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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第九章:道に迷う
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9-21ガリーの村

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


お姉ちゃん、魔法使いがたくさんいるんだって! ワクワク!!(ルラ談)


 ガリーの村。


 デルバの村から岩山一つ向こうにある小さな村。

 デルバの村同様魔王様を崇拝する村らしく、現在は鉱山で魔鉱石の採掘と小麦の生産で有名な村らしい。

 そしてこの村の特産物にドーナッツがあるとの話だ。



「もうじきデルバの村に着きます。長老たちはすみませんが近くで待っていてもらえますか?」


『そうさね、儂らの恰好じゃ他のモンこわがせっからにな』



 長老はそう言ってにっかりと子供に見せてはイケナイ笑みを浮かべる。

 うん、それ怖いって。



「それじゃぁリルさん、ルラさん行きましょう」



 イリカさんはそう言って私たちをガリーの村へと連れてゆくのだった。



 * * * * *



 ガリーの村は村の周りを魔物除けの柵が囲っていた。

 普通はどんなに小さな村でも立派な城壁を持っているのにここは木で出来た柵だった。



「ここって何か特別な守りでもあるんですかね? 外壁が柵になっていますよ」


「ああ、ここは住民のほとんどが魔法を使えるんですよ。柵には結界が張ってあって魔物の侵入を拒んでいるんですよ」



「住民がみんな魔法使いなんですか?」



 驚いた。

 魔法自体は何処でも使える人はいるけど住民全部が魔法を使えるとは。

 ここでいう魔法は生活魔法ではなく、ちゃんとした魔法の事。


 攻撃魔法やら何やらと普通は危ないのでちゃんとした師匠か何かの下で習わないといけないはず。

 そう、カリナさんからは聞いていた。


「じゃあ、みんな魔法使いなんだ! 凄いね、お姉ちゃん!」


 一緒に横を歩いていたルラはそう言って目を輝かせるけど、全員が魔法使いだなんてちょっと心配になって来る。



 どっがーんっ!!



 私がそんなこと思っていると早速村の方で爆発が起こる。

 慌てて村の門をくぐり中に入ってみると民家の屋根から煙が上がっている。



「イリカさん、あれって何ですか?」


「さあ、でもこの村では日常茶飯事ですよ。しょっちゅうあちらこちらで爆発音がしますからね」



 いや、しょっちゅう爆発音って……



 見ているとその民家の扉が開き真っ黒な煙と同時に顔を煤で汚したおじさんが出て来る。


「げほげほ、また失敗じゃな」


「あら、ローゼフさん?」


 そのおじさんはイリカさんから声をかけられてこちらを見る。


「あれ? デルバのイリカじゃないか、珍しいねあんたがこんな所にいるなんて」


 そう言いながらどこからともなくタオルを取り出し顔を拭く。

 見た感じ四十過ぎかな?

 茶色い髪に茶色の瞳の色をしたこのおじさんはイリカさんに笑いながらそう言っている。



「ちょっと用事が有りましてね。私が直接来た方が分かるので」


「へぇ、それよりイリカ、あの薬ってまだあるか? ほらちょっと入れるとパンやドーナッツがふわっと膨らむやつ」


 ローゼフと呼ばれたそのおじさんはイリカさんに薬の話を始めた。


「デルバの村に戻ればありますけど、今は持ち合わせてませんよ。それより村長さんはいますか?」


「村長なら相変わらず魔鉱石の出荷に追われているぞ? またシーナ商会やベイベイの街から注文が殺到しているらしいからな。なんでも空飛ぶ船を作るらしい」



 空飛ぶ船って……

 そんなモン作らせるのって思い当たるのはシェルさんくらい。


 あの人こんな村にまで来ていたのか。



「分かりました。じゃあ村の出荷倉庫に行ってみますね」


「ああ、そうだ。帰りに寄ってけよ、新作のドーナッツが出来たからな!」


 ローゼフさんはそう言ってニカっと笑う。

 イリカさんはお礼を言ってから私たちを引き連れて村の出荷倉庫へを向かうのだった。



 * * *



 どがーんっ!


 ぼかーんっ!!



「あの、本当にこの爆発って日常茶飯事なんですか?」


「そうですね、前に来た時もこんな感じでしたよ?」


 一体何があればこんなにあちらこちらで爆発が起こるのやら……


「見えてきました、あそこが村の出荷倉庫ですね」


 イリカさんはそう言って指さすとそこはそれほど大きな建物では無かった。

 倉庫って言うからにはもっと大きな建物かと思ったのに。



「村長さーん、いますーか?」



 イリカさんは倉庫に着いたらそう大きな声で声をかける。

 そしてしばし待っていると扉が開いて中から初老のおじさんが出てきた。



「誰じゃい? なんだ、デルバ村のイリカじゃないか。珍しいの、あんたがガリーの村に来るとは」


「お久しぶりです、ジップロク村長。実は重要なお話がありまして来ました」


「重要な話だと? なんじゃいそりゃ? ん? こっちのはエルフの人じゃないか? まさかシェル様が魔鉱石の催促しておるのか!?」


 

 挨拶もそこそこに村長さんは私たちを見ると慌て出した。

 いや、エルフだからってシェルさんがらみって訳じゃないんだけど。



「ああ、紹介しますね。こちらリルさんとルラさんです。エルフの村に戻る為に旅をしている双子の姉妹さんなんですよ」


「どうも、リルです」


「あたしルラ! こんにちわ」



 私たちはイリカさんの紹介でジップロク村長に挨拶をする。



「なんじゃ、シェル様の使いじゃないのか? 儂はガリーの村の村長をやっておるジップロクじゃ。それでイリカよ重要な話とは何じゃ?」


「はい、これは魔王様のご意思でもある事なんですが……」



 そう言ってイリカさんは話を始めるのだった。



 * * *


「ふむ、過去に魔王様が封印された巨人族がのぉ。街道にサイクロプスが現れたのそいつが封印から抜け出したって事か」


「多分そうだと思うのですが、最初に壊れた封印はもう新たな封印で押さえました。二つ目も無事回収できたので三つ目があるこのガリーの村の封印も回収しようと思います。そして魔王様が残した新たな封印で全ての封印を再度しようと思います」


 イリカさんがそう説明するとジップロク村長は深く頷く。


「分かった、ではうちの村に代々伝わる祠に案内しよう。が、その前にちょっと待ってくれ。今週の分を出荷しないとすぐにシーナ商会の連中が文句を言ってくるのでな」


 言いながらジップジップロク村長はあの出荷倉庫へと私たち含めて入るように言う。

 そして中に入って驚いたのが集荷をする予定の荷物以外何も無いと言う事だ。



「あれ? ここって出荷倉庫だって聞いたのにあれしか荷物が無い?」


「ああ、ここはシーナ商会に品物を転送する為の倉庫じゃからな。ほれ、丁度準備が出来た様じゃ」



 そう言って他にいる村の人が何やら呪文を唱えていると倉庫の中央にあった荷物が床に現れた魔法陣の輝きと共に消え去った。



「これで良し、無事転送が終わったの。これで今週分は納品が済んだの」


「え? ええぇ? 品物が消えた!?」


 驚く私にジップロク村長は笑いながら言う。


「儂らのガリーの村はシーナ商会と直契約しておってな、魔鉱石を買い上げてくれるのじゃがこの専用の出荷倉庫で転送しておるのじゃよ」


「初めて見ましたが、これってもしかしてゲートですか?」


 イリカさんも興味を引かれた様でジップロク村長に聞く。

 すると村長は頷き話を続ける。


「そうじゃな、ゲートと言うらしい。なんでも古代魔法億国の技術らしいの。千年前くらいにシェル様たちが来てこれを作ったとか聞いたの。まあお陰で危ない陸路を運搬せんで良いのは助かるがの」


 あー、またシェルさんが関わっていたんだ。

 あの人ホント世界中に現れて何かやらかしてるわね……



 

 私は荷物が消え去った後の魔法陣を見ながらそう思うのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] >儂はガリーの村の村長をやっておるジップロクじゃ  ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル  名前の所為で恐いやつにしか見えない……。  密閉→仕舞っちゃう→拉致監禁→ヤベーヤンデレ…
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