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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第九章:道に迷う
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9-20ガリーの村に行く前に

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


不味くは無いんだけどねぇ……(リル談)


「うーん、何と言うか、可もなく不可もなく……」



 私はロックワームの塩焼きを口にして唸る。

 何と言うか、臭みは無くてさっぱりしているのだけど逆に言えば味気ない。


 どちらかと言うと魚のたらを焼いたやつみたいに白身でぱさぱさしているような感じ。

 鶏のささ身とはまた違うもう少し筋張ったそれは食べて食べられない訳では無いが好んで食べようとは思わない味。



「これ、本当に食べるつもりなんですか?」


『大丈夫だがに、リルの嬢ちゃんならきっとう美味くしてくれるだがに』



 そう言う長老さんのオーガ。

 期待してくれるのはいいけど、こう言った素材って実は料理が難しい。

 

 食材ってそのものがもつ味などに準じて料理するのが鉄則。


 甘みのある素材に辛い味付けをしてもなかなかうまくいかないモノである。

 勿論それを吟味してわさびソフトクリームみたいに真逆の味を楽しむってのもあるだろうけど、それは元の味を知っている前提となる。


 なのでこう言った癖があまりない食材を美味しくいただくのって意外と難しい。



「うーん、癖は無いけど少し筋っぽいからなぁ。下味をしっかりつけてフライにでもしてみましょうか?」


「ねぇねぇ、お姉ちゃん。フライにするならタルタルソース付けて食べたい!」



 私が悩んでいると横でルラがそう言ってくる。

 タルタルソースか……


 私は魔法のポーチの中にどんな食材や調味料が有るかもう一度思い出してみる。



「うん、いけるかな? やってみましょう!」


 そう言いながら食材を取り出し始める。



 ガリーの村には明日あたりに着けそうだと言うので、今日はここらで野宿となった。

 先ほど襲って来たロックワームたちはオーガの皆さんに奇麗にさばかれて白身が多い肉の塊となって私の前にある。


 先ほど、ほんのちょっと塩焼きにして味見したけど今回はロックワームのフライにタルタルソースを作って行こうと思う。



 まずは下ごしらえで、ロックワームのお肉を手ごろな大きさに切ってボールに入れる。

 そしてそれに塩とお酒を振って軽く混ぜておく。


 その間にオオトカゲの卵を取り出してルラに手伝ってもらう。



「えーと、毒素を『消し去る』! よしっと、これで大丈夫だと思うわね」


 タルタルソースを作るにはまずはマヨネーズが必要だ。

 鶏の卵ではないけどオオトカゲの卵は濃厚な味わいがした。

 ただ、生で使用するからもし毒素があると一発でお腹を壊す。

 最悪酷い下痢に見舞われて脱水症状で命を落とす事もあるってサバイバルの本か何かで読んだ覚えがあった。

 なので安全の為私のチートスキルで「毒素」となるモノを消し去った。



 オオトカゲの卵を割って黄身だけをボールに入れてその辺の木の枝で作ったお箸を何本か奇麗にしてルラに渡す。



「ルラ、タルタルソース作るから手伝ってね。この箸で卵を掻き回してちょうだい」


「うん、わかった~」



 ルラに卵を掻き回してもらいながら塩とワインビネガーを少しづつ入れる。

 

「ここでよく掻き回しておいてね、そうするときめ細かいマヨネーズになるから」


「分かった! あたしは掻き回すのも『最強』!!」


 ルラはそう言ってまるでミキサーのよな速さでボールの中身を掻き回す。

 おかげできめ細やかな感じで掻き回せるのでそこへ少しずつオリーブオイルを入れる。


 そしてしばらく混ぜていると粘度が出て来てあのマヨネーズになる。



「おおぉ、マヨネーズだ!」


「どれどれ~」



 マヨネーズを久しぶりに見てルラは大喜びする。

 私はそれを指先にほんのちょっと取って舐めてみる。


 すると濃厚なあのマヨネーズの味がする。



「うん、美味しい。ちゃんとマヨネーズになってるね」


「お姉ちゃんずるい! あたしもっ! ぱくっ! ん~ぅんっ! マヨネーズだぁ~♪」



 久しぶりに味わうそれに私もルラも大喜び。


 しかしここで終わりではない。

 この後にゆで卵のみじん切り、玉ねぎを水でさらし辛味を押さえたもののみじん切り、キュウリの酢漬けであるピクルスを細かく切ったものをそのマヨネーズに混ぜる。

 そこへ塩と貴重な胡椒を少々入れて最後に乾燥パセリとレモンを絞って混ぜて出来あがり。


 そしてもう一度味見。



「んっ! タルタルソースだ!!」


「お姉ちゃん、あたしも、あたしも!!」



 ルラも指先に付けてタルタルソースを味わう。



「ふわっ! タルタルソースだ!! これカラアゲに付けても美味しいんでよね!!」


「カラアゲも良いわね。でも今回はロックワームのフライに付けようと思うの」


 言いながらロックワームの下味をつけていた物に小麦粉をまぶして溶き卵に通してからパン粉をつけて先に準備していた油の中に入れる。



 じゅわぁああああぁぁぁ~



 いい音を上げながらロックワームのフライがどんどん出来上がる。 


 試しに一つ味見してみるとサクッと揚がった衣にやや筋張った身もほぐれてサクサクと食べられる。

 味もなんか白身フライみたいで行ける。


 そんな私の近くにルラだけじゃなくてイリカさんやオーガの皆さんも寄って来ている。

 私は苦笑をしながら言う。


「もう少しでできますからね~」


 どんどんと揚がっていくロックワームのフライを油切りしながら並べていく。

 粗熱もほどほどに取れて油も切れていい感じ。


 程無く山盛りのロックワームのフライが出来あがる。



「さあ出来ましたよ! ロックワームのフライ、タルタルソース付きです!」



 おおぉ~



 出来あがった山盛りのフライにみんな声を上げる。

 そして取り皿に分けてタルタルソースも添えていただきます!


 

 さくっ!



『うおっ! 何ねこれは!? サクサクしているだがや!!』


『このたるたるそーずってのも上手いだがに!!』


『酒だがに! 酒を持ってくるだがに!!』



 オーガの皆さんはロックワームのタルタルソースに舌鼓している。

 それを見て私もルラもかじり始める。



 さくっ!



「んっ! おいひぃ~」


「うん、タルタルソース合うね。まるで白身魚のフライみたい」



 ルラはにこにこしながらロックワームのフライを食べる。

 そしてイリカさんを見ると頬に手を当て幸せそうな顔をして食べている。


「これ、今まで食べた事無いソースでもの凄く美味しいじゃないですか!」


「タルタルソースって言うんですよ。日持ちしないのですぐに食べなければなりませんけどね~」


 うーん、久々に食べる白身魚のフライにタルタルソースのようなこのロックワームに私も珍しくおかわりを頂く。


 

「そうそう、レモンをかけると更に食べやすくなるんですよね~」


 そう言いながら三個目に手を出すルラのフライにもレモンをかけてやる。

 この娘、お肉類好きだけど食べ過ぎるとお腹壊すのでレモンとかをかけると消化の助けにもなる。



「おおぉ、レモンかけたら更にさっぱりして美味しい!」


「どれどれ? さくっ! あらホント。これ私は好きですね」



 ルラもイリカさんもやはり女性だからこう言ったさっぱりなモノは好きなのだろう。

 私もレモンをかけて美味しくいただく。



『いんやぁ、リルの嬢ちゃんの料理には驚かされるだがや!』


『ほんに、エルフでなか嫁に欲しいくだいだでよ』


『んだんだ、毎日こげん美味いモン食えっちょ、幸せだがに!!』



 お褒めにいただき光栄ですけど、流石にオーガのお嫁さんは勘弁してほしい。

 それに私は正直まだまだトランさんの事を引きずっている。


 今は他の誰かをまた好きになる気なんてさらさらない。



『しっかし、そうすっとこの辺の魔物もっと狩ってリルの嬢ちゃんにうんまいモン作ってもらいたいだがや』


『んだな、儂もそう思う』


『んだばこの辺の魔物もっと狩るかいのぉ?』



 えーと、なんかオーガの皆さんが意気投合し始めてるんですけど……



「あたしも美味しいもの食べられるなら魔物狩っても良いよ~」


「いや、ルラあたしたち早くエルフの村に戻んなきゃなんだけど……」


「取りあえず魔王様の封印をし直すのを協力してくださいよ~」




 サクサクとロックワームのフライを食べながらみんな言いたい事を言うのであった。



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― 新着の感想 ―
[一言] >ルラはそう言ってまるでミキサーのよな速さでボールの中身を掻き回す。  ファンタジー世界でミキサーってーと、カシナートの剣ですよ。  すげーっすわ。  良くもあんな剣を考えついたモンだと感…
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