10-14海獣
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
おっ船に乗れる~♪(ルラ談)
アスラックの港町で定期便の乗船予約が出来たので出航予定の約二週間をこの町で過ごす事となった。
「まずは宿を探さなきゃだけど、先に冒険者ギルドに行ってみようかな?」
「お姉ちゃん、教会の方は?」
船会社に渡した手紙とは別にギルドにはギルド向けの手紙も貰っている。
教会の方は礼のペンダントがあるので今ここに居ると言う事を伝えるだけいいとは思うけど。
「ご飯の前に冒険者ギルドと教会に顔だけは出しておきましょうか」
私はそう言ってルラと一緒に道行く人に先ずは冒険者ギルドの場所を聞くのだった。
* * * * *
「なるほど、イーオンの支店からの伝書鳩はあんたらだったか。ちゃんと精霊都市ユグリアの冒険者ギルドには連絡を取っておいたよ」
窓口のおばちゃんはそう言って私が渡したカーネルさんの手紙を読み終わる。
そしてギルド長に確認印をもらうから待っているように言われる。
「どうやらファイナス長老には私たちがどうなったかちゃんと伝わったみたいね?」
「じゃあ、お母さんやお父さんにも伝わったかな?」
エルフのお父さんやお母さんも心配はしてくれているだろう。
お父さんとお母さんに私たちの事を伝えたのはカリナさんのエルフのネットワークでお願いしたのが最後だから、途中の連絡はどのくらい行ってるか怪しかった。
私たちはファイナス長老の判断で自力で戻って来るように言われたけど、確かにジッタさんのような犠牲をこれ以上出すわけにはいかない。
「とにかくこれで一安心ってところかな?」
「君たちが双子のエルフか! よくこのアスラックの冒険者ギルドに来てくれた、歓迎するぞ!」
私がそんなことぼやいていたらカウンターの奥からそんな声がして受付のおばちゃんと白髪のおじさんがやってきた。
「私はハウザー、このアスラックの町の冒険者ギルドのギルドマスターをやっている。そうか、噂のエルフの双子が君たちか!!」
「は、はぁ……」
カウンターから出て来ていきなり握手されて手をぶんぶんとされる。
勿論ルラも同じく。
「いや、カーネルのやつは元気か!? あいつがこんなこと書いてくるなんて君たちはかなり優秀な冒険者なんだな!」
「え、あ、いや、私たち冒険者って訳じゃ……」
一体何が書いてあったのか知らないけど、このハウザーさんとかってギルドマスターとカーネルギルドマスターは知り合いらしい。
おばちゃんのため息を無視してこの白髪のおじさんは大笑いをしている。
「でだ、カーネルのやつが絶賛する君たちの力を見込んで海獣駆除をしてもらいたい!」
「は?」
いきなり何言い出すのこのおじさん。
初対面も初対面、しかもただ単に挨拶に来た私たちにいきなり海獣駆除の依頼をぶっこんで来たぁ!?
「あの、私たち冒険者じゃないし、単にエルフの村に帰りたいだけで……」
「なぁ~に、あのカーネルがここまで絶賛しているんだ、君たちなら海獣なんてすぐに倒せるだろう。いや、航路から追い払ってくれるだけでいいんだよ!」
ぽん!
そう言って肩に手を置かれ大笑いをしながら行ってしまった。
「あ、あの……」
「さてと、嬢ちゃんたちは冒険者登録してあるのかい? 今回のクエストは結構厄介でね、上級冒険者でも大変なんだよ。従来海獣は繁殖期には浅瀬に巣を作ってその周りで活動するけど今回は航路に巣を作っちまったようでね、まだ産卵の確認はされていない様だから今は嫁さん探しで躍起になっているってところかね。巣を壊されるか追い払われれば航路には近づかなくなる」
おばちゃんはそう言って依頼書を引っ張り出す。
それを私たちに見せてからカーネルさんの手紙も私たちに返してくれる。
「ギルドで準備した船は二日後に出航だよ」
「あの、私たちそんな依頼は受けるって言ってないんですけど?」
勝手に話を進められるので文句を言ってみる。
しかしおばちゃんは依頼書を指さしながら言う。
「こいつが航路から退かないと船は出なくなっちまうよ? 手紙ではあんたらは上級冒険者を更に上回る力の持ち主だと書いてあったよ? ユエバの町の冒険者ギルドマスターお墨付きだ、期待してるよ」
そう言ってその依頼書を私たちに手渡してきた。
「そんなぁ……」
「ねぇ、お姉ちゃん。その怪獣って強いのかな? それにそいつがいると何時まで経っても船が出ないんだよね??」
依頼書を渡されて思わず呆然とする私にルラは私の袖を引きながらそう言う。
確かに航路の怪獣がいなくなれば船は出るだろうけど、リガルドさんは宿で大人しく待っていれば海獣駆除は終わって無事に船が出るって言ってたのに。
「なんで私たちが……」
「いいじゃん、あたしとお姉ちゃんがいればその怪獣ってのもすぐに片付けられるよ! そしたら船も出るし!!」
前向きなルラはそう言うけど、なんか納得いかない。
最高の待遇で船旅をすると言う約束を単にこの町でゆっくりと待っていればよかったはずなのに……
「ルラ、あんたどちらかと言うとその怪獣ってのを見てみたいんでしょ?」
「うん♪」
一切の迷いのない素晴らしい笑顔をするルラだったのだ。
* * * * *
「はぁ、なんで海獣の駆除なんてのに駆り出されるのよ……」
「あ、お姉ちゃんここが教会っぽいね」
結局ごねても何しても海獣駆除が出来なければ船は出ない。
なので渋々その依頼を受ける事となった。
そしてもうひとつ顔を出しておかなければならないのが女神信教の教会。
バーグ神官は各町の教会に行けば色々と情報や便宜をはかってもらえると言っていた。
別にそう言うつもりはないけど顔だけは出しておいた方が良いので行ってみる。
辿り着いた協会はそこそこ大きかった。
イーオンの町の教会とは違い立派だった。
「この町も孤児院とかやってるのかな?」
そんな事をぼやきながら教会の扉を開ける。
「ごめんくださーい」
扉を開くとそこは礼拝堂のようだった。
広々としたそこはたくさんの椅子が並べられ、その一番奥に女神様、エルハイミさんの大人バージョンの像があった。
「誰もいないのかな? すみませーん」
「どちら様でしょうか?」
中に入って声をかけていると横から女性の声が聞こえた。
私はそちらを見るとひとりのシスターが立っていたのだった。
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