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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第九章:道に迷う
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9-23ドーナッツ

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


イリカさん?(リル談)


「あら、気付きましたか? 確かにマジックアイテムは通常風化はしませんよ、何かの拍子で破壊でもされない限り……」



 イリカさんはそう言って口元に何とも言い難いにたりとした笑いをする。

 それを見た瞬間何かが引っかかった。


「うーん、じゃあなんでイリカさんは封印のひょうたんを集めるの?」


「それは手元にあった方が管理しやすいからですよ。こんな小さなものにあれだけの巨人族を封印できるなんて一体どんな魔法を使っているのか気になるじゃないですか!!」


 あ、これって魔法使いの悪い癖ってやつだ。

 気になる事は解明しないと気が済まないってやつだ。


 イリカさん、私たちエルフについて研究しているって言ってたけどそれ以外でも興味のある事にはどんどんと手を出しているもんなぁ~。


「マジックアイテムって風化はしないけど壊れる事ってあるんですか?」


 ちょっと気になって聞いてみた。


「はい、水晶なんかがいい例ですが落とせば割れます。最初のひょうたんもどう言う理由かは知りませんが割れていて封印が解けていました。ですのでこう言った危ないアイテムはまとめて管理した方が良いんですよ、研究も出来るし」


 うん、本音は後ろだなやっぱり。

 でもまあその通りなんだろう。


「ふーん、それでイリカさんは封印のひょうたんを集めているんだ。でも新しいひょうたんで全部封印できるの?」


「それは、石版ではこの予備のひょうたんは最後に魔王様が作った一番強力な封印のひょうたんらしいですので、多分……」


 うーん、その辺は明言できないか。

 でも予備として確かに最初のは再封印できたから役には立っている。

 

 そんな事を思っていたらジップロク村長が祠に入って祭壇からその封印のひょうたんを取りイリカさんに渡す。


「まあ、魔王様のご意思がそうならばこれはイリカに渡す。お前さんは儂ら村のモンよりよっぽど魔道に詳しいからの」


「ありがとうございます、ジップロク村長。これで後残り二つですね」


 そう言うイリカさんはまた一瞬あの笑みを浮かべるのだった。



 * * * * *


 ここガリーの村は魔鉱石の採掘ともう一つ、小麦の生産が盛んな村だった。

 そしてこの村の特産物でドーナッツが有名らしく、ドーナッツは一般のご家庭でも作るほどのソウルフードになっているらしい。



「でもなんでドーナッツなんですか?」



 不思議に思いジップロク村長に聞いてみるとその由来を教えてくれた。


 曰く、約千年くらい前にこの村にシェルさんたちが来てその時に村居た娘にドーナッツを与え、その娘が魔術とドーナッツを村に広めた。

 結果、小麦も必要になり当時は痩せた大地だったのを魔術と知識で小麦が良く育つ大地へと改良をしたそうな。



 話しは分かったとして、問題はまたシェルさんが関わっていた事だ。

 あの人本当に世界中で何やらかしているのやら……



「まあそんな訳で今じゃこの村の特産物にまでなったんじゃよ、このドーナッツは」


 ジップロク村長はそう言いながら村長の家で私たちをもてなしてくれて自家製のドーナッツまで出してくれるのだった。



「わーい、ドーナッツだぁ~」


「すみませんね、わざわざお茶までいただいて」


「なに、ひと段落した所じゃったからの。まあ遠慮せずに食べとくれ」



 喜ぶルラにお礼を言っているイリカさん。

 村長も気さくに進めてもらうので私もお礼を言っていただいてみる。


「ありがとうございます。では早速いただきますね」


 お茶と一緒に沢山のドーナッツが出されその一つをつまんで頂く。



 はむっ!



「むぅっ! おいひいぃっ!」



 ひとくち口にして驚かされた。


 それはもの凄くシンプルな、オールドファッションのようなドーナッツなのに周りはさっくり、中はしっとりと言う絶妙な揚げ加減だった。

 甘さも自然な甘さでふっくらと言うよりはしっかりな歯ごたえ、沖縄のサーターアンダギーのような感じで小麦の良い香りもしっかりとする。

 口の中でわずかに香るこれは牛乳かな?

 その完成度は現代日本のミスターなドーナッツ屋さんに匹敵しそうだった。



「おいしぃ~」


「ほんと、ガリーの村のドーナッツは格別ですね」



「はっはっはっはっはっはっ、そうじゃろそうじゃろ。何せうちのドーナッツは先祖代々の秘伝の味だからの。そん所そこらのドーナッツとは格が違うわい」



 そう言う村長さんは上機嫌だった。


 確かにこのレベルならそうかもしれない。

 正直正攻法で私が作ってもここまでの完成度は出せる自信がない。

 それ程このドーナツは素材の味、配合、揚げ方、油切りが完璧だった。



「そう言えば、最初村に来た時のあの煙の出ている家の人もイリカさんに帰りにドーナッツ食べて行けって言ってたよね?」


「ああ、ローゼフですね? あの人ドーナッツ職人ですもんね」


「なに? ローゼフの所のドーナッツじゃと?? よせよせ、奇抜さを売りにしておる邪道なドーナッツじゃ。やはりドーナッツは正面からガツンといかんとダメじゃ!」


 ルラが思い出してそんな事を言い出すとジップロク村長さんはいきなりこぶしを握り締め力説を始めてしまう。


 あ~、なんか変なスイッチが入っちゃったかな?




 しかし私がそう思った時にはすでに時遅しで、ジップロック村長の熱くドーナッツを語る長話が始まってしまうのだった。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] >オールドファッションのようなドーナッツなのに周りはさっくり、中はしっとりと言う絶妙な揚げ加減だった。  ファッションドーナツ美味しい!一番好きなドーナツです!  …………むしろ自分はザッ…
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