けば胡椒とか山椒とか月桂樹の葉っぱとかはサージム大陸に多いらしい。
自分たちのいた大陸にそんなものが沢山有ったとは知らなかったけど、エルフの村がある「迷いの森」にはほとんど自生していないらしい。
村よりもっと南の方にあるとか。
「向こうで買える香辛料はサージム大陸に行ってから買った方が安いもんね。とりあえずこっちで買えものはこんな所かな?」
言いながら確認して分かりやすいように袋に詰めたりしてポーチにしまって行く。
後でシャルさんにこのポーチを返しても中身がすぐわかるようにしておかなきゃだから。
「ん~、買い物で動いたらお腹すいちゃった。お姉ちゃんご飯食べに行こうよ!」
「そう言えばまだこっちでちゃんとした海鮮料理食べてなかったっけ? じゃあ今晩は海の幸を頂きに行きましょうか?」
「さんせーいっ!」
先ほど宿に戻ったら手紙が来ていて明日には船が出航するらしい。
今日はここアスラックの港町も最後だから美味しいものをいっぱい食べておこう。
私とルラは海鮮料理を楽しみに最後の晩をアスラックの港町で楽しむのだった。
面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。
誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。
*申し訳ございませんが、私生活がまだまだ忙しくなっておりまして土、日曜日の更新はしばらく休止させていただきます。
読んでいただいている方にはご理解いただけますようお願い申し上げます。




