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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第十章:港町へ
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10-8名物料理になるかな?

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


ぱりぱりぃ~(ルラ談)


「うぉっ! こ、これはっ!」


「何と言う香ばしさ、しかもぱりぱりとしんなりした両方の食感が面白い!」


「おいしぃ~♪」



 早速皿うどんを試食してみんな舌鼓している。

 このパリパリの麺も美味しいけど、とろ~りあんかけによってふにゃッとなった麺もこれまた。


 香ばしさは油で揚げたお陰でしっかりあるモノの、しっかり油切りしているのでそこまで油っこくない。

 むしろ野菜主体の優しい味に香ばしさとパリパリ、ふにゃ~の揚げ麺がボリューミーでお腹にたまるので満足感が増す。



「こいつは旨い! 凄いな、えっと、リルちゃんだっけ」


「良いでしょう? このとろとろとぱりぱり麺が合うんですよ~」


 まあ結局は自分が食べたかったのでついでに作り方を教えただけなんだけどね。

 でも小麦や岩塩はここでも十分に入手できる。

 だったらせっかくなので美味しい料理を食べられる方が良いもんね。



「これ、教えてもらったけど店で出しても良いのかい?」


「勿論ですよ。それにこれでリンガーさんもガリーの村に行ったついでに小麦の買い付けも出来ますよね? 一石二鳥じゃないですか」


 にっこりとそう笑うとリンガーさんとハッドさんは顔を見合わせてニカっと笑う。


「ああ、ありがとう。これでこの店はもっと繁盛できるぞ! 小麦と塩だけならばパンよりも原価が下がる。お手頃価格でみんなに飯が提供できる!」


「俺もガリーの村に行く必要がぐっと増えそうだな。あの村、小麦粉だけは余っているからな」


 ガシッと腕を絡ませて嬉しそう。

 まあ私もお役に立てれば嬉しいもんね。



「ん~、美味しいけど流石に油っこくなってきたなぁ~」


 黙々と皿うどんを食べていたルラはそう言ってこっちを見る。

 確かに最初は美味しいけどだんだん油っこくなるのは仕方ない。


 でもこれを油っこさを無くすなんて油で揚げている限り難しい。

 生前は工場で出来あがっていたスナックのような麺がスーパーとかで安く売られていたけど、こっちの世界では自分で作るしかない。



「野菜とかはたっぷりと入っているんだけどね……」



 ん?

 

 たっぷりな野菜。

 麺。


 塩味で飽きの来ない食べ物……




「それだあ!」




「え? お姉ちゃん??」


「なんだ、何だい?」


「どうしたってんだいリルちゃん??」


 思わず声を上げた私にみんな驚いてこちらを見る。



「これも良いですけど、もっと美味しく簡単な料理があったんでした!」



 そう言って私はにっこりと笑うのだった。



 * * * * *



「ちゃんぽん?」


「はい、同じくこの麺を使うんですけど、今度のは油を使わないもっとさっぱりした物なんですよ」



 私はそう言って岩塩を入れて沸騰した鍋に先程の麺を入れる。

 そして湯がいて芯が少し残るくらいの硬めに茹で上げる。


「これが麺ですけど、硬めに茹でるのがコツですね。さてと」


 言いながら鍋にお肉を入れて炒め始める。

 このお店で取り扱っていたお肉は鶏だったので、鶏ガラスープも常備されたいたので助かった。

 鶏肉を少量細切りにして炒めて、火が通ったらそこに沢山の野菜を入れる。

 野菜の具は何でもいいけど、先ほどのあんかけに入っていたものをそのまま使わせてもらう。

 多分その方が入手が楽で安定しているだろうから。


 軽く炒め終わったら今度はそこへ鶏ガラスープと塩を少々。

 くつくつと煮え始めたらそこへ最後に茹でておいた麺を投入。


 更にくつくつと煮えたらお椀に麺を先に入れてから残りの野菜とスープを入れて、エシャレットを細かく切ったものを載せて出来上がり!



「はい、出来ました。『ちゃんぽん』です!」


 

 おおぉ~!



「なんか旨そうだな」


「香りも悪くない」


「えへへへへ~、これなら油っこくならないね~」


 本当はタンメンなんだけど、これに練り物とかスープにとんこつ入れて煮だせばもっと美味しくなるだろう。

 とりあえずはこのタンメンをちゃんぽんと言って食べてもらって、その後に改良を施せばいいかな?



「本当は『タンメン』なんですけど、なんかここでは『ちゃんぽん』って言い張らないといけない気がしまして…… まあ、まずは食べてみてください。そして美味しければこの後具材を揃えてちゃんとした『ちゃんぽん』作ってみましょう」



 私はそう言ってみんなにフォークとスプーンを手渡す。

 あ、ルラだけはお箸を手渡した。

 さっきの皿うどんも途中からお箸の方が良いって言ってたから。



「そ、それじゃぁいただきます……」


「ああ、いただきます」



 リンガーさんとハッドさんはそう言ってまずはスープを口にする。

 すると目を見開く。



「これ、さっぱりしているのに複雑な味がする!?」


「ああ、何だこれ、俺の料理と似ているが具材を先に炒める事によって旨味が増している。それにとろみをつけていないのにわずかにとろみを感じるだと?」



 良い所に気付いた。

 麺と一緒に茹でる事によりわずかにスープにとろみがつく。

 硬めに茹でているから麺自体は伸びる事無く今ちょうどいい硬さのはず。


 リンガーさんもハッドさんも今度はフォークで麺を引っ張り出して口に運ぶ。



 はむっ!



「んむっ! もごもご、ごっくん! これは、何と言う優しい味だ! パンとも違うこの食感、もっちりしているのに食べやすい!」


「表面がわずかにふやけているが、それがまたこのスープをまとわせて旨味を一緒に運ぶ。こいつは凄いぞ!」


「ん~、おうどんより細いし固めだからほんと、ラーメンに近いね~。でもこれなら油っこくないから最後まで食べられそう~」


 私も口に運んでみるけど、あっさり塩味のタンメンは確かにうどんに近い。

 煮込んでいる分野菜や鶏肉の旨味も麺に染み込んでいる。

 これでもう少し具材を集めて調整すればちゃんとした「ちゃんぽん」になる。



「これ、旨いな! 毎日食べられそうだよ!!」


「ちょっとあっさりしているが、これならうちでも出せる!」



 喜ぶ二人だけど、本当の「ちゃんぽん」はこれからよ!


「ふっふっふっふっふっ、まだですよ、これは完成形じゃありませんよ。もう少し具材を集めればもっと完璧な『ちゃんぽん』になります!」


「これで完成形じゃないだって?」


「ど、どうすればいいんだ!?」


 指を立てて、ちっちっちっと振っている私にリンガーさんもハッドさんも食い入るように聞いてくるのだった。



 * * * * *



「これで良いのかい?」



 翌日朝からハッドさんのお店にみんな集まっていた。

 このお店に無かった食材、とんこつや白身のおさななんかを手に入れてもらった。


「はい、これで間違いないですね。それじゃぁ早速仕込みを始めましょう!」


 私はそう言ってまずはスープ作りをしてもらう。

 鶏肉は毎日入手しているので問題無かったけど、とんこつは少し苦労した。


 他のお店とか肉屋さんに頼んで骨だけでもいいから入手できないか聞いたら、普通は骨は肉ごと焼いて食べ終わったら捨ててしまうそうだった。

 そんな骨は犬くらいしか食べないとか言われていたけど、これを煮込めば好い出汁が取れる。

 結構安く手に入れられたようでハッドさんも喜んでいたけど、問題は魚だった。


 この辺で食べるのは主に川魚。


 でもこのイーオンの町は幸いなことにアスラックの港町に近い。

 おかげで一夜干しや塩漬けの魚が結構出回っていた。

 本当は生が一番いいのだけど仕方がないので一夜干しを塩水で戻して川や骨を取り除きすりつぶす。


 それをある程度の大きさにして油で揚げるとさつま揚げが出来あがる。



「うわぁ~、おいしそう~!」


「うーん、一夜干しを塩水で戻した奴だからなぁ。ちょっとしょっぱいかもしれないけど、どれ」


 出来あがったさつま揚げをいくつかに切り分けてルラの口に放り込む。

 私やリンガーさん、ハッドさんもそれを口にして見ると……



「美味い~!」


「ちょっと塩っ気が強いが、確かにこれは旨い。初めて食ったけど魚がこんな風になるなんてな」


「ああ、こいつはこのまま酒のつまみにもなりそうだ」



 確かにちょっとしょっぱめだけど、ちゃんとさつま揚げになっている。

 これで具材の準備が出来た。


 私は鶏ガラととんこつをぐつぐつ煮ている鍋を見てみる。

 強火で煮ているので少し乳化が始まっていて、濁りも白っぽくなっている。


 少しすくって味見してみると、濃厚な動物系の味がする。


「うん、いい感じ。あ、ハッドさんアクが出たらこまめに取ってくださいね」


 強火で煮ているとブクブクと泡が出ると同時に鍋の淵とか真ん中にアクの黒茶っぽい泡が溜まる。

 まあ、食べて食べられない訳では無いけど、雑味が強いし見た目が悪くなるのでもったいないけどすくって捨ててしまう。

 あ、花壇とか有ればそれを冷やしてからまいてやるといい肥やしになるのは豆知識ね。

 確か生前ではSDGsだったっけ?

 資源を無駄にしないのは良い事なのだよ、うん。


 私は何故かぐっとこぶしを握ってそんな事を考えていた。



「それで、どのくらい煮込めば好いんだい?」


「ああ、ごめんなさい。そろそろ良いかと思います。あとこれって、二日くらいは継ぎ足しで骨入れて煮込めばさらにおいしい出汁が取れますから、突いて骨が簡単に砕けるくらいは使った方が良いですよ。残った骨は砕いて畑の肥料にもなりますしね~」


 言いながら私は次の準備をする。


 実際やる事は昨日と同じなんだけど、今回は炒める段階で小さく切ったさつま揚げも入る。

 それとお肉屋でもらったラードも使う。

 なんでもラードなんか使い道が少ない物らしく滑りをよくするのに使うくらいだとか。


 ラードを使った食事は臭みと油っこさからあまり浸透していないらしい。


 まあ、豚肉って言ってもこの世界だと野生のイノシシが多いから臭みは強いと言えば強いけどね。

 飼育しているところもあるらしいけど、イノシシに近いのでやっぱり臭みが強いらしい。

 

 そう考えると生前の豚さんって優秀だったんだぁ。

 あ、そうそう、生前北関東のすき焼きでも驚かされた。

 すき焼きに豚肉使うんだよね~。

 最初は驚いたけどこれが癖が無くて惜しいかったのを覚えている。


 そんな事を考えながら少量ラードも入れる。

 確かに獣臭さは出るけど、旨味も増しそうだ。


 「さて、ここで出汁を取ったスープと塩を入れてっと」



 ぐつぐつぐつ


 

 一煮え立ちしたところに麵を入れてまたしばらく煮込む。

 

「そろそろ良いかな? 最後にこれを垂らしてっと!」


 出来あがりに直前に少しだけごま油を垂らす。

 すると途端に香ばしい香りが漂う。



「うぉっ! なんだいこの香りは!?」


「もの凄く香ばしい香りだな、旨そうだ」


「あ~、ごま油の香りぃ~」



 横で私が作っているのを見ていた三人はふわっと香るごま油のいい香りに鼻をスンスンさせる。


「さてと、盛り付けてっと!」


 お椀に麺を入れてからその上にスープと具材をどっと入れる。

 麺がろ過フィルターのようになって具材を麺の上に残し、汁がお椀を満たす。

 最後に少量のエシャレットを載せて出来上がり!



「はい、これがほんとの『ちゃんぽん』です!」




 私は皆の前にそれを、どんっ! と差し出すのだった。 

 


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― 新着の感想 ―
[一言] >「あ~、ごま油の香りぃ~」  これを見て、水素がパンパンに詰まったボトルを開けたくなる衝動に……(ウズウズ) >「はい、これがほんとの『ちゃんぽん』です!」 >私は皆の前にそれを、ど…
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