9-12オーガの軍団
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
ひょっこりひょうたん島?(ルラ談)
「有ったっ!」
私は宝物庫の中からひょうたんを取り上げる。
それは何の変哲もない本当にひょうたんだった。
昔の絵とか漫画で出て来そうな茶色の乾燥したひょうたんは首元に赤い糸が縛られていてその口にはコルクのような栓がされていた。
私はそれをイリカさんに見せる。
するとイリカさんは慌てて私に言う。
「リルさん、それの栓は絶対に開けないでくださいね。栓を開けて相手に向けるとひょうたんの中に閉じ込められると言うマジックアイテムなんです」
なんかどこかで聞いたような話だった。
私は首をかしげながらイリカさんに聞く。
「あの、もしかしてこれって名前を呼んで返事しないと吸い込まれないとかってのでは無いのですね?」
「名前? いえ、相手に向けて呪文を唱えれば良いはずですが、そんな仕様になってましたっけ?」
いやいや、私はその説明書的な古代文字読めないからわからないってば。
でもその昔聞いたお話でそんなのがあったような気がしたのでつい聞いてしまったのだ。
私とイリカさんがそんな話をしているとオーガの人がこちらに話しかけて来る。
『なぁ、イリカさ。この武器や防具って使ってもええがね?』
『んだんだ、これさえらいええもんだでよ』
『長老さ、巨人族しばくに使っても良いだがや?』
とりあえず目的のひょうたんが見つかったので今度はオークたちが武器や鎧を手に取りそう言う。
まあマジックアイテムらしいので長い間放置されても錆一つ無いし、私が見たってなんかすごそうな武具ばかりだ。
すると長老さんのオーガは首を縦に振って言う。
『そうさね、魔王様の言いつけで巨人族さしばきに行くんでええっちゃろ』
長老がそう言うと途端にオーガたちは歓声を上げてニコニコ顔で武器や鎧を抱え込む。
やっぱり本来はオーガだからこう言った乱暴な事って好きなのかな?
思わずそう思ってしまう私。
「取りあえず目的の物は手に入りました。準備を整えて石版に記された封印の場所へ向かいましょう! そしてこのひょうたんに巨人族七万を封じ込めましょう!!」
イリカさんはそう言ってひょうたんを掲げ宣言するのだった。
* * * * *
『あんれまぁ、爺様えらい格好がや。ごっつぅかっこ良くなっただに。儂、惚れ直しただがや』
宝物庫から戻って来て次々に武具を運び出してそれを身に着ける。
それを見たお姉さんオーガ (中身はお婆さん)は頬を染めて長老の雄姿を見ている。
まあ見た感じは確かに強そうだし、何より長老もオーガになったとたん筋骨隆々の勇ましさはある。
年齢もなんか中年くらいに若返っているし……
『がははははは、こんげ歳になってこっぱずかしいだがや。けんど魔王様の言いつけ守らにゃならんでよ、いっちょ巨人族さしばきにいってくるさね』
なんか鎧に身をつけた長老は意気揚々としている。
うーん、まさしく戦国時代の鬼武者のような感じ。
違うのは兜から突き出ている角くらい?
みんな強面だから知らないと見てておっかない。
『そだ、巨人さしばきに行くんだ、これさ持って行くだに』
そう言ってお姉さんオーガ (中身はお婆さん)は他の女の人のオーガと一緒にみんなに袋をよこして来る。
オーガの皆さんは心得たようにそれを受け取り腰に括り付ける。
私やルラの分もあるようで、何かと思って渡された袋を開けてみると黄色っぽい丸いモノがいくつも入っていた。
『村さ取れるジビの実でこさえた団子だがや。栄養あっから腹すいたら食うだがや』
お姉さんオーガ (中身はお婆さん)はそう言ってウィンしてくる。
うん、この姿でやられたらきっと長老も喜ぶのではないだろうか?
それ程今のお婆さんはこの姿になって色っぽい。
言われてルラは私を見ながら聞いてくる。
「えーと、途中で犬さんと猿さんとキジさんをお供にするの?」
「いや、そんなことする必要ないし退治される側になっちゃうでしょうに……」
ルラはそのジビの実の団子を一つ取り出して口に放り込む。
「もごもご…… んっ、おいしぃ~」
「ルラ今食べちゃ……」
『なぁ~に、腹さ減ったらまだまだあるでよ、もっと持って行くだがに?』
そう言ってまだまだあるといいながらお姉さんオーガ (中身はお婆さん)はお皿に山ほど出来上がったお団子持ってくる。
同時に他の女性オーガも同じくジビ団子を山ほど持ってくる。
『うん、ジビさ団子出てくんならこれだっぺ!』
『ほやな、景気づけに一杯だがや!!』
『おう、ええのぉ!』
「え? いや、ちょっと……」
他のオーガの人たちもお酒と思われる物を取り出してジビ団子を食べながら酒盛りが始まる。
それは村全体に伝染するかのように広まりいつしか広場で焚火をしながら飲めや歌えやが始まってしまった。
「うわっちゃぁ~、始まっちゃった。こうなると落ち着くまで酒盛りが続いちゃうわね」
「え”?」
思わずイリカさんの顔を見る私。
しかしイリカさんはそう言ってあきらめ顔でジビ団子を一つ手に取って口に放り込むのだった。
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