3-4お仕事再開
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
えへっ、えへへへへぇ♡(リル談)
「えへっ、えへへへへへぇ~」
「お姉ちゃん、それ気持ち悪いって」
昨日の夜にトランさんが私を大人になったらお嫁さんにしてくれるって言ってくれたので朝から笑いが止まらない。
もう昨日はなかなか寝付けなくて夜遅くまでルラとあれやこれやと話をしていた。
私はエルフだから大人になるのにまだまだ時間はかかるけど、それでも将来トランさんのお嫁さんになるって考えるだけで幸せな気分でいっぱいになってしまう。
やっぱりトランさんも最後はエルフの村に戻って来てくれるのかな?
それとも大人になった私を連れて人間の街で暮らすのかな?
そんな事を思うとニマニマが止まらない。
ああぁ!
見えるものすべてが新鮮。
そして足元を横切る鼠さえ可愛らしく見える。
「うわっ! この宿鼠が出た! お姉ちゃん、鼠だよ鼠!」
「うん、可愛いね~」
私はうっとりとしながらそう言うとルラはとても変な顔をして私の額に手を当てる。
「お姉ちゃんまさか熱でもあるの? 病気にでもなったの?」
「ん~? 平気ぃ~」
ふわふわとした感じで下の食堂に降りて行く。
朝ご飯を食べようとしてトランさんたちの姿を見て思わず駆け寄ってしまう。
「お、おはようございます! トランさん!!」
「ん? ああ、お早うリル、ルラ」
トランさんはにっこりと笑って挨拶を返してくれる。
その笑顔がなぜか今日はものすごくまぶしい。
ぐふっ!
イケメンのお兄さんが将来私の旦那様。
もう、これって勝ち組確定よね?
シャルさんには悪いけど、先にウェディングドレスを着るのは私の方かもね。
私は思わずトランさんの腕にしがみつく。
「おいおいどうしたってんだい? 朝からやたらとモテるなトラン?」
「ははははっ、リルはトランが大好きですからね」
「へぇ~、トランお前ロリコンじゃないとか言ってなかったっけ?」
「まあ、お似合いではあるがな」
私がトランさんの腕に抱き着いているとエシアさんもロナンさんもテルさんにホボスさんも笑いながらそう言う。
そしてルラがジト目で私を見ている。
「お姉ちゃん昨日の夜大人になったらトランさんのお嫁さんになるって約束したからずっとこうなんだよねぇ~」
ルラがそう言うと皆さん一斉に私たちを見る。
「なんだ、トランなんだかんだ言ってもうリルちゃんに手を出したのかよ?」
「え? い、いや手なんか出していないよ? 僕はちゃんとわきまえているからね」
そう言って引きつった笑顔になるけど、別に今すぐどうこうって訳じゃないんだからいいのではないだろうか?
確かに私はエルフとしてはまだまだ子供だし、大人になるまでは時間がかかる。
でも大好きなトランさんに抱き着く位は良いのではないだろうか?
「あの、もしかして嫌ですか? 私がトランさんのお嫁さんになるの……」
思わず聞いてしまう私。
するとトランさんは困ったような顔をして言う。
「いやね、昨日の話はちゃんと覚えているよ。リルが大人になったら僕のお嫁さんになってくれるって話はね。でもまだまだ先の話だからステキな大人の女性になってくれるかい?」
そう言われて私は思わず笑顔になる。
ちゃんと昨日のこと覚えてくれていたんだ。
それにステキな大人の女性に成れだなんて!
もうトランさんたら、大人になった私に何するつもりなのかな♪
そんな事を考えたらシャルさんのあの赤い下着を思い出してしまった。
お嫁さんになってステキな大人の女性になるって事は、勿論トランさんと私も……
「きゃーっ! トランさんたら!! 分かりました私、立派な大人の女性になりますからね!!」
ちょっと赤くなりながらもう一度トランさんの腕に抱き着く。
周りから笑われるけど、そんなの気にしないもん!
「お姉ちゃん、どうでもいいけどお腹すいたから朝ごはん食べようよ」
ぐぅううぅぅ~
ジト目のままルラはお腹を鳴らせてそう言うのだった。
* * *
「お仕事ですか?」
朝食をとりながらトランさんたちと話をしていると、そろそろ仕事の依頼を受ける話になっていた。
「うん、リルたちのお陰で臨時収入が入っていろいろと準備も出来たしね。そろそろ本業も再開しようってね。リルもルラもコモン語もだいぶ上達したし、街にもだいぶ慣れてきたでしょ? 村のレミンさんたちも僕の保護下って聞いたら安心しているみたいだしここで大人しく迎えが来るまで待っていられるよね?」
トランさんにそう言われて私は果物ジュースを飲み干す。
確かにずっと私たちに付きっきりって訳にはいかない。
トランさんにだってお仕事がある。
私は頷きトランさんに言う。
「分かりました。大人しくここで待っています。だからトランさんもお仕事頑張って来てください」
「うん、ありがとう」
トランさんはにっこりと笑ってそう言うとテルさんが笑ってからかってくる。
「おいおい、もう新婚さん気分かよ? トラン~お前完全にロリコンじゃねーかよ」
「えへっ、旦那様の帰りを大人しく待つのは妻の務めです♪」
そんなテルさんに私は笑顔でそう言うと大笑いしてトランさんの背を叩くテルさん。
苦笑いしながらもまんざらではない感じのトランさんは「よせよ、からかうなよ」とか言っている。
うん、ここにいる間はトランさんのいい奥さんにならなきゃね。
「それでトランさんたちって何時からお仕事始めるの?」
ニマニマしながらそんな事を思っていたらルラがトランさんたちに聞く。
ふざけていたトランさんたちだけど、真顔にっ戻って私たちに話始める。
「これから冒険者ギルドに行ってクエストの依頼を探そうと思う。どんな仕事かはそこで決めるから戻ってこれるのはどれくらいかかるか分からないな。一応決まったらトランからリルちゃんたちにも話はしてもらうけど、出発は早ければ明日からになるな」
エシアさんはそう言ってトランさんを見る。
するとトランさんも頷いて私たちに言う。
「だからリルとルラはここで大人しく待っていてね。街に出る時とかもスリとかに気を付けて裏路地とか行っちゃだめだよ? 『赤竜亭』の亭主にはお願いしているから何か有ったら亭主に相談するといい。あんな顔して面倒見だけはいいからね」
そう言って私をじっと見る。
なんかトランさんにじっと見つめられると恥ずかしくなってくるけど、私は大きく頷き答える。
「分かりました。ちゃんとここで待ってます」
「うん、いい子だ」
そう言ってトランさんは私とルラの頭を撫でるのだった。
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