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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十章:港町へ
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10-17船上のご飯

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


圧力鍋!?

ほ、欲しいっ!!(リル談) 


 海獣の討伐依頼を受けて私たちはその海獣が巣を作っているという小島に向かっている。




「飯の時間だ! 各班順番に来てくれ!!」



 出向して数時間後、この船の料理担当の人がそう言って大声で水夫の皆さんに声をかける。

 すると先ずは数人の水夫の皆さんがやって来る。



「えーと、そっちのエルフの嬢ちゃんたちは……」


「あ、私はリル、こっちは双子の妹のルラです」


「料理担当兼この船の船長をしているデーヴィッドだ」


 そう言って料理を配っていたその人はお椀に何やら煮込み料理を渡して来てくれる。



「料理師が船長さんなんですか?」


「ああ、そうだ。何かおかしいかな?」


 別に悪いわけではないけど、普通船長が料理するなんて聞いた事が無かった。

 忙しい船長さんがみんなの食事を作るとか、それこそやれるものなのだろうか?



「いえ、お忙しい船長さんなのに料理までするなんてすごいなって」


「まあ、船員の健康管理も俺の仕事だからな。それにこいつのお陰で料理の時間も短縮できるからな」


 そう言って煮込み料理をしていた鍋を見せてくれる。

 それを見て私は思わず言ってしまう。



「これって、もしかして圧力鍋ですか!? 初めて見た……」



「ほう、こいつを知っているか? 圧力鍋、まあ原理はその通りだな。重い蓋を閉めて固定し、弱火でもしっかりと煮込める。しかも時間も短縮できて便利なモノさ」


 言いながらデーヴィッド船長はどんどんと水夫の皆さんに料理を配る。


 私は渡されたその中身を見てみると、野菜がたっぷりと入っていてそこへ多分塩漬けの魚だろう、ぶつ切りの魚が見える。


 スプーンでそれをすくってみて驚く。

 魚の背骨がスプーンでも簡単に砕けるほど煮込まれている。



「ふわぁ~これ美味しいねぇ~」


 既に食べ始めているルラは魚の骨を気にすることなくパクパクと食べている。


「骨が簡単に砕けるほど煮込まれているなんて……」


 言いながら私もそれをすくって口に運ぶ。



「んっ!」



 野菜の甘みととろみの中に魚の風味がぎっちりと混ざっていた。

 臭み消しで生姜とかハーブも入っているそれは塩味の塩梅も良くとても素朴で美味しいものだった。


 

「凄い、これって素朴だけど素材の味がしっかりと引き出されている!」


「はははは、うれしい事言ってくれるじゃないか。他の連中は味より量ってのばかりでどんなに味に変化付けても気付かないのばかりだと言うのにな。嬢ちゃんたちには味が分かってもらえてうれしいよ」


 デーヴィッドさんはそう言って笑いながらおかわりがいるかどうか聞いてくる。

 しかしすでに最初の一杯でかなりの量が入っていたのでこれ以上は食べるのがきつい。

 ルラはもう少し食べるかどうか迷っていたけど、無理してまたお腹壊しちゃうと大変なので大人しく諦めていた。



「でも、圧力鍋なんてのもこの世界にはあったんだ…… そうだ、デーヴィッド船長この鍋って何処で手に入りますか?」


「ん? これか?? これはアスラックのアーロウ商会が特注で作らせたものだからな、普通の店じゃ売ってないぞ?」



 なんと、特注品だったのか!

 道理で今まで見たことが無かった訳だ。



「うう、でもこう言った道具があれば硬いお肉とかも簡単に柔らかく出来るのに……」


「ん? 嬢ちゃんも料理するのかい??」


 次の班の人たちと交代になって食事を配っているデーヴィッドさんは肩を落とす私の言葉に気付いたようでそう聞いてくる。



「はい、私って料理が趣味だったのでこう言った道具って有れば便利だなと……」


 だって圧力鍋よ?

 煮込み時間も何も大幅に短縮できるし、何よりさっきの魚の骨じゃないけどほろりとなるくらい柔らかくできる。

 しかも火力もそれほど必要ないからとっても経済的!



「はははは、だったらこの仕事が終わったらアーロウ商会に相談してやろう。確かにこいつは便利だからな。アーロウ商会の船にはすべてこの鍋が常備されている、特注でも一個くらいは回してもらえるだろう」


 デーヴィッドさんはそう言って笑っている。



 よぉ~し、ちゃっちゃと怪獣やっつけてアーロウ商会で圧力鍋分けてもらおう!



「ルラ、これでコカトリスのお肉も簡単に柔らかくできるわよ!」


「え? 本当お姉ちゃん!? やった、これでお肉食べられるね!!」


 アスラックの町に来るまでにコカトリスと言う鶏に蛇の尻尾が生えた魔物を倒した。

 もともとはルラがお肉食べたいと言って石化の毒を持つこいつをイーオンの町の近くで仕留めたけど何せ人より大きい。

 お残しは厳禁なのでしっかりと魔法のポーチに血抜きしてしまってあるけど、いざ料理しようとするとスルメのように固い肉なのでどうしたものか悩んでいた。


 しかし、圧力鍋があれば話は別である!


 あの硬い肉だって骨がほろりと落ちるくらい柔らかくできるはず。

 それに、柔らかく成った鶏肉ならフライドチキンにしても美味しそう……



「ん? そう言えば前にシーナ商会で香辛料、特に胡椒なんかはサージム大陸の南で採れるって聞いたような……」


「ほう、嬢ちゃんは香辛料もよく知っているのかい? 確かにサージム大陸の南方は香辛料が豊富な地域があるからな。胡椒も安く手に入る。それ所か他の香辛料もな」


 そう言ってデーヴィッド船長は籠を見せてくれる。

 その中には様々な香辛料が入っていた。



「すごい! こんなに沢山の香辛料があるなんて!!」



「ははは、船に乗っていると食料が傷むんでな、香辛料は薬にもなる。こいつなんか料理に混ぜると整腸作用があるんだ」


 そう言って見せてくれたのはクミンっぽい細長い種のような物。

 それにこれってサフランかな?

 めしべを乾燥させたような形をしている。



「あ、なんかカレーみたいな香りがする~」


「うん、これってクミンだやっぱり。お肉料理にはとっても合うのよね……」


 ケバブとかにも使われている香辛料のはず。

 勿論カレーにも入っているので、それっぽい香りがする。



「嬢ちゃんは香辛料に詳しいのか? エルフ族も香辛料を使った何か特別な料理を作るのかい?」


「いえ、エルフ族は素朴な味のものばかりでして……」



 正直エルフの村で香辛料って見たことが無い。

 あるのは塩くらいなもので、それも岩塩。


 木の実を乾燥させるとか有るけど、それはあくまでもドライフルーツの様になるので香辛料の類とは全く違う。

 素材は確かに好いものが有るんだけどねぇ……



「個人的に趣味で料理しているので、私は結構香辛料とか使いますけどね」


「ほう、どんなモノとか有るんだい?」



 うーん、どんなモノって言われても……



「お姉ちゃん、鶏肉柔らかくなって香辛料あるならあたしフライドチキンが食べたい!」


 それまで黙って隣にいたルラがいきなりそう言ってくる。

 確かに素材がこれだけ有ればポーチの中にあるモノも含めて作れそうだ。



「あの、この鍋を貸してもらえれば鶏肉料理の美味しいものが作れると思うのですが……」


「ほう、それは興味があるな。それじゃぁ今日の晩飯は頼んでも良いかな? 船にある材料は好きに使っていいからな!




 そう言ってデーヴィッドさんはニカリと白い歯を輝かせ笑うのであった。



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*申し訳ございませんが、私生活がまだまだ忙しくなっておりまして土、日曜日の更新はしばらく休止させていただきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] >圧力鍋!? >ほ、欲しいっ!!(リル談)  なお風の精霊に気圧と言う名の圧力を鍋の中にかけてくれとお願いすれば、圧力鍋を再現できる可能性がある模様。
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