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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第九章:道に迷う
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9-17疲れたのでカニ玉で腹ごしらえ *

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


ん~流石に魔力使っちゃったなぁ~(リル談)


 大地の精霊、ノーム君たち約十体はすぐに地面に潜り込み岩山のどこかにあるはずの封印のひょうたんが納められた祠を探しに行った。



「お姉ちゃん、一度にあんなに土の精霊呼び出して大丈夫?」


 ルラは水筒を私に差し出しながら聞いてくる。


「ん、ありがと。流石に結構魔力持って行かれちゃったかな。疲れた」


「なるほど、やはり一度に数体の精霊を行使するのは魔力が膨大に必要と言う事ですね!?」


 私が精霊魔法を使っているのを見てイリカさんは興奮しながら手帳に何か書き込んでいる。

 そして私にいくつか聞いてくる。


「私たち魔術師が使う魔法と精霊魔法は全くと言って系列が違います。魔術師の中には精霊魔法を使えるものもいますが、それって稀でなかなか精霊の制御が出来ないんですよね。エルフはなぜそこまで精霊の行使が上手いのですか?」


 イリカさんは私に顔を近づけてきてそう言う。



「近い、近いですってば! 私たちエルフは精霊は友人と思っています。私も【水生成魔法】などの初歩の魔法は習ったので使えますけど、精霊魔法はそう言った魔法と根本的違うと思います。精霊魔法は精霊たちを友人として、エルフ語でその精霊たちにお願いをして協力をしてもらっています。そしてその力の源として魔力供給をするんです。だから精霊がへそを曲げたり、無理を言うと協力してもらえない時があるんですよ」


 一応論理的に話したつもりだけど、イリカさんたち魔術師にも理解できるだろうか?



「つまり、友人にお願いをして手伝ってもらっていると言う事ですか?」


「簡単に言うとそう言う事ですね。だから事有る毎にエルフ語で語らないといけないんですよ。それに魔術のように特に決まった呪文みたいのも無いですしね」



 この世界の魔術は女神様の御業を私たちも使えるようにするためにその手順や目的を呪文として詠唱してイメージをして、そして魔力を流し込むと言う事をするらしい。

 エルフはもともと精霊と樹木から作られた種族と言う事で、保有する魔力が人族より多い。

 そして半人半精霊の為精霊たちが見えやすく、私たちエルフの言葉も精霊に伝わりやすと聞いた。

 トランさんやカリナさんから教わった事だけど、その事を忘れずシェルさんにも言われた「精霊は友人」で命令するのではなくお願いをする事が精霊魔法をうまく使うコツだと言うのを今一度思い出す。



「なるほど…… 精霊魔法とは私たちが使う魔術とは根本的に違うと言う事なんですね。女神様の御業を体系化して行使するのではなく、精霊たちに協力してもらうと言う。なるほど、その理論はどこかの書物で目にした気もしますね。なるほど……」


 イリカさんはそう言ってぶつぶつメモを取っている。



『時に腹減ってきただなっす』


『んだ、団子でも食うけ?』


『しっかし団子さ食うなら酒も欲しいだがや』



 オーガの皆さんはそう言ってごそごそともらったジビ団子に袋をあさる。

 しかしこの先まだまだ封印を探しに行かなきゃならないんだから、ジビ団子は温存しておきたい。

 だってこれって保存がもの凄く効いていて、村を出発してもう数日だと言うのにまだまだ柔らかく美味しいままなんだもの。



「あの、ジビ団子食べちゃうのもったいないから前に残しておいたビックスパイダーとオオトカゲの卵で何か作りましょうか?」


 魔法のポーチに入れたままだから鮮度も何もその時のままなので美味しくいただける。

 幸い道具も調味料も、そして食材もあるので魔力の回復に少し美味しいものが食べたい。



「リルさんが作ってくれるのですか?」


「ええ、良ければ」


「やった! 久しぶりにお姉ちゃんのごはんだ!」



 イリカさんは私を見てちょっと興味を持つ。

 大方エルフの食生活の一部でも見るつもりなのだろう。


 もっとも、私が作るのはエルフ料理とは程遠いけど……



「取りあえず久々にカニ玉が食べたいのでそれ作りますね」



 私はそう言ってポーチから食材を取り出すのだった。



 * * * * *



「お姉ちゃん、カニ玉ってあの中華料理屋さんの?」


「うん、ビックスパイダーのお肉まだ残ってるし、オオトカゲの卵もあるからね。私カニ玉好きなのよ~♪」



 あのふわとろのカニ玉は何時食べても美味しい。

 特にあんかけが絶品なんだけど、いかんせん今まではカニ玉を作りたくても蟹が手に入らなかった。

 でもビックスパイダーの塩茹でしたものは蟹によく似ているので今ならいける! 


 私はポーチから食材を引っ張り出す。

 そしてまずはビックスパイダーの脚の肉をほぐしておく。

 次いでオオトカゲの卵をお椀に割ってかき混ぜるけど、確かに黄身がオレンジ色位色が濃く、味も濃厚そうだ。



「卵料理ですか?」


「はい、これに具材を入れて焼いてソースをかけるんですよ」



 イリカさんは物珍しそうに見ている。

 オーガの皆さんも私が料理しているのを集まって見ている。



 かき混ぜた卵に刻んだエシャレット、身をほぐしたビックスパイダーの脚、そしてオリーブ油を少々入れ、塩も少し入れて掻き回す。


 それと同時にコンスターチの粉に水、ワインビネガー、魚醤、お砂糖にごま油、セサミーも入れて掻き回しておく。



「さてと、準備は出来たっと」



 言いながら焚火を準備してそこへフライパンを準備する。

 ちょっと多めにオイルを流し込んで熱したら準備しておいた卵を流し込む。



 じゅぅ~っ!



 油を多めに入れておくとふわっと卵が広がるのでさっと掻き回す。

 フライパンに焦げ付かないようにゆすりながら焼き固めていくけど、焼き面が固まったら裏返す。真ん中は掻き回して半熟だったのでこんもりと盛り上がっているので、それが完全に固まる前にお皿に出す。


 それを材料のある限り作り溜めする。



「うわぁ~卵焼きぃ~!」


「まだ駄目よ、これからあんを作るからね」



 焼きたてのふわとろ卵焼きを美味しそうに見ているルラのつまみ食いを牽制しつつあんかけを作る。


 先ほどのフライパンにそのまま準備しておいたあんの元を掻き回しながら流し込む。


 

 じゅぅ~!



 ここで最初は熱いのでじゅうじゅう言うけど、トロトロの美味しいあんを作るには強火ではダメだ。


 焚火から少し離して中火か弱火くらいでよくかき混ぜながらとろみがつくのを待つ。

 強火でやると固まる速度が速すぎてゴテゴテのあんになってしまうからだ。

 多少時間がかかってもせっかくのカニ玉、美味しくいただきたい。


 くるくるとへらで掻き回しながら均等にとろみがつくまで混ぜる。


 多少白く濁るけど、それで大丈夫。

 しばらく火にかけてゆっくり混ぜているとだんだん透明のあのあんになる。



「よし、出来た!」



 私は出来あがったあんを卵の上にかけて行く。

 それはとろっと卵を包み込んで紛れもないあのカニ玉になる。

 そして軽く刻んだエシャレットを真ん中に少し載せて出来上がり。


挿絵(By みてみん)


「さあ出来た! ビックスパイダーのカニ玉よ!」



 おおぉ~!



 途端に周りから感嘆の声が上がる。



「これってエルフ料理ですか? 美味しそうですね」


「わーい、カニ玉だぁ~」


『なんねこれ、うまそうだがや!』


『オオトカゲの卵さうまいけんの~』


『儂、卵焼き大好物だがや!!』


 

 残っていた材料は全部使っちゃったけどせっかく美味しいものを食べるのだからここは大奮発した。

 スプーンを取り出し皆さんに渡してさっそく食べ始める。



「いただきまーす! は~むっ! ぅんぅうむっ、おいひぃ~!」


 あんかけが熱いのでハフハフしながらルラはカニ玉をほうばる。

 私も早速スプーンでそれをすくい口に。


「あ~むっ、んんっ! トロトロで美味しいぃ~!」



 卵焼きはまだ中が半熟でふわとろ。

 オオトカゲの卵は意外と癖が無く卵の黄身が濃い味なので旨味が強い。

 そこへ蟹そっくりなビックスパイダーのほぐし身と、アクセントのエシャレットを刻んだものがあいまってボリューミーになる。


 更に更にそこへしっかりと作り込んだあんが程よい酸味と甘み、ごま油の中華的な香りも相まってふわとろでぼやけてしまう味を引き締めてくれる。



「な、何ですかこれ! 美味しいっ!!」



 イリカさんもカニ玉を口に運び驚きながら幸せそうな顔をする。


 うん、女性なら分かる卵のふわとろの境地!

 これってたまらないのよねぇ~。

 オムレツとか、オムライスとかもこの卵ふわとろが病みつきになっちゃうのよねぇ~。



『なんえこげは! うまいだがに!!』


『んだんだ、こげなウマい卵焼きは初めてだがに!!』


『まんずおったまげただや!』



 オーガの皆さんもスプーンでカニ玉を口に運びながら喜んでくれている様だった。



「あー、これで白いお米があれば最高なのにぃ~」



 ルラはそう言ってパクパクとカニ玉を口に運ぶ。


 ううぅ、確かにこのまま天津飯にしてみたい。

 トロトロのあんと一緒に白いご飯も……


 あ、ちなみに本場中国には天津飯って無いんだって。

 横浜の中華街に行って初めて知ったけど、似たものは香港にはあるらしい。


 ……なんで天津なんだろうね?



「そう言えばお米、ライスがサージム大陸にあると聞いた事がありますね?」


「えっ? イリカさん、それ本当ですか!? 村ではお米なんか聞いた事無かったのに!?」



 エルフの村がある迷いの森は南の大陸、サージム大陸にある。

 自然豊かなこの大陸は南の方は湿地帯が多く、水上都市スィーフなんかは沼の上に街があると聞いた事がある。


 でもお米があるとは聞いた事は無い。



「何分需要がそれほどないとかで限られた市場にしか出回らないと聞きます。確かに豆とかに比べると小さいし、ゴマのように収穫が楽ではなありませんからね」


 いやいやいや、お米の美味しいさを知ったらみんな絶対に作るって!


 あの白くてつやつやのご飯。

 どんなおかずにも合う噛めば噛むほど甘みの出てくるご飯。



「イリカさん! それもっと詳しく教えてください!!」


「ちょ、ちょっとリルさん近い近い!」


 思わずイリカさんを押し倒してしまいそうになるほど私はイリカさんの顔に自分の顔を近づける。

 もう鼻と鼻がくっつく位。



「お姉ちゃん、その話は後にした方が良いみたい。ノーム君たちが戻って来たよ?」


「へっ?」




 ルラに言われ後ろを見るとノーム君たちが集まって来ていたのだった。



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[一言] >その事を忘れずシェルさんいも言われた「精霊は友人」で命令するのではなくお願いをする事が精霊魔法をうまく使うコツだと言うのを今一度思い出す。  ボールは友達と教わりながらも、平然と笑顔のま…
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