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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第九章:道に迷う
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9-27君は生き残れるのか?

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


何とかしなければ!!(リル談)


「うっぷっ!」


 

 ただいまドーナッツ大会試食会の三日目に突入しました。

 既に胸焼けが始まっていてイリカさんの整腸剤が大活躍です。



「お姉ちゃん、あたしもうドーナッツ嫌だぁ~」


「流石にきついですね、三食ドーナッツで三日目は……」


 三日目にして試食が終わっているのはまだ半分に届くかどうかだ。

 正直もう味なんてわからない。

 慣れている村の人でさえそろそろきつくなっているらしく、皆さんまるでゾンビのような動きになってドーナッツを食べている。


 このままいくとまだまだドーナッツを食べさせられる羽目になる。

 何とかしなければ!!



「お姉ちゃん、お姉ちゃんの力でドーナッツ消せない? もう嫌だぁ~」


「ドーナッツを消す?? ルラ! それよそれっ!!」



 ドーナッツの輪っかを指にはめて唸っているルラのその言葉に私は思わず目を輝かす。

 そうよ、食べられないのなら消せばいい。

 私のチートスキル「消し去る」は指定を明確にすれば対象物だけしっかりと消せる。


「ルラ、ドーナッツを口に入れたら合図して! すぐに『消し去る』から!!」


「出来そうなの、お姉ちゃん?」


「やらいでか! もうドーナッツなんてたくさんよ! 早く自分たちの試食分終わらせて他の物が食べたいわ!!」


 もう油っこくてモフモフサクサクで甘いドーナッツはたくさんよ!!

 しょっぱい物とかさっぱりした物とかとにかくドーナッツ以外が食べたい!!



「リルさん、そんなにうまくいくもんですか?」


「大丈夫です、任せてください。ルラ、早速始めるわよ!!」



 言いながら私は目の前のドーナッツをほうばる。

 それと同時にチートスキル「消し去る」を発動。


 試しに連続運用を試みるとこのスキル、設定したものをちゃんと消し去ってくれる。



「行ける! 口に入れた瞬間に消えた! ルラっ!」



「うん、お姉ちゃん!!」


 ルラもすぐに口にドーナッツを含む。

 そして私のチートスキル「消し去る」で口の中のドーナッツを消し去ってやると目を輝かせて次々と試食のドーナッツを食べ始める。


 もうね、味なんかどうでもいいわよ!

 とにかくこのドーナッツ地獄から解放されることが第一。

 

 私とルラはもくもくとドーナッツの試食を食べ始める。



「リ、リルさん、私にも!」


「任せてくださいイリカさん!」


 私やルラの様子を見ていたイリカさんは同じくドーナッツをかじり始める。

 そして私のチートスキル、「消し去る」を発動させるとルラ同様目を輝かせてどんどんとドーナッツをかじってゆく。


 私とルラ、イリカさんはここへ来て怒涛の試食を繰り返すのだった。



 * * * * *



「ふう、やった、とうとう試食全部終わった!」


「はぁ~、もうドーナッツいらないよぉ~」


「リルさんのおかげで助かりましたが、流石にかじる所はやらなといけないので顎が疲れました」


 二百強の試食ドーナッツを私たち三人が最初に完食した。

 見ていた皆さんも驚いていたけど、ちゃんと目の前でかじっているので誰も文句言わない。

 知っているのは私たち三人だけ。


 やっとドーナッツ地獄から解放され、一休みと言う事でお茶を飲んでいる。

 目の前の広場にはまだまだドーナッツの山を相手にもがき苦しみながら試食をする村の皆さんがいる。



「これ、試食が終わるのにあと三日はかかりそうですね……」


「そうですね、子供とかもいますし、お年寄りもいますからね……」


 阿鼻叫喚となっているその様子を見ながらため息をつく。

 そう思っていた時だった。



「ええぇぃ、我がドーナッツを先に喰わんか! 喰らえフォーミングドーナッツ!!」


「あ、汚ったねえぞ! そっちがそう来るならこっちもこれだ! ドーナッツダイナマイト!!」



 試食のドーナッツを配っている人から声が上がって投げ出したドーナッツが試食をもたもたしている人たちの口に飛んで行って無理矢理ねじり込まれる。



「なんですかあれは?」


「ああ、あれってどうやら変則魔法のようですね? 見た感じターゲットの口にドーナッツを飛ばすマジックアローの応用のようですね」



 何それ才能の無駄遣い!?


 少しは魔法をかじった身としてはそれがどれ程高度な変則魔法か分かる。

 それをドーナッツを無理矢理食べさせるために使うとは!!



 どッガーン!!



「むふっ!」


「はうっ!」



 無駄な才能に驚かされていると向こうで爆発が起こった。

 そして爆心地を中心に周りの人たちの口にドーナッツが詰め込まれている。



「あれは! 爆炎魔法を利用してその勢いでドーナッツを飛ばし的確に口に詰め込む魔法!! あれ程の精度で口にドーナッツを飛ばすなんて!!」



 いや、驚くところそこか!?

 なにその高度な魔法と操作精度!?



「ずるいぞ! 無理やり自分のドーナッツ食わせるとは!」


「ぬかせ! 俺のドーナッツが一番なんだもたもた食ってねえで早く俺のを食えよ!!」



 どがーん!


 ばガーンっ!!  



 更に更にあちらこちらで爆発音が響く。

 そしてその度にドーナッツが飛び交い人々の口に押し込まれてゆく。



「うわっ! お姉ちゃんこっちにドーナツ飛んできたあっ!」


「私たちはもう全部食べました、『消し去る』!!」


 的確に私たちの口を狙って飛んでくるドーナッツをチートスキルで消し去る。

 そして広場から退避する私たち。


 既に広場は爆発の轟音ばかりが聞こえるけど人の悲鳴は聞こえてこない。

 きっと皆さん口にドーナッツ詰め込まれて声を上げられないのだろう。



「お姉ちゃんドーナッツ怖い!」


「とにかくほとぼり冷めるまで身を隠しましょう!!」



 こうして私たちはこの騒動から離れて行くのだった。



 ◇ ◇ ◇



「えーと、これに入れればいいんだよね?」


「うん、多分。これで良いんですよね?」


 試食会を仕切るドーナッツ委員会の人がもっている投票箱に参加札を入れる。

 ちゃんと全部ドーナッツを食べたかどうかもこの箱に入れると魔法で自動判断してくれるそうだ。

 投票箱に札を入れてやっとこのドーナッツ大会が終わる。


 終わるのだけど……



「なんですかこの最後に一番になったドーナッツを食べるってのは……」


「なんか村の掟らしく、一番が決まったらそのドーナッツを賞賛する為に全員でそのドーナッツを食べなければいけないらしいですね。それが終わって初めてこの大会も終りだとか」


 これから投票の結果が分かるけど、最後の最後でやっぱりドーナッツ食べさせられるのかい!


 私は大きくため息をつく。

 もうこの村には近寄らない方が良いだろう。




 そう心に強く思うのだった。


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