表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十章:港町へ
213/438

10-26秘伝のスパイス

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


フライドチキンって何だ?(ハーランド談)


 私はデーヴィッドさんのお兄さんが経営するお店でフライドチキンの作り方を教える事となった。



「それで、フライドチキンってのは一体どんなモノなんだい?」


 首をかしげるハーランドさん。

 どうもこの世界ではあまり一般的では無いようだ。


「えっと、香辛料で味付けした鶏肉を油で揚げる料理なんですよ」



「油で揚げるのか! それは豪勢だな!!」



 そう言えば前にも油で揚げた料理は贅沢品だって聞いたっけ?

 まだこの世界では油が安価で出回ってはいないんだっけ?



「確かに豪勢かもしれませんが、油もこせば何度か使えますからね。網目の細かいざるなんかありませんか?」


 私がそう聞くとハーランドさんは厨房からざるを持ってくる。

 でも何かを煮た時にすくいあげる程度のモノだから目が粗い。


「奇麗なナプキンか何かって有りますか?」


「ああ、それならここに」


 サンダースさんがすっとナプキンを差し出してくれる。

 私はお礼を言ってから説明を始める。



「油で揚げて汚れが出てきたらこうしてこのざるにナプキンを敷いて受け皿のお椀か何かの上に置きます。そして汚れた油をここでこせば油の中の汚れは無くなって何度か再利用できますよ」


「ほう、油料理と言えば一度使った油はもったいないが捨てるのが相場だと言うのに、こんな方法があったか」


「確かに、汚れが無くなれば再利用できるね。これならざっと計算しても油代だけでもかなり抑えられるね」


 そう言って納得しているハーランドさんとサンダースさん。

 それに再利用する油にはちょっとした特典がある。

 

 実は同じ料理をその油で続けると油自体にもその味とか香りが付く。

 なのでフライドチキンをした後にフライドポテトなんかをするとポテトにその香りや味がうっすらと移るのでとても美味しくいただける。


 ただフライドチキンを出すだけでなく、そう言った副産物も準備すれば味付けなんかは塩だけで美味しいフライドポテトが食べられる。



「それに油は徐々に減りますから継ぎ足しをすればぐっとコストが下がりますよ。特に料理店なんかは使用頻度が高いから古い油が残る前に入れ替わってしまうくらいに」


 一般家庭で油鍋はこした油を永遠に使うと酸化した油のせいでお腹を壊す事もある。

 でも業務的に揚げ物をしていればその使用量が多いので二、三日中にはほとんど油が入れ替わっているのも同然となる。



「なるほど、こいつは理にかなっている」


「うん、連続でその料理を作るのであればコストを抑えるツボになるね」


 ハーランドさんもサンダースさんも私の説明に首を縦に振りながら頷く。

 

「それと、使う鶏肉なんですが可能な限り若い鶏を使いたいのです。出来そうですか?」


「若い鶏か…… 少し難しいが当たってみよう。普通は卵を産まなくなった老いた鶏が市場には出回るのんなんだがな」


「老いた鶏は肉が固く、油も抜けてぱさぱさしがちですからね。お願いします」


 一般的にこの世界では鶏肉は固い。

 それにパサつきが強いのは卵なんかを産まなくなった老いた鶏が使用されるからだ。 


 なのでどちらかと言うと狩りで仕留めて来た山鳥とかの方が人気がある。

 だって野趣味あふれる芳香な美味しい肉だからだ。


 あ、ちなみにコカトリスは魔物なので味は鶏なんだけどもの凄く硬い。

 普通に焼くとスルメみたいに硬いので食べるのが大変だった。


 なのであの圧力鍋が欲しかった訳だ。



「それじゃぁ早速始めて見ましょうか? あ、そうだデーヴィッドさん。このお店にもあの圧力鍋ありますか?」


 私がデービッドさんにそう聞くと彼は頷いて言う。


「暇な時には船で作る料理をここで試作しているからな。厨房にあるぞ」


「なら話は早い。とりあえずある食材で始めましょう!」



 私はそう言いながら厨房へと連れて行ってもらうのだった。



 * * *



「さて、それじゃ作り方教えますから覚えてくださいね」


 言いながら先ずはスパイスを準備する。

 

 塩、タイム、バジル、オレガノ、セロリー、黒胡椒、マスタード、パプリカ、ガーリック、ジンジャーパウダー、白胡椒。


 これら十一のスパイスをすり鉢でパウダー状になるまで細かく擦る。

 これが結構重労働なのだけどルラが「最強」スキルを使って手伝ってくれるのでとても助かる。


 この世界にも石臼とか有るから後でその辺は進言してみよう。



 まずは鶏肉を適度な大きさに切る。

 そして軽く塩を振って揉んでおく。


 お鍋に油を入れて温めて、出来がったパウダーに小麦粉も少し入れてから鶏肉に混ぜて油に投入!


 

 じゅわぁ~!



 途端に美味しそうな香りが立ち込める。

 この秘伝の十一のスパイス、複雑な味加減なのでそうそう真似は出来ないだろう。



「ほう、いい香りだな」


「うん、鶏を油で揚げるという発想は今までなかったけど、確かにいい香りだね」


 ハーランドさんもサンダースさんも揚げているのを覗き込みそう言う。


 周りがカラッと揚がったらそれを取り出して圧力鍋に入れる。

 そして弱火でしっかりと圧力をかけながら火を通す。



「さてと、ついでだから」


 私はそう言ってジャガイモを奇麗に洗って水をしっかりとふき取り、皮が付いたまま切り分けて先ほどの油に投入する。



 じゅわわわわわぁ~



「ジャガイモを油で揚げるのか?」


「はい、フライドポテトって言って、これはこれで素朴で美味しいんですよ」


 言いながら頃合いを見てポテトを揚げて油切りする。

 そしてそこに塩を軽く振りかけて出来上がり。


 試しに一つづつみんなで味見する。



「ジャガイモを油で揚げただけの料理か…… ぱくっ! んむっ!?」


「どれ…… ぱくっ! んッ!!」


「なんだよみんな、ただのジャガイモだろ? ぱくっ! ガっ!?」


「わーい、フライドポテト好き~ あむっ! うん、おいひいぃ!」


「こらこら、ルラ。食べ物口に入れたまま喋らない。さてっと、ぱくっ! んっ!」



 やはりそうだった。


 口に含んだ瞬間にフライドチキンのわずかなスパスと味や香りがポテトに移っていてカリッと揚がったポテトがとても美味しい。

 適度に振った塩もいい塩梅。



「なんだこれ! うまいぞ!!」


「ああ、ジャガイモがこんなに美味いだなんて!」


「これ、凄いですよ! 美味しい!!」


「ポテト好きぃ~」



 みんなフライドポテトに驚いている様だ。

 皮もついているので実は旨味が増している。


「うん、これでもっとフライドチキンを作れば油に味も移ってポテトも美味しくなるわね」


 私がそんな事を言っているとどうやら圧力鍋が良い感じになってきたようだ。

 防爆用の小さな蓋から勢いよく煙が出始める。


 砂時計の時間を見ながらそろそろ良いので圧力を下げてふたを開ける。

 途端にいい香りがふわっとする。


「ほお、圧力をかけて柔らかくするのか?」


「はい、そうなんですけどこれで味の染み込みも良いですし老い鶏でもなんとかなります。ああ、でもやっぱり若鶏の方がずっと美味しいので出来れば若鶏を仕入れてくださいね」


 そう言いながらもう一度油で揚げる。

 この二度揚げは最後に柔らかくなった表面をカリッとするのが目的なので短時間で油から揚げる。


 

 じゃわぁあああぁあぁぁぁっ!



 カリっとなった頃に油から揚げてしっかりと油きりをする。

 そしてお皿に載せて私は言う。



「さ、これで出来あがりです。フライドチキンです!」




 ちゃんとした鶏を使った正真正銘フライドチキンを皆さんの前に私は出すのだった。 



面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


*申し訳ございませんが、私生活がまだまだ忙しくなっておりまして土、日曜日の更新はしばらく休止させていただきます。

読んでいただいている方にはご理解いただけますようお願い申し上げます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >「それで、フライドチキンってのは一体どんなモノなんだい?」  はい! 直訳すれば、油で揚げた鶏肉 です!  フライドポテトは油で揚げたじゃがいもです!  そのまんまでも格好良く聞こえ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ